目には目を、牙には牙を、復讐するはゾウにあり。「ゾウは忘れない」という有名なことわざの通り、ゾウは記憶力に優れた動物で、時には「復讐」をすることもあると囁かれています。陸上動物で最大の体と脳をもつゾウの知性には、どでかい秘密が隠れているようです。
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ゾウは忘れない」（Elephants never forget）という、英語圏では有名なことわざがある。それが単なる決まり文句ではなく真実だと思えるような行動をゾウはよくすると言われている。そのひとつが復讐だ。
自分や家族や仲間に危害をくわえた人間に、ゾウが「復讐」を遂げた…という事件が、時々話題になるのだ。人間にはおなじみの「復讐」だが、実行するには高度な知的能力が必要のはずだ。ゾウの「知性」にはどんな秘密があるのだろう。
ゾウは地球でトップクラスに大きな脳をもつ動物だ。記憶をつかさどる側頭葉や
海馬が大きく発達しており人間の脳にとても近い。脳と体の大きさの比率(EQ)でもゾウは全動物でトップ３に入る。
片方にご褒美が入っている、絵柄の異なる２つの箱をゾウに開けてもらう実験をした。結果、20対もの木箱のパターンを記憶しただけでなく…その1年後に再テストをしても、なんとゾウは完璧に答えを覚えていたのである。
仲間を記憶するのも大得意。ゾウの保護施設でなんと「23年ぶり」に再会した２頭のゾウが激しく喜ぶような反応を見せたという話もある。同じサーカスで一緒に芸をしていたという。「記憶力」は過酷な自然を生き抜くために欠かせない。例えば、幼少時に干ばつを生き延びたゾウは大人になってからも「どこに水があるか」「危険な場所はどこか」…といった知識を活かせる。群れを率いるリーダーにとってはとりわけ欠かせない能力だ。
ゾウは優れた知能だけでなく、豊かな情動ももっている。思いやりを発揮して仲間や家族を助ける行動もよく観察される。
そしてゾウは、まるで「死」という概念を理解し、同胞の死を「悼んで」いるようにしか見えないと語る専門家もいるほどだ。動物はふつう、死骸にあまり興味を抱かないが、ゾウはよく死骸や骨を注意深く調べている。頭骨より、牙に強い興味を示すことが多いようだ。密猟者が奪った牙を取り戻し、持ち主のゾウの骨に「返した」という逸話まであるほどだ…。
豊かな情動と高い記憶力は、諸刃の剣でもある。ゾウは人間以外で唯一「PTSD」（心的外傷後ストレス障害）に苦しむ動物でもあるのだ。仲間を殺されたりした辛い記憶も
トラウマのようにずっと抱え続けるということになる…
こうした記憶力や情動を考えれば自分や同胞を傷つけた人間にゾウが「復讐」することは十分にありうるだろう。（ただし、傷つけた「本人」を意図的に攻撃するかは不明だが…。）象牙を狙った密猟が絶えず、生息地の破壊によって人間との距離が縮まっている今、人とゾウの衝突は増えていくかもしれない。
…とはいえ、ゾウが「忘れない」のは「恨み」だけではないようだ。ゾウとの信頼関係を長い間築いてきた動物保護家に、ゾウが生まれたばかりの自分の子どもを見せにきた…というエピソードもある。さらに驚くべきことに、その人の子孫が生まれた時にも、それを察知したかのようにゾウが駆けつけてくれたという…！
ゾウの知性や情動はまだまだ底が知れないが、人間とゾウの良好な関係のために、例の決まり文句を覚えておくべきだろう。ーー「ゾウは忘れない」と。
＜参考文献＞
ゾウが教えてくれたこと: ゾウオロジーのすすめ (DOJIN選書) | 入江 尚子 |本 | 通販 | Amazon
ゾウの知られざる知性や記憶力の秘密を語る、ゾウ研究者さんによるゾウ本。読みやすくて面白い。ゾウ調査のエピソードなども。
『象にささやく男』
https://www.amazon.co.jp/dp/4806714704/ref=cm_sw_r_tw_dp_BAQDB976M7RB59HVWD41 www.amazon.co.jp
ゾウ保護区をアフリカに作ったが、そこにやってきたゾウたちがめちゃくちゃ扱いづらくて…！？というけっこうな大ピンチから始まる、すごく面白かったゾウ本。図解中でゾウに子ども見せられた動物保護家さんの本です。
ディズニー+で見られるゾウのおすすめドキュメンタリー。メイキングもおすすめ。
ディズニーネイチャー／ゾウの足跡を追ってを視聴 | 全編 | Disney+(ディズニープラス)
最近の「ゾウの復讐」関連で話題になったニュースだと、インドでアジアゾウが高齢女性を殺し、葬儀にまで現れた…という話がSNSでも広く拡散されていました。ただ、女性を殺したゾウと葬儀に現れたゾウが同じ個体かもけっこう怪しいみたいで、以下の記事でファクトチェックされています。ゾウの記憶力の高さについて疑う余地はないんですけどね。
