沼の見える街

ぬまがさワタリのブログです。すてきな生きもの&映画とかカルチャー。

超高画質の異世界プラネットアース。『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』感想

みんな〜ウェイしてる? 私も『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』観てきました。ウェ〜〜〜イ!

というわけで感想をブログにかんたんに書いておく。かんたんに…と言いながら、ブログ感想を再始動して以来、毎回書いてく内に妙に筆が乗ってきて気づいたら1万字とかを突破しがちで、書く方も疲れるし読む方もいいかげん大変だと思うので、今回こそマジでかんたんに、具体的には3千字で終わらせたい。乗るしかねぇ、多忙な現代人のウェイオブウォーターに。

<ざっくり説明>

かつて世界1位の興行収入を記録した…と思ったら『アベンジャーズ エンドゲーム』に抜かれた!と思ったら最近リバイバルで抜き返して1位に返り咲いた忙しい映画『アバター』(2009)の13年ぶりの続編(劇中でも10年が経過)、それが『アバター: ウェイ・オブ・ウォーター』。ジェームズ・キャメロン監督は凄い大金(4億ドルとか)をかけた超大作を自信たっぷりに送り出し、有名監督の習わしとしてヒーロー映画をディスったりしている。上映時間はまさかの192分と『RRR』より長いが、その出来栄えはいかに…?

 

【予告編】

ところで、同じく3Dだった『ブラックパンサー ワカンダフォーエバー』のときに3Dの予告編流してくれればいいのに!と思った。せっかく観客みんな3Dメガネかけてたのに!

youtu.be

ちなみに…『ロード・オブ・ザ・リング』観てなかった件と同じくらい映画ファンとしては言いづらいのだが、実は前作『アバター』も観てなかったので、続編公開の前に家でサッと観といた。感想は……まぁ普通かな。公開当時に劇場でちゃんと3D体験したら凄かったんだろうなと思った。映画ファンと話す時「実はアバター観てないんだよね」と言うと「観てねーのかよ」と怒られがちだが、「わかったよ観るよ」と言うと「まぁでも今から家で観てもね…」と冷められがちで、なんやねんと思ったが、実際に観てなんとなくわかった。家で観てもね…

 

でもなんだかんだ有名作なので今からでも観よう↓

amzn.to

 

ーーー以下(そんなネタバレでもないが)ネタバレ注意ーーー

 

<よかったところ>

・圧巻のビジュアル表現

まず、ビジュアル面では(少なくとも映画としては)はっきりと観たことのない映像だった。並大抵の映像表現では驚けなくなっている現代、しっかりビジュアル面で凄いものを見せてくれる大作映画はそれだけで凄いし、ここに関しては「大口叩くだけのことはあるぜキャメロン」というかやっぱ「さすが巨匠」と思わざるをえない。

たぶん本作を都内で観る上で、現時点でベストの選択と思われる「丸の内ピカデリーのドルビーシネマのハイフレームレート3D」で観たのだが、単に「映像が綺麗」というのを超えて、こういう現実の世界を本当に切り取って劇場に持ってきたくらいのリアルな質感があって、インパクト的には「ブルーレイを初めて見た時」に匹敵するような凄みがあった。(若い人にはしょぼく聞こえたらゴメンだが、当時は「映像がDVDと全然ちがう!」と驚けたんです…)

特に中盤、海人(うみんちゅ)版ナヴィこと「メトカイナ族」が暮らす海の光景は圧倒的だった。最新鋭の「流体シミュレーション技術」とハイフレームレートでしか実現できなかった水表現のリアリティと滑らかさは前代未聞で、まさに「ウェイ・オブ・ウォーター」のタイトルに恥じない美麗さ。3D効果も相まって、架空の海洋生物たちの生命感あふれる海の世界へどっぷり「没入」する気持ちになれる。3D+ドルビーシネマ+ハイフレームレートだと通常料金では3千円超えるが、この海の場面だけで元が取れるほどの凄まじいクオリティだと感じる。

 

・超ビッグバジェット「わくわく生きもの映画」

そう、『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』は死ぬほど金をかけた「わくわく生きもの映画」である。現実には存在しない生きものたちを、現実世界で撮ったようにしか見えないHFRの超高画質で「捉えた」ドキュメンタリーみたいに見えてくる。まさに異世界プラネットアース、地球外ナショナルジオグラフィック、別次元ダーウィンが来た! の趣きだ。

プレシオサウルスっぽい「イル」、トビウオ+ワニみたいな「スキムウィング」、そしてクジラのような巨大生物「トゥルクン」。他にも美しい魚たちやタコ、クラゲ、マンボウ、イソギンチャク、ジャイアントケルプなどなど、登場する架空の生きものを挙げていけばキリがない。地球の動物と似てるけど絶妙に違うクリーチャーの生き様を臨場感たっぷりに捉える超絶美麗ショットが続き、生きものフィクションが好きな身としてはたいへん眼福である。

まぁクリーチャーデザインに関しては、いずれも現実の元ネタ生物を2〜3種ほどかけ合わせた感じで、それほど斬新とまでは思わなかったのも事実(この点では最近のディズニーの『ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界』の方が興奮したかも)。ただ逆に言えば「これは地球で言えばクジラね、イルカね、クラゲね」とあっさり脳が認識できるため、超高画質の異世界ドキュメンタリーとしての迫力を集中して味わえたといえる。

生きもの映画としてのテーマ性も、おおむねまっとうではないかと思う(前作同様、動物を主人公サイドにちょっと都合よく扱い過ぎではないか…とは思うけど)。クジラ(ではないけど地球で言えば明らかにクジラ)の知能を強調したり、そんな海の動物たちを踏みにじる人間の醜さを描いたり(捕鯨国である日本としては耳が痛いテーマ性とも言えるが)、そいつらを生きものパワーで撃退したりと、生きもの好きとしても溜飲が下がる展開だし、クライマックスは怪獣映画めいた楽しさもある。これほどの世界的な超大作で、動物の魅力や知性に光を当て、動物/環境保護の大切さを物語に織り込む姿勢は真摯だし、キャメロンのような巨匠にしかできないことだろう。生きもの好きとしては素直に尊敬すべきポイントである。(だからこそ、せっかく来日してくれた監督に、国際的にも紛糾中のイルカショーを考えなしに見せたりはしないでほしかった…。気まずすぎるだろ。)

そんなわけで、もはや「架空の生物である」ことが若干もったいなく感じるレベルの映像だったので、いっそ本物の海洋ドキュメンタリーを今回の3D+HFR形式で公開してくれれば絶対観に行くのに…とか思うほどだ。キャメロン監督はクジラの海洋ドキュメンタリーの製作を務めたりもしてるし。(この経験も本作に活かされているのだろう。)

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<気になったところ>

・ビジュアルは本当に凄い。凄いのだが…?

さっき「ビジュアル面では(少なくとも映画としては)はっきりと観たことのない映像だった」と書いた。ただし「映画としては」に注目してほしい。そのヌルッヌルのなめらかな映像の凄さには驚きつつも、「マジで人生で初めて見た映像だ!」とまでは驚けなかったのだ。「ゲームっぽいな」と思ったからである。

特にPS4/5の『Horizon』シリーズは強く連想した。『Horizon』自体、かなり『アバター』の影響を受けたのでは?と思わせる世界観なのだが、ここにきて続編の『Horizon Forbidden West』に(ビジュアル的なインパクト面でもストーリー面でも)ちょっと追い抜かれちゃってる感がなきにしもあらず。海の世界に突入!という展開も被ってるしね…(海中で呼吸できる理屈が適当すぎるところも同じで笑ってしまった)。

numagasablog.com

そう…キャメロンが留守にしてた(わけではないが)この13年の間に、ゲームを筆頭に「映画以外」の映像メディアも極めて大きな飛躍を遂げたのである。没入感という意味ではVR技術の成長っぷりも凄い。例えば「オーシャンリフト」というVRゲームは、グラフィックは『アバター2』より全然ショボいにもかかわらず、VRの特性が存分に発揮され、水中のマナティやイルカが「そこにいる」としか思えないほどの実在感を放っている。巨大竜がウロウロしてる深海ステージは怖くてプレイできないほどだ。

www.oculus.com

それもあって「こんな"リアル"で凄い映像、観たことないだろ!?」というキャメロンのドヤ感あふれる表現に「うん、たしかにめちゃ凄いんだけど…」とやや言葉が濁るのも事実だ。もっと言えば「映画における"リアル"って本当にそういうことなのか…?」と根本的な思考を促されるほどだった。

極端な例を引き合いに出すようだが、先月「チャップリン特集上映」で名作群をぶっ続けで観て、そもそも白黒だし画質も全然ハイではないのだが、本当に面白くて楽しくて心打たれたし、キャラが「生きてそこにいる」と思える体験をしたばかりだ。これも「映画の"リアル"とは?」という問いをさらに考えさせられるきっかけとなった。

movies.kadokawa.co.jp

『アバター2』のように、ドキュメンタリーとも見紛う超高画質で「リアル」な映像を突き詰めることは、映画表現の新たな挑戦として確実に意義があると思う。しかし、その挑戦が創作物の本質的なリアリティを真にカサ増しできるものなのか…、つまり「キャラや世界が本当にそこにいる/ある」ようだと、人々の心に深く刻み込むことができるのかといえば、それはまた全然違う話だよな…とも思うのだった。キャメロンもそんなことは十分わかってると思うけど。

 

・やたら保守的なストーリーとテーマ性

そういうことをわざわざ考えちゃうのは、やっぱ(前作同様)ストーリーやテーマ性がちょっと微妙に感じたからでもある。 特に「家族!父親!母親!子!感動!」みたいな、最近のハリウッド大作でもわりと珍しいレベルで濃厚な家族主義的・家父長制的なテーマ性に胸焼けした…。なんでこんな宇宙の果てが舞台で登場人物みんなエイリアンの映画で、こんな規範的な物語を観なきゃならんのだ…とは思っちゃう。これは本作に限った話ではなくディズニーとかもだが(本作で言えば肌が青かったり先住民風だったり)マイノリティっぽい表象でさえあれば、いくらでも保守的な物語をやってもいい、と思ってる節ないか…? 

父親が先導して、妻や子どもを巻き込んで故郷から逃げるように別の土地へ赴く…という『アバター2』と似た筋書きの物語は、最近AppleTV+のドラマ『モスキート・コースト』でも見たのだが、こっちは家父長制や家族主義へのガン詰めっぷりが半端なくて、本作の後に見ると温度差にクラックラすると思う。

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まぁ世界的ビッグバジェットが保守的になるのはしょうがないっしょ…という意見もあろうが、「海の青い人」がまさかのモロかぶりした直近のMCU映画『ブラックパンサー ワカンダフォーエバー』にしても、実質的な主人公は全員女性だったりと、過去の男性中心的なヒーロー映画を問い直す視点が大いにあったわけで。キャメロンがdisってるヒーロー映画と比べても、『アバター2』のそうした面での古さは目についてしまう。

そんなわけでキャメロンは確実に今も立派な巨匠だが、映像表現にしてもテーマ性にしても、やはり現在の最先端に比べると分が悪い部分はあるなと改めて思わされた。ただそれは裏を返せば、ちゃんと後続が育ってる、映画もドラマもゲームもエンタメ界がきっちり「進化」してるということで、それはキャメロンとしても望むところなんじゃないかとも思う。ヒーロー映画もたまには観たってや、マエストロ。

<まとめ>

物語やテーマ性の革新性には欠けるが、ビジュアル表現(特に海)は間違いなく斬新で、生きもの映画としても真摯な作りなので、海と生きもの好きは間違いなく一見の価値あり。なんか日本でだけ苦戦してるとも聞くが(今スラダンも凄いからね)、確実に劇場で観て損はない娯楽大作です。みんなもアバターでウェイしよう!

 

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よっしゃ〜3千字に収まった!ごめんうそ全然収まらなかった。5千字オーバーした。まぁいいやもうブログなんだからなんでも。なんにせよ本作のように、絶賛というほどではないにせよ「良いところもある・どうかと思うところもある」くらいの作品の感想も(記録の意味も込めて)なるべくあっさり、こまめにあげられればなと思うのでよろしくウェイです。持続可能な地球を目指すように、持続可能なブログ更新を目指したい…(?)