とんでもない幕開けとなってしまった2024年ですが(能登周辺の皆様の無事を祈りつつ、できる範囲で支援していきたいと思います)、それでも新たな年をやっていくぞ!という気合いを込めて、2023年の素晴らしい映画を振り返ろうと思います。2023年はたぶん135本くらい劇場で観ており、良作も多かったため全然10本に収まらないので、次点の傑作10選、さらに部門賞などつらつら書いています。最後まで読むと超長いので適当に切り上げてください。
その前に宣伝ですが、↓私とビニールタッキーさんが映画の話をとことんしたおす、1/7(日)に迫る「ビニがさ新年会2024」もぜひきてくれよな!numagasablog.com
ちなみに今みたら参加者39人になってました、ありがとうございます。久々の開催だし5人とかだったらどうしよう(ボドゲでもやるか…)とか思ってましたが、なかなか賑やかになりそうで良かったです。でも立派で素敵でアクセス最高な会場(※お値段やや高め)を借りてもらったので、赤字回避のためにも皆さん来てよね!やくそくだぜ〜
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てなわけで、まずさっくり「ベスト10+優勝」を発表したいと思います。今年は細かい順位とかは考えるのが面倒になってきたので、なし! 全部最高です!!
【ベスト10+優勝】
ベスト10『燃えあがる女性記者たち』
インドの被差別カーストの女性たちが、性差別と暴力、貧困層の搾取、宗教と政治の癒着といった「タブー」に切り込む姿を映すドキュメンタリー。
日本のジャーナリズムもやばい状況にある(BBCとかの「外圧」がないとジャニーズ事件を進展させられなかったことからも明らか…)のも確かなのだが、インドの抑圧っぷりもわりと桁違いであることが映画を見るとよくわかる。しかも主人公の記者たちは被差別カーストかつ女性なので、もはや"不利"ってレベルじゃねーぞという状況なのだが、決して絶望することなく、テクノロジーと使命感を武器にジャーナリズムを貫こうとする姿勢に、国を超えて胸打たれるのだった。
カースト制度という(悪い意味で)決定的な社会構造の違いがあるにもかかわらず、インドの女性記者たちが取材する問題の構造そのものは、あまりに日本が抱える諸問題と似通っていて(ジェンダー格差、政治と宗教…)逆にびっくりしてしまう。でもだからこそ日本でも必見。
『燃えあがる女性記者たち』でも語られる、「未来から振り返って"あの時あんたら何してたの?"と問われた時、堂々と答えられる振る舞いをする」という考え方は、ジャーナリズムに限らず全ての行動の指針にすべきような大事なことだなと思う。本当に実行してる彼女らは凄いが…。
不可知な未来に賭けるようにして、変化のさざ波を広げていく人々の姿を描いた点で、まさに(ベスト本2023にも選出した)『暗闇のなかの希望』の内容を体現するような映画だったな。
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しかしインド社会、たしかに性差別は(日本以上に)深刻なのだろうし、映画業界も男性優位だろうとは思うが、時々『燃えあがる女性記者たち』とか、昨年のベストに選んだ『グレート・インディアン・キッチン』みたいな明らかに世界レベルの鋭さとキレ味を誇るフェミニズム的作品がふっと現れるのスゴイよね。私も大好きな『RRR』に夢中になるのももちろん良いのだが、こうした作品を見て両輪バランスをとるのも大事だと思う。
《今みたい人は…》→今ちょうど配信とかがない…残念!(毎年思うけど9月くらいに劇場公開された映画って年末年始、いちばん見る手段ないよね。)でも話題になったし、そのうちくると思う。ぜひ見てね
writingwithfire.jp
『聖地には蜘蛛が巣を張る』
イランの聖地マシュハドで、宗教心を過激化させてしまった娼婦連続殺人犯と、女性ジャーナリストが静かな闘いを繰り広げるサスペンス。イヤ〜な緊迫感がずっと途切れない前半も見事で、『ボーダー 二つの世界』↓を手掛けたアリ・アッバシ監督の手腕が存分に発揮されている。
だがむしろその闘いが「決着」してから、社会に「蜘蛛の巣」のように張り巡らされたミソジニー(女性蔑視)を可視化するような展開の"本番"っぷりが凄まじい。
舞台となるイランを「性差別的で遅れた社会に性差別的な悪人がいるよ、怖いね」と片付けられればよかったが、殺人事件をきっかけとして燃え広がるような、社会にはびこる女性への差別や憎悪はあまりに見覚えがあるもので、日本も全然「怖いね」ではすませられない作品。ぐったりするけど切れ味抜群であった…。
一方、観てから気づいたが、ポスターの不敵な感じの女性って、主人公でもなんでもない、後半に出てくるあの人なんだよね。起こること自体はもちろん酷いし基本的には陰惨な映画なんだけど、彼女のなんというかスゴイ人格はどこか一縷の救い(とは言えないか…)も残していたし、彼女が象徴するタフさや「生命力」のようなものへの敬意もポスターに込められてるのかもしれない。
アリ・アッバシ監督、もはや『ボーダー』よりも、昨年以降はむしろドラマ『THE LAST OF US』ラスト2話の監督としての方が世界的には有名だったりして…とも思う。↓感想も書いた。
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実際、『聖地には蜘蛛が巣を張る』とドラマ『THE LAST OF US』8話をあわせて見ると、かなり共通するテーマ性も感じる(宗教保守と差別・搾取の構造など)ので、アッバシ監督の作家性が存分に発揮されているといえる…。最悪だけど最高のアレンジだったな。どちらもぜひ鑑賞してほしい。
《今みたい人は…》→amaプラ他に配信きてます。
『ダンジョンズ&ドラゴンズ アウトローたちの誇り』
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ブログに感想を書いたので詳しくは読んでほしいが、2023年の実写エンタメ部門ではマジでトップの出来栄えじゃないでしょうか。なんかB級みたいな売られ方をしていたのが今となっては遠く感じられるほど、キレのあるユーモア、豪華な美術やCG、明快なストーリー、練られた脚本、高度なサスペンス、魅力的なキャラクター、すべてを兼ね備えた傑作エンタメという他ないし、本当の意味で万人に勧められる映画だと思う。今後も末永く「迷ったらこれ見ろ」とオススメされ続ける一本になるでしょうね。
そんな本作の売上が日本でも世界でもイマイチだったという事実は、しょせん民衆どものセンスなどその程度であり、売上など何の指標にもならないということを証明しており、真に信頼できるのは私たちだけであるということかもしれない(言い過ぎたかもしれない)。とはいえギリで次回作もあるかも、なラインみたいなのでたいへん楽しみです。
《今みたい人は…》配信で見られます。amaプラではレンタル100円&購入500円になっていた(1/4時点)。超やすいので買っていいと思う
『ペルリンプスと秘密の森』
美しい夢のような光に満ちた森で、2人の意地っ張りな「エージェント」が出会い、森を守るために謎の存在「ペルリンプス」を探す…という物語。子どものごっこ遊び的な感覚で展開する、幻想的な世界の探検をじっくり描きながら、じわじわと現実世界との不穏な接続が示され、真相が明らかになった後は凄い切れ味で終わる。哀しくも勇気の出る結末は、2023年のベストエンディングに選びたい。
若干ネタバレになるのを覚悟で、もう核心を言っちゃうが、まさにイスラエル/パレスチナ問題のような現実社会の地獄めいた様相を前に、しょせん嘘や空想である物語やフィクションは結局は無力なのだろうか、いやそうではないはずだ…と心に静かに火を灯すような話なので、いま観る価値が間違いなくある。
アレ・アブレウ監督の前作『父を探して』(2013)も大変オススメ。美しい色彩を重ねて極限まで抽象化した世界で、少年が父を探す幻想的な冒険譚であると同時に、政治的であり社会的。この上なく平面的なのに、あらゆる意味で奥行きに満ちている。
一見すると2Dスクロールのゲームみたいな平面的な場面が多いのだが、搾取に溢れた社会のあり方や、屈せず生きる人々の生活の描写によって、この上なく奥深い広がりを感じられるのが凄い。ブラジル/南米の歴史とかも踏まえるとまた味わいが増すのだろう…
地球の裏側・ブラジルから届いた傑作『ペルリンプスと秘密の森』が、ものすごくタイムリーと言って良いタイミングでいま劇場で見られるのは、海外の優れたアニメ映画を地道に日本に届けてきた皆さんが起こした小さな奇跡と言ってよいと思った。
《今みたい人は…》恵比寿ガーデンシネマではギリでまだやってるようです↓。1/11まで!
『イニシェリン島の精霊』
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小さい島で暮らすおじさん同士の確執という、過激なほど「小さい」映画でありながら、不思議なほどの普遍性や、時空的なスケール感を感じさせる、忘れがたい映画だった。ブログに感想も書いたので詳しくは読んでほしい(今年書いたブログ記事では、これが一番できが良いと思う)。
最後のシーンを「芸術家は覚えられても、良い人のことなんて誰も覚えてない」というテーゼへのカウンターとして読み解いたのだが、一応クリエイターや表現者の範疇にいる人間として、そうした考え方は大事にしていきたいと思った。どうぶつ映画としても秀逸でした。
しかし今回の年間ベスト、実は本作以降はぜんぶアニメなので、貴重な実写映画枠になってしまったな(まぁいつものことではある)
《今みたい人は…》Disney+ほか配信にきてます。
www.disneyplus.com
『ニモーナ』
今年のベスト10では唯一劇場公開ではなく配信オンリーな映画だが、どうしても入れたかったので選出。
『シーラとプリンセス戦士』というアニメ作品が大好きなのだが、本作のクリエイターであり、原作漫画『ニモーナ』の作者NDスティーブンソンさんががっつり関わって作ったアニメ映画。
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重罪の濡れ衣を着せられた騎士が、変幻自在なバッドアス少女ニモーナと出逢い、ど派手な冒険を繰り広げる。マイノリティの生を描いた暗喩としても読み解けるし、希望に満ちた全年齢クィアムービーとして時代を前に推し進める快作。
原作のNDスティーブンソン氏はノンバイナリーかつトランスジェンダーであり、ニモーナの変身を通じて描かれる自由闊達な楽しさと(社会の偏見による)苦しみには、性的マイノリティとして生きることの解放感と苦悩も込められているように思えた。
リズ・アーメッド(常に最高)が演じる騎士がゲイのキャラクターで、彼と騎士の恋人のロマンスもきっちり描かれるという点も素晴らしい。こうした描写があってこそ、主役のニモーナの「変身」が何を意味しているかのメタファーもより明白で鮮烈なものになったと思うし。
『ニモーナ』、称賛したくなる点としては革新的なマイノリティ表現や真摯なテーマ性が中心になるわけだが、まず直球に面白いエンタメ作品というのも最高である。冒頭の展開からけっこう衝撃的だし、サスペンスの盛り上げ方も巧みでスリリングなので退屈しない(ニモーナがほぼなんでもありな万能な強キャラなことを考えると、地味に凄い気がする)。
さらにSFみたいな中世社会の美術やアクションなど、ルックも普通に現代アニメとして第一線級なのも実に良かった。『シーラとプリンセス戦士』はもちろん伝説のクィアアニメなのだが、いうて作画とかは限られた予算で全力を尽くしてる感もあったりしたので、同じ原作者で同じスピリットをもつ最新作『ニモーナ』がしっかりゴージャスなルックのアニメだったことに一層嬉しさもある。
あと配信当時、日本でもキッズ部門での上位を記録していたのが印象的だった。今の配信世代の子はこうした作品を普通〜に見て育つんだろうし、日本(てか同性婚をいつまでも許さないようなガチガチに保守的な政府)がモタモタやってるうちに人々の意識のほうが先に変わってゆくんだろうな、とある程度の楽観はしている。もちろん勇敢な作り手がいてこそだが…。
2023年は(多少の進歩も見られたとはいえ)トランスジェンダーの人々を筆頭に、マイノリティへの憎悪や悲しいニュースが飛び交った年でもあった。ひどい現実を前に、もう生きるのがイヤになっちゃうような思いをしている、特にマイノリティ当事者の人は大勢いると思うんだけど、『ニモーナ』はまさに今そういう思いをしてる人に向けて作られた作品だと思う。
《今みたい人は…》ネトフリで見られます。いつか劇場でも見たい!
t.co
『スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース』
今年は素晴らしい海外アニメが多すぎたとはいえ、こんなにベスト10が海外アニメで埋め尽くされて良いんだろうかとはちょっと思ったが(今更すぎる)、さすがにこれを入れないわけにはいかない。タイミング的にブログ記事を書けずじまいだったのが無念。2019年は海外アニメ伝説の年として(私の中で)有名であり、『スパイダーバース』はその筆頭だったのだが、そんなヤバすぎた前作の記録を見事に更新である。
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実は公開時(6月)には欧州に行っていたのだが、どうしても本作が観たかったので、アイルランドのダブリンの映画館で観てしまったのも良い思い出。日本語字幕なしでわかるかな…とは思ったが、なんつーかそれどころではない映像表現に圧倒されっぱなしだった。
ちなみにダブリンの中心街にあるSAVOYという老舗の映画館で観た。上映後も席をうろうろ移動してる謎の人とかいた(設備はそんな立派ともいえない感じだが、席はゆったりしてて座り心地よし)。「おまえか!?おまえか!?」の定番ギャグはアイルランドでもドッカン受けてました。スパイダーパンクが重要キャラとして出てくるので、パンクの名所とも言えるダブリンで見るのはけっこう正しかったかも。
とはいえ原語のみだとわからん部分も多かったので、日本に帰国してから速攻でIMAX版を観に行ったのだった。
そして、やはり見返せば見返すほど凄いアニメーションだなと驚愕した。『スパイダーバース』の革新性を一言で言うと(ムズいが)、3DCG全盛時代に「"絵が動く"とはどういうことか」を再び根本から考え直したことで、現代アニメ界に地殻変動をもたらした一作と言える。それだけに最新作『アクロス・ザ・スパイダーバース』がそれをさらに先に推し進めたことには驚愕するしかなかった。
『アクロス・ザ・スパイダーバース』の凄さを一言で言うと(これも難しいが)、それは「圧倒的に凄いアニメーションを描くことで、逆に現実世界の"凄さ"を提示し、それに追いつこうとしている」ということかもしれないと思った。
創作物がいかにゴージャスになったとしても、実際には私たちの現実世界は、創作物をはるかに上回るほど圧倒的に多様かつ複雑なのであって、『アクロス・ザ・スパイダーバース』はそのことを驚異的なアニメ表現によってもう一度思い出させ、かつその多様さと複雑さに、全力で追い縋ろうとしているように感じる。グッゲンハイム美術館での戦闘やムンバッタンでの冒険、スパイダーマン・インディアにスパイダーパンクのような、眩暈がするほどパワフルで美しい世界やキャラは、そうした志と超技術の結晶なのではないかと。
そうした意味では、今更ではあるが、黒人少年が主人公(日本のパンフの表紙も堂々飾る)のエンタメ超大作というだけでも何気に『スパイダーバース』シリーズは画期的と言える。まぁこんだけ圧倒的に面白く美しいド傑作じゃないと、マイノリティ主役の大作はまだ許されない…みたいに考えると世知辛さもあるが、それでも凄いことだと思う。
本作は「過ち=mistake」というキーワードを通して、「自分は"過ち"なんかじゃない」と主人公が奮起する物語でもあるんだけど、その意味では、(同じく黒人主人公の)『クリード』一作目と共鳴する話でもある。そこに、『リトルマーメイド』を巡る紛糾であるとか、アイコニックな黒人を演じたチャドウィック・ボーズマンの逝去なども考え併せると、本作でマイルスが突きつけられるものの現実的な重みが格段に増すなとも感じた。今年公開される(よね?)後編を楽しみに待ちたい。
《今みたい人は…》配信もきていて、amaプラはレンタル100円(現時点)なので未見ならまずは観てほしい↓。
ただせっかくの超アートなので、できる限り良い画質で観てほしい気もするし、ちょうど4Kの円盤もほしかったので、勢いで今買ってしまった…。お年玉感覚。
アートブックも日本語が出ていた。じっくり読み込みたい。
『長ぐつをはいたネコと9つの命』
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2023年のヤバい海外アニメ映画(エンタメ部門)三銃士のうち、2つめである。詳しくはブログに書き倒したので読んでほしいが、「アニメ」というくくりを抜きにしても、これを入れないベスト10はありえないだろと思えるほどに、圧倒的なエンタメとしての魅力を放っていたと思う。あと今年の海外アニメの中でも、突出して「どうぶつ映画」として屈指の出来栄えを誇っていたことも個人的には大きい。
《今みたい人は…》amaプラ見放題にも入っているよ
『ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック』
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2023年のヤバい海外アニメ映画(エンタメ部門)三銃士のうち、3つめは間違いなくこれである。3本ぜんぶベスト10に入れるのはバランス的にどうなんだ、とか頭をよぎらないでもないが、全て今年を代表するエンタメ作品なので仕方ないのである。詳しくはブログ記事↑に書きじゃくったので読んでほしい。
「めちゃくちゃ絵のうまい人が、落書きみたいにさっと描いたラフな絵」の生き生きしたカッコよさが、がっつり構築されたアニメの中に見事に刻まれている。秩序と混沌を両立し、観たことのないようなアニメーションを誕生させてくれたことに感動した。『ニモーナ』にも通じる優しい物語も心打たれたし、続編があればさらなる深いテーマも描けそうだなと思う(あってくれ続編!)。
《今みたい人は…》配信もディスクも出てます。タートルズ好きの姪にも見せたかったのでブルーレイ+UHD買いました。
アートブックも買った。日本語版出してくれてありがとう!としか言えない。
映画『窓ぎわのトットちゃん』
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今年のベスト10は甲乙つけがたいので順位なしとはいえ、あえて選ぶなら本作が今年1位でいいかなと。↑のブログ記事に書きまくったのでそちらを読んでほしいが、戦争の恐ろしい雰囲気に支配されたかのような2023年を締めくくる1本としてふさわしい強度をもつ映画だったなと思う。口コミも広がってきて、まだまだロングランの目もあると思うので、本当にオススメしたい。
《今みたい人は…》劇場で絶賛公開中なので、今すぐ行ってくれ!!
tottochan-movie.jp
この機会に原作も読んだが、audibleで聴いた黒柳徹子の朗読版も良かった。
【優勝】『君たちはどう生きるか』
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優勝とは…という感じだが、なんか「ベスト10」とか「1位」とかもしっくりこなくて、ちょっと別格の場所に置いておきたいという作品になってしまった。ブログやネット記事でひたすら書き倒しただけではなく、アトロクに呼んでもらってラジオでも喋り倒したので、読んだり聴いたりしてもらいたいと思う。正直言って「宮崎駿の新作が来るよ」という前情報でそこまでテンション高かったわけでもなかったので(『風立ちぬ』もそこまで…だったし)、まさかこんな刺さり方をする映画になるとは自分でも意外だった。しかしそのおかげで宮崎駿の過去作を(だいたい)見返したり、一緒に高畑勲の長編もおおむね観たりと、充実したジブリイヤーを過ごすことができた。
今でもこの映画が「万人にオススメできる作品」なのかどうか全然わからないし、ぶっちゃけイビツで異常な作品なのは確かと思うし、こんな身勝手で獰猛なアートアニメ映画が80億だかヒットしてるのも凄い状況だなと思うし、シンプルに面白い映画が観たければ上記の(本作以外の)ベスト10から選んでほしいとも思うが、何か「自分に向けられた作品」という感じがどうしてもしてしまった。まさか宮崎駿の最新作にそんな感想を抱くことになるとは…。映画とは、創作物とは本当に面白いものではありませんか。2024年もこんな衝撃の出会いが待っていることを(ハラハラしつつも)期待したい。
《今みたい人は…》劇場でもまだやってる(よね)。円盤とかいつ出るのだろう。
おしまい!
…としたいが、どうしても10に入り切らなかった素晴らしき作品たちを「次点」として10本に絞ったので、よろしければチェックを。
【次点の傑作たち10選】
『ファースト・カウ』
マッチョなアメリカ開拓時代の「大きな物語」からこぼれ落ちた男2人が「アメリカ最初の牛」と巡り合い、まさかの発想で成功を狙う!という、わくわく動物映画であり、極小スケールの犯罪劇であり、親密で優しき西部劇であり、アメリカという国を凝縮した壮大な寓話のようでもある。驚くほど重層的で豊かな映画でした。
『ゴールデン・リバー』とも非常に近いテーマや精神性を感じるので、好きな人は確実に観たほうがいいと思う。起こることの劇的さはより控えめなのに、(驚きの冒頭も功を奏して)十分にハラハラできるサスペンスとして成立しているのもけっこうスゴイ。
ビニタキさんも年間ベストにあげていたのでビニがさ新年会で語り倒したい!
《今みたい人は…》劇場へGO!公開数あまり多くないと思うけど、間違いなく映画館で観たほうがいい傑作です。
『エゴイスト』
服を鎧のように着こなすゲイの青年が、美しく健気な若者と出会い、真心と欲望の入り交じる関係を築く。肌を刺すような痛みに溢れた同性ラブロマンス…なのだが、事態は予想を超える方向へ。その転換に賛否あるだろうが、広く公開される日本映画として、本作の意義は計り知れない。
やはりなんといっても鈴木亮平である。 自身が日本エンタメ界にとって大きな存在であると十分に自覚した上で、日本映画を大きく前に進めようとする志、それを裏付ける圧倒的な才能に打ちのめされた。本作は海外でも称賛されるはずだが、その意義の大きさは日本の観客の方がより理解できるはず。
鈴木亮平の真摯な役作りへの姿勢も功を奏し、今も社会で普通に暮らす同性愛者のキャラクターとして画期的だったし、ゲイコミュニティでの自然で楽しそうな様子も心に残る。権力の中枢の人間が少数者への蔑視を垂れ流す日本社会で、本作が広く上映されていることには大きな意味がある。
『his』に続いてゲイの青年を演じる宮沢氷魚さんの(実は企画が生まれたのは本作が先らしい)、儚く美しくも「こやつ放っておけんな…」となる親しみを漂わせた演技も良かった。
ひとつだけ補うと、元が自伝的な小説でキツい話だし、少数派を描いた物語についてのとある"定形"に当てはまってしまう作品なのも確かで(この辺は実は『窓ぎわのトットちゃん』とかにも言えてしまう))、この過酷な社会で希望ある物語を求めるマイノリティ当事者に無条件で勧めるかと言えば……な部分はなくもないと思う。それでも意義が遥かに上回るなと思うし、日本映画としてめちゃ重要な(かつたいへん面白いです)今年の必見作なのは確実。
《今みたい人は…》配信にきてます。
原作小説もチェック。
『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』
ここまでの3つが、とてもベスト10に入れたかったけどギリ入らなかった三銃士なのだが、本作は2023年の実写映画を代表する一作なので特に惜しい。 アメリカ先住民の連続怪死事件を巡る犯罪サスペンスという、巨匠スコセッシの集大成でありながら、無尽蔵のチャレンジ精神の結晶のような堂々たる大作。3時間半の長大さも苦にならない、映画の呼吸を知り尽くした巨匠の業前。
石油を掘り当て大富豪となったアメリカ先住民という、被害者でありつつ複雑な背景をもちステレオタイプを覆すようなオセージ族を、当事者の監修もきっちり入れた上で人間的に描く姿勢も良い。モリー役のリリー・グラッドストーンの内に秘めた知性の煌めきは忘れがたい。
映画の元となった事件の紹介記事↓(ナショジオ)。連邦政府の法律が先住民の利益を守るどころか、その先祖伝来の土地を白人入植者が奪う手段に利用された。石油発見でさらにエスカレートし、オセージ族60人以上の連続殺人事件へ…
t.co
社会的・歴史的な奥行きの深い映画なので、背景など詳しく知りたくなるだけに、パンフレットの制作がないのがやや残念だったが、原作のノンフィクションが出ているのでこちらをオススメ。
《今みたい人は…》AppleTV+でもうすぐ見放題になるっぽいのだが、まだギリ劇場でもやってる?っぽいので、ハードル高めな上映時間と思うが、3時間半もあるからこそ没入できる環境で一気に観てほしい。もう滅多になさそうな、スコセッシ作品を劇場で観られる贅沢な機会だし。
tv.apple.com
『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
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記事まで書いたのにベスト10入れないんかいという感じだが、アカデミー作品賞もとってるし、いいかなって…(?))。「後悔と手をつなぐ」、けっこうお気に入りのフレーズ。詳しくは記事を読んでくださいませ。
《今みたい人は…》配信きてます。吹き替え気になるな。
『イコライザー THE FINAL』
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これもできればベスト10に入れたかったほど超大好きな作品で記事も書いてしまったが、まぁ次点くらいにしておくのが収まりがいいかも。今年シチリアに行ったこともあり、イタリアが舞台のハリウッド映画としても楽しく観ました。詳しくは記事読んでね。
《今みたい人は…》もう配信も来てた。新作なので高めのレンタル配信ですが。
冒頭10分がもうヤバイのでここから観てくれても。
『別れる決心』
今年のシネフィル大賞は決まり、と書いたが、マジで2023年シネフィル大賞という感じであろう。『お嬢さん』が人生ベスト級に大好きなのでパク・チャヌク監督の最新作と聴いて初日に駆けつけたが、予想外の方向からの凄みに圧倒されてしまった。ある転落死への疑惑から始まる妖しいロマンスなのだが、映像的な語りの手法があまりに大胆かつ異質な快楽に満ちていて、酩酊させられる…。
パク・チャヌク監督、この世の映像技法ぜんぶ使ってんじゃねーの?と思うような乱れ打ちで、ものすごいスムーズかつ異様な編集テンポや構図や語り口があまりに心地よく(逆に気持ち悪く?)所見では途中一回少し意識を失ってしまったほど。結局2回観たが、2度観ても映画の全容が掴めた感じが全然しないのがマジで凄い。なのに話そのものは古典的というか、パク・チャヌク以外が撮ってたら「まぁよくある男女のノワール的なやつね」ってなりそうだし、ほんと「どう語るか」が全てなんだな…とつくづく実感するヤバい映画だった。
パンフまでヤバかったのも良い思い出。
《今みたい人は…》amaプラ見放題にきてます。
『バービー』
こんなド直球フェミニズム映画をここまでポップなエンタメに仕上げてその年最大のヒット作にしちゃうっていう、大技をやりきったこと自体がやっぱ凄すぎる。色んな良くないところも当然あるアメリカのエンタメ界の、それでも圧倒的にポジティブ一面を目の当たりにさせられたというか、(内容そのものは色んな意見あるかもしれないけど)とにもかくにも今年を象徴する一作だなと思う。
《今みたい人は…》配信あるよ。
『対峙』
壮絶な密室劇という点で忘れがたい一作。 高校で起こった銃乱射事件で息子を失った両親と、大勢を殺した加害者の両親が、事件の6年後に一室で顔を合わせて"対話"する。地獄のようにヘビーな設定だが、取り返しのつかない悲惨な出来事を経た後に、どんな救いがありうるのかを真摯に問う話。今の世界の混迷っぷりを見ているとなお、本作で描かれたようなことの重要さが増したりするのかな…とか思わされた。
まだ"対話"が始まる前の、当事者以外の人々が部屋の下見やセッティングをする場面が異様に長く周到で、不穏さをじりじり高めていくのだが、振り返るとその場面ですでに様々な伏線が張り巡らされていた。「修復的司法」という、本作で描かれるプロセスのリアリティを高める描写でもある。
時間をかけた前準備シーンはもちろん、当事者の両親たちが集まった後も本題になかなか入らず、「銃」という言葉が初めて出てくるのさえけっこう時間たってから。本当は銃にまつわる話とさえ知らずに観るのが最善かもだが…そこを伏せて紹介するのは厳しかった。
『対峙』の原題は「Mass」で、"Mass shooting"(集団への銃撃=銃乱射)に由来するのだろうが、たとえば「10人死亡」みたいに"集団"が数字で示されることで、その事件で人生が大きく歪められた、生きた1人1人への想像力が失われることに、この映画によって抗う…という志もタイトルにあるのかなと。
宗教の負の面を語る『「神様」のいる家で育ちました』も読んだばかりだが、その一方でやはり人間のキャパを超えたあまりに悲惨な出来事に、世俗的/科学的なやり方だけで向き合うのも限界があるのかもな…と『対峙』を観て思ったりした。
そんなわけで宗教的な読解の余地も多そうな『対峙』だが、こちらのインタビューによると監督自身はクリスチャンではないという。終盤で目の当たりにする、無限地獄から絞り出したような一滴の救いは、宗教的な輝きを帯びてはいるが、大切な存在を喪った人の心を普遍的に照らす"答え"でもあるのだろうと。
《今みたい人は…》有料配信に来てます。
『NTLive ライフ・オブ・パイ』
NTLive色々見たけど今年最もお気に入りは本作かなと。少年がトラと一緒に漂流する(映画版も有名な)ストーリーを、生命感あふれる動物パペットと共に、演劇でしか表現できない抽象性にあふれた形で豊かに物語る。
一応ネタバレは避けるけど「トラ」などの動物をどう描くかがテーマの根幹に関わってくるのだが、その点ntlive版の、筋肉や骨の構造は絶妙にリアルだけど、操り人形的なファンタジックさも兼ね備えた造形バランスは完璧と言える。動物好き・アート好きは『戦火の馬』級に必見。
アン・リーの映画も良かったのだが、物語の核を知った後だと、ちょっとトラのCGがよくできすぎてる感は否めない(映画だからそういうもんかもだが)ので、なおさら演劇版のリアルと抽象性のバランスの見事さは特筆すべきだなと。生でも観たくなった。
《今みたい人は…》NTLiveはいちど見逃すと映画館で見返せる機会はあまりない…と思いきやちょうどリバイバルやってて、1/8に劇場で見れるぞ!みのがせないね
www.ntlive.jp
『ロスト・キング』
掘り出し物的な面白い映画。シェイクスピア劇『リチャード三世』を観た女性フィリッパ(サリー・ホーキンス)が、リチャードの境遇や生い立ちに自分を重ね合わせ、歴史研究に没頭するうちに、リチャードの遺体が眠る場所の真実に迫っていく…という実話に基づく作品。
『ロスト・キング 500年越しの運命』の鍵となるリチャード三世はシェイクスピアの描く王の中でも抜群にキャラが立ってて、外見によるコンプレックスや人間臭い野望を抱えたアンチヒーロー的主人公(多分『ゲーム・オブ・スローンズ』のティリオンのモデル)。ただし戯曲のせいで歪曲された面も大きく…。
シェイクスピアが「こまけぇこたぁいいんだよ!」ノリで歴史事実を気にせず、天才的な筆力でリチャード三世という稀代の主人公を作り上げたせいで、彼は良くも悪くも「悪どい野心家」として歴史に残ることになってしまった。『ロスト・キング』ではそんな固定観念を、市井の歴史オタクが覆そうとする。
芸術と歴史の繊細な関係に切り込む話なのが面白い。芸術の才能が、実在人物に覆しがたいイメージを一方的に与えてしまう。しかしシェイクスピアが面白い劇を作っていなければ、そもそもフィリッパがリチャード三世を知ることもなかったかも…という複雑さもあり。
フィリッパとリチャード三世という時代も属性も遠すぎる二者を、身体障害にまつわる偏見・抑圧という苦境が繋ぐ…という構図も(実話ベースと思えないほど)綺麗だった。さらにフィリッパは女性ゆえのナメられが、リチャードはシェイクスピア由来の歪曲が重なる…。
実話ベース映画あるあるとして、「いやさすがにそれは脚色だろ、と思うところに限って実話」という法則がある気がするのだが、 『ロスト・キング』もその例に漏れず、駐車場の「R」のくだりとかまさかの実体験っていうね…(ただ逆にリアリティがなさすぎて脚色ではあんなエピソード入れられないよなとも)。
昨年はロンドンでシェイクスピア劇を見たこともあり、より面白く見られた。
《今みたい人は…》ちょうど配信とかないっぽい!すまん!でも大変良い映画なのでそのうち見てね。
というわけで次点10選でした。もういいかげん終わりたいですが、まだ全然よかった映画があるので困ってしまう。以下に「部門賞」としてなるべくさっくり記しておく。もはやメモみたいな感じだが…。
【部門賞】
◯昨年ベストに入れちゃったから外したけど実質的には今年も全然ベスト賞
『雄獅少年/ライオン少年』
昨年のベスト↓に入れたので、今年はベストからは外してしまったけど、日本語版の公開も嬉しかったし、何度見ても超絶ド傑作だよなと震撼させられた…。
numagasablog.com
配信もきてるので本当に見た方がいい。
◯気骨あるアニメオブザイヤー
『ゲゲゲの謎 鬼太郎誕生』
初見では正直そこまでぶっ刺さったとかいうほどではなかったが、ネットの考察とか、熱い語りとか見てるうちに「たしかにすごい気骨あるというか、画期的なアニメだったな…」と思えてきた好例。こういうアニメ、色んな意味で増えてほしい。
その後、水木しげる作品をなんだかんだ色々読んだりした。『コミック昭和史』とかめちゃ面白い。
◯カラッと快作アニメ賞
『SAND LAND』
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今年の日本アニメ豊作すぎたし、年間1位!とかではないけどほんと楽しかったし、鳥山明のこういうとこやっぱ好きだな…という好ましさに溢れたアニメ化でしたね。全部がカラッとしてるのも(砂漠だけに)よかった。
◯カラッとしすぎ賞
『乾いたローマ』
カラッとしすぎたローマが大変になる映画。イタリア映画祭で見たやつなのでみんなあんまり観てないと思うが、今年トップ級に好きだったな。イタリアも色々(日本と同じだったり別の意味だったりで)問題を抱えてはいるんだけど、こういう大作映画がしっかり作られるのは、さすが映画大国といおうか。
◯サメ映画オブザイヤー
Denti da Squalo(直訳・サメの歯)
日本人でまだ私しか見てない可能性がある(言い過ぎ)サメ映画。サメへの愛と慈しみにあふれた「アンチ"サメ映画"」でもあり、ローマで見られたことも含め良い思い出。今年のイタリア映画祭で来そうな予感もするのでその際はぜひ。
◯リバイバル・オブ・ザ・イヤー
『シークレット・サンシャイン』
23年、良い回顧上映が色々あったのだが、イ・チャンドンは改めて天才的だなと思ったし、特に『シークレット・サンシャイン』は素晴らしかったな…。ラストがあまりに忘れがたい美しさ。せっかく首都圏に住んでるならこういうリバイバルに足を運ばねばと思わされた(今年も多そうだからな…)。
◯キャラデザ・オブ・ザ・イヤー
『金の国 水の国』
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それほどアニメファンの間でも話題になってなかった気もするが、お気に入りの一作。何よりキャラデザがとても良かった(詳しくはブログ読んでね)。結局のところ、多様さ=面白さに直結するんだなと思う。
◯映画の本質に迫る賞
『エンドロールのつづき』
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小粒ではあるが、忘れたくない良作インド映画(ブログも書いた)。映画のためならなんでもDIYする主人公の精神を見習いたい。後半の映画の本質(物理)地獄めぐりみたいなシーンが鮮烈だった。
◯ロマコメ・オブ・ザ・イヤー
『マイ・エレメント』
よくてびっくりした。いやピクサーはぶっちゃけずっとクオリティ安定してるので、何びっくりしとんねんという感じだろうが。こういう正道ロマコメも実は久々に観た気がする。異性愛にあまり萌えない私もちょっとグッと来てしまった。
『RRR』との共通点も指摘されている↓(私に)
◯おつかれ、そしてありがとう大賞
ジョン・ウィック コンセクエンス
アクションの物量といい上映時間といい、もう完全に全てが過剰なんだけど、それが一周回って「禅」を感じさせる…みたいな、逆に殺人こんまりみたいな話で凄かった(自分でも何書いてるのかよくわからない)。いやほんと普通に現代のアクション映画の最高峰だと思うが、やりすぎてもう異端みたいな感じでもあって、すごいなと。ラストはお疲れ様でした以外に掛ける言葉がない。ありがとうキアヌ。『サイバーパンク2077』でもなるべく優しくするね…
◯ヤバすぎアニメ大賞
オオカミの家
これは本当に凄かったしアニメ好きなら本来ならベストに入れるべきな気もするが、なんぼなんでも禍々しすぎるので、楽しげで前向きな作品につい席を譲ってもらってしまった。特殊な形ではあるが、ストップモーションアニメの傑作としても語り草になると思う。
◯キュートネス大賞
マルセル 靴をはいた小さな貝
ストップモーションといえば、これも見逃すべきじゃない逸品ですよ。今年一番かわいい映画であり、一番「ひゃあ〜」となる話でもあった。「アニメーション」という枠で語っても許されると思うが、実写の中に急にちいかわな存在が立ち現れることの違和感が鍵なんだろうな。PC画面で見るのもいいと思う。
◯やっぱり演劇ってスゴイ大賞
NTLive 善き人
2023年を代表するNTLiveはやっぱこれでしょうね。テーマもとてもアクチュアルで重要だし、演劇の凄さを誰でも実感できる作品なので、リバイバルとかでぜひ観てほしい。
◯やっぱり音楽ってスゴイ大賞
テイラー・スウィフト ERAS TOUR
そんな熱心なファンってほどでもないのになんとなく初日に観に行って、日本語字幕がなかったので何歌ってんのかはよくわからなかったにもかかわらず、それからというものテイラー・スウィフトを聴きまくっているので、やっぱ相当なインパクトがあったんだと思う。「今年の人」に選ばれたそうだが、そりゃそうだよなというパワーがある。
◯なんだかんだ巨匠はヤバいで賞
『フェイブルマンズ』
スピルバーグ本人には色々言いたいことが(特に最近は)多いし、本作も全体的にはそんな凄く面白いとまでは思わなかったのだが、やっぱりあのプロム後の、主人公とクラスの人気者が言い争いになる場面が凄すぎたと思う。2023年のベストシーンひとつ選べと言われたらあそこにする。あんなシーン初めて観た、というものをこんな大御所に見せてもらってしまうと、やはり感動してしまう。
◯ベスト恐怖シーン大賞
『ミンナのウタ』
思い返すと全体的にはまぁ普通かなという感じだった気もするが、やはりあの階段のシーンは本当に素晴らしかったし、23年最強のホラーシーンだったと断言できる(そんな沢山見れてないけど)。全体に面白い傑作もいいけど、1つ突出したシーンのある作品も意外と忘れがたい。
◯犬映画・オブ・ザ・イヤー
『スラムドッグス』
全体に下品なので微妙にオススメしづらさもあるが、本当に好きな映画だし、まっとうな犬映画だと思う。できればブログ書きたかったが、イヌ図解は描いたのでよしとしよう。
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◯くま映画・オブ・ザ・イヤー
『コカイン・ベア』
公式イラストをかいたり…
bunshun.jp
文春オンラインで記事を書いたので読んでほしい。色んな意味でクマイヤーとなってしまった23年にふさわしい、ふざけ倒してるけど真摯なクマ映画でもある。
◯絶滅どうぶつ映画オブザイヤー
北極百貨店のコンシェルジュさん
絶滅どうぶつにこんなふうに光が当たる機会がくるとは…と、絶滅どうぶつ本を出した身としてもジーンときた。アニメ自体のクオリティも高くて満足。
まだまだいくらでもあげられるが、キリがないしいいかげん疲れてやる気もなくなってきたのでいったんここまでにしたい。2万5千字って。今年こそ本当にこんな長文は避け、あっさり気味にブログを使いこなすスマートブロガーになることを、今年の抱負としたい。ともかく本当にたくさんの良い映画に出会わせてもらって、映画に関わる全ての人に感謝である。
ここまで読んでくれたような奇特で優しい方はたぶん確実に楽しめると思うので、1/7(日)のビニがさ新年会、ぜひ来てくれよな〜!
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