(本記事はpixivFANBOXで2022年4月に公開した記事をブログ用に再構成したものです。)
PS4&5用ゲーム『Horizon Forbidden West』、心の底から素晴らしいと思える傑作ゲームであるわりに、今年2022年はビッグタイトルが大渋滞しすぎて(特に日本では)相対的にちょっと影が薄くなってる気がするので、いかに本作が最高のゲームかをファンはまだまだ語らねばならないと思う。動物好きの観点からも、映画やドラマなど海外エンタメのファンとしても、見どころが本当に多いゲームなのだが、今回はポイントを2つに絞って記事にまとめておく。
タイトル通り第1章は「動物ゲームとしての面白さ」を語り、2章では「アーロイさんの圧倒的カッコよさ」について褒め称える構成です。致命的なネタバレは避けるつもり(終盤で一部ネタバレある部分は注意書き出します)なので気軽に読んでください。1万字あるけど。
【1】わくわく動物ゲーム『Horizon Forbidden West』
動物ゲームっていうか(主に)機械獣ゲームだろ!というツッコミが聞こえてくるが、個人的には『Horizon Forbidden West』は紛うことなき動物ゲームだと思った。ゾウとかキリンのような動物そのものが活躍するゲームというわけではなく(野生動物も脇役的に出るけど)、より抽象的に「動物とは/生命とは何なのか」という問いを、「機械獣」という存在を通じて提示しようという思想に貫かれた、極めて意欲的な動物ゲームとしての側面があると思う。それは前作『Horizon Zero Dawn』からしてそうなんだけど、本作はいっそう動物ゲームとしての深みが増していたなと。
まずはシンプルに、今回も動物モチーフの機械獣たちがどんどん出てきて、「オッこいつはプレーリードッグがモデルかな?」「ワニに続きカバだと!?」「カメきたー!」などなど、動物好きとしてめっちゃ楽しいというのがある。その機械獣たちもシルエットだけでなく、かなり巧妙に現実の動物の動きや習性を反映してることもあり、テンション上がりまくり。それまでの傾向から言って、今回はアメリカ大陸、アフリカ大陸の動物がメインなんだろうな〜と油断していると、むこうからカンガルーモチーフの「リープラッシャー」の群れがぴょんぴょん跳ねてきた瞬間はゾクゾクした。禁じられし西部、なんでもありだな!
ゾウ/マンモスをモチーフとしているトレマータスクとか、キングコブラがモデルのスリザーファングとか、元ネタがわかりやすい機械獣ももちろんカッコいいわけだが、今回は元ネタ動物が一種に絞りきれない機械もけっこういて、それも面白い。
たとえば今回のザコ機械バロワー(かわいい)。最初はプレーリードッグがモチーフかな?と思って、その読みは当たっていたのだが…
ホライゾン2の新しいメカ獣のバロワー、動きがめっちゃプレーリードッグなので、かわいくて壊しづらい。警戒時の立ち姿もだし、ぴょんぴょんジャンプするし、名前も「burrower=掘るやつ」だし、プレーリードッグ確定よね…#HorizonForbiddenWest pic.twitter.com/ptJsxxpCyl
— ぬまがさワタリ@『ゆかいないきもの超図鑑』3/8発売 (@numagasa) 2022年2月19日
ゲームを進めるとバロワーが体を上下にくねくねさせながら水中をすいすい泳ぐ姿も披露されて、「カワウソも入ってるなこれ!」とわかる。機械獣がある意味では特殊な「キメラ生物」でもある設定を活かして、さまざまな動物の特徴を抽象化して抜き出して組み合わせる、という芸当も可能になっている。動物ファンは機械に遭遇するたび好奇心をくすぐられると思う。
前作に引き続き登場する厄介な機械獣「ストーカー」も、前作のアートブックによるとタテガミオオカミが元ネタらしいんだけど、ヒョウを連想するしなやかで長い足と体躯をもっていたり、カメレオンやタコのように擬態したり、いろいろな動物の特徴をあわせもつ面白い(怖い)機械だった。(ちなみにタテガミオオカミは最近図解しました。足なっがい!)
サル(ヒヒ)がモチーフの「クランバージョー」も「そうきたか!」と感心した。動きはコミカルだけど素早くて強いし、集団で現れるとかなり厄介。しっぽがレアアイテムなのだが、切り落とすのがかなり大変! 機械の部品などの貴重品をすぐ持っていってしまうとか、習性もサルっぽくていいね(腹たつけど)。
新登場する機械で地味に「おっ!」と思ったのは「スパイクスノート」。オオアリクイを思わせる体つきなのだが(ピョロっと飛び出す長い舌も炎とかで再現されてたよね?)、スカンクのように尻尾を振り上げてガスを振り撒くという凶悪な能力をもつ。あと背中のギザついたウロコっぽい装甲は鱗甲目のセンザンコウも入ってる感じがした。スパイクスノートも複数の動物モチーフを巧みに組み合わせた興味深い例だし、その動物チョイスが渋いのもいい。
機械獣たちがどんなロケーションに生息していて、どんな行動をしていて、人間に遭遇するとどんな反応を返すのか…というのも、かなり巧妙に現実の動物の生態を反映していると思う。草原、高原、雪山、砂漠、湿地帯、森林etc…と多種多様なロケーションが存在するゲームだが、いち動物好きとして見ても「ここにその動物メカがいたら変じゃね?」ということがあまりなかった気がする(まぁメカだから本来どこにいてもいいんだけど)。本作における機械獣は、たぶん実際の動物たちの生態系をある意味「のっとる」形で世界に広がったと思われるので、生息地や行動が本物の動物と似ている必然性もあるんだよね。機械の残骸を食べる機械もいたりとか、特殊な食物連鎖の形も描かれていて想像が広がる。たぶん動物学の専門家を監修チームに入れるとかして、生物学的なリアリティを出すための考証を真面目にやっているはず。
『Horizon Forbidden West』の、機械獣の形で表現された「抽象化された動物」の面白さって、最近でも何かで感じたな…と思ったけど、演劇の『戦火の馬』だな!!と気づいた。
NTLive『戦火の馬』、再上映を観たけど大変良かった。馬の巨大パペットを人間が(隠れたりせず)動かすんだけど、徹底した観察に基づいた演技が素晴らしく、本当に(なんなら実物以上に)生きた「馬」が舞台にいるように思える。創作物における動物表現に興味ある人は必見。馬、流行ってるっぽいし…。 pic.twitter.com/Q2s5yiLzrb
— ぬまがさワタリ@『ゆかいないきもの超図鑑』3/8発売 (@numagasa) 2021年2月27日
『戦火の馬』も、骨組みと最低限の表面だけで構成された「馬」が、熟練のパペットマスターの手によって、絶対に生きているとしか思えないようなリアリティと生命力をもって表現される、動物フィクション好きとしては確実に一度は見ておいた方がいい、凄い舞台だった。『Horizon Forbidden West』はあの「馬」表現のような「生命の抽象化」の面白さをゲームというエンタメに落とし込んだような作品だな~と。
動物ゲームとしての『Horizon Forbidden West』に面白さを感じる最大の理由は、作り手たちの現実世界の動物に対するリスペクトも大きいのだろうし、それはゲームの世界観とも直結している。続編である本作の機械獣は、特に「動物」「生命」としての側面がクローズアップされていたなぁと思う。機械獣たちは極めて危険な存在で、時には立ち向かって破壊しないといけないのは確かなのだが、元はと言えば人間に汚された地球を癒すために、生命に対するリスペクトも込めて作られた、ある意味では「新しい生命」でもある。(機械たちを生み出す「機械炉」の設定は、人体が生命を生み出すメカニズムを参照しているともアートブックで読んだ。)
というか、本作の機械って実は「生命の定義」を満たしているのでは?と思わされる。例えば「他の有機物を取り入れて(変則的ながら)代謝を行う」とか「自己を複製する」という性質を、あくまでプログラムに則った方法ではあるけど実践しているわけで、それはもう新しい生命なのでは…?と根本からプレイヤーに考えさせる設定に意図的にしているなって。
機械は大きな脅威であると共に、壮大なる「新しい生命」として地球を跋扈する存在でもあって、(前作のバヌーク族や本作のウタル族のように)神のごとく崇める部族もいる。ゆえに今回の悪役は、機械も人間も動物も含めた地球の「生命」を丸ごと愚弄してる不老不死のエリート集団だったのだと思う。連中にとっては、機械も人間もその他の動物も、「自分達とは違う、抹殺してもいい下等な存在」という意味では全然大差ない。だからこそ、そんな悪役連中が迎えるあの無惨な結末には「ざまあ~」と大変スカッとした。
破壊すべき脅威であると同時に、別種の「生命」でもある…という機械獣の複雑な魅力を最も象徴するゲーム内アクションが「オーバーライド」だと思う。前作に引き続き登場するコマンドで、機械獣を乗っ取って自在に操る能力。さっきまで恐ろしい敵だった機械が頼れる味方になる瞬間は楽しいし、一緒に旅をして愛着を感じてきた機械が攻撃されて壊れちゃったりすると一抹の悲しさもある。本作はそうした、人が機械に抱く相反する想いがかなり強調されていて、機械獣グリムホーンを大地神のように崇めるウタル族の物語なんかはその最たるものだったなと。結末ではウタルの「歌」の文化を見事に活かしていて、感動的なエピソードだった。
オーバーライドといえば、なんといっても終盤のクエスト「テンの翼」の感動は忘れられない。機械炉をあらかた制圧した後も「あれ、なんでこいつだけオーバーライドできないのかな?」と不思議に思っていたが、あいつに乗ってアレするアーロイさんの絵面の最高っぷりに「そうきたか~~!!」とストレートに震えた。オーバーライドという本作を象徴する能力、キービジュアルにもなってる機械獣、広大なオープンワールドを最も楽しく味わう方法…など考えれば必然的といえるが、全く予想していなかったので(わくわく動物ゲームの行き着く先としても)最高のサプライズになった。あのビジュアルが良すぎて告知映像とかにもすでに使われちゃってるっぽいが、新規プレイヤーにはできる限り何も知らずに、私と同じ最高の驚きを味わってほしいものだ。
動物ゲームとしての『Horizon Forbidden West』を語る上で一応補足しとくと、普通の野生動物もちょいちょい登場する。イノシシとかフクロウとか色々いて楽しいものの種数は限られていて、あくまで大自然のリアリティを彩る脇役という感じではある。苦言というほどではないが個人的には、せっかく狩猟動物の代わりとしての「機械」という存在がいるのだから、現実の動物を狩らないとステータスが強化できない要素は排してもよかったんじゃないかな~というのは、いち動物好きとしてちょっと思ったかな…。(機械や逆賊はともかく、ペリカンやアライグマを殺しまくるアーロイさんは若干イヤ、みたいな。)まぁ狩猟が文化に根差しまくってる本作の世界観では必然的といえるし、欠点とは言えないのだが。
そんなわけで本作、とにかく魅力的な機械獣(と動物)がじゃんじゃん登場する最高にして異色の動物ゲームだが、動物の元ネタを出し惜しみしなさすぎて続編のメカ案が続くかな?とちょっと心配になるほどだった。ゾウとかコブラとかコウモリとか、「こんなデカイ機械獣いたらカッコよくて怖いぜ!」と思う現実の有名な陸上動物、もうけっこう出尽くしちゃってる感じもして(あとはライオンとかゴリラとかラクダとか?)。まぁでも虫系とか魚系とか、ほぼ全く登場してない動物グループも多いのでまだ大丈夫かな。虫系だとハチやクモ、海だとサメやシャチの機械獣とかいたら怖そうだな~とか空想。タコとかもいいね。
【2】こんな圧倒的にカッコイイ主人公いる? アーロイさんの魅力
『Horizon』シリーズの(機械獣に匹敵する)最大の魅力、それはなんといっても主人公のアーロイさんであると断言したい。ここまで圧倒的にカッコイイ女性主人公を作り上げたクリエイター陣にまず最大限の賛辞を送りたいです。前作でもむろんカッコよかったが、本作では(ビジュアル的な豪華さが増したのもあって)カッコよさのギアが一段上がっていた。
マイノリティとしての出自を持ちながら、どんな恐ろしい敵にも槍と弓矢(他)で立ち向かい、絶望的な状況でも決して諦めず、弱者への思いやりを持ち続け、常にちょっとしたユーモアも忘れない。こうした性格はある意味オープンワールドゲーム主人公の王道ともいえるけど、色々プレイした中でもやっぱシンプルに憧れるカッコよさという面ではアーロイさんがズバ抜けていると思う。それでいてなんかちょっと身近でもあるというか、近所の気さくなお姉さんくらいの親しみやすさもあるのがまた良い。
ていうか、ここまでカッコいい女性ヒーローって、映画とか含めた全エンタメでもいまだに希少なのでは?と映画ファンとしても思わざるをえない…。 特に本作のようなAAAタイトルなど、世界中の人に向けた大作エンタメの主人公としては稀有なのでは。マーベル映画とかも近年は女性ヒーローにスポットライト当たり始めたし(キャプテンマーベルとかブラックウィドウとか)、最近アクション系映画でも女性主人公モノどんどん増えてるけど(『アトミック・ブロンド』とか『ガンパウダー・ミルクシェイク』とか)、やはりアーロイさんのカッコよさ、キャラクター造形の素晴らしさって頭ひとつ抜けてるようにも思う。(ゲームという、インタラクティブかつキャラを描写するための時間が極めて豊富なコンテンツとしての有利さはもちろんあるとはいえ。)
ビジュアル面でも趣向が凝らされまくっていて、パワフルな美しさを備えた一方で、荒れ果てた世界を孤独に冒険しているというリアリティもちゃんと感じさせる外見になっているバランス感も見事。肌のシミとか日焼けとか産毛の感じがちゃんと再現されててスゲー…というコメントも見た。最新世代としての画質進化の活かしっぷりの方向性がスゴイ!
ゲームの女性キャラ表象が、体型の偏りや露出の多さなど、ジェンダー的な観点から問題になっているのを近年よく見かけるんだけど、本作はそこも非常に考え抜かれていると思う。アーロイさんは体格や顎の感じもガッシリしていて、服装も(露出の程度は服によって差があるけど)あくまで大自然を生き抜くための必然性を感じさせるキマりっぷり。テンプレ的な女性描写の枠組みにハマらない、むしろ積極的に壊していく形で、新時代の「カッコいい女性ヒーロー」をビジュアル的な説得力をもって示した絶好の例として、アーロイさんは末長く語り継がれるんじゃないだろうか。
物語的にも、アーロイさんに良い意味で女性性(母性とか)が全く担わされてない感じも清々しいなと思う。(アサクリオデッセイのカサンドラさんとかも強くてカッコよくて好きだが、あれは男女選択式なので事情がちょっと違うのと、未プレイだけどDLCが性規範的すぎるとかで批判されたりしてたしね…。)同じく最近の革新的なゲーム『ラスト・オブ・アス part2』のエリーとアビーの造形も凄まじいなと驚愕したばかりなんだけど、こうした女性主人公描写の先進性って、エンタメ界で今いちばん進んでいるのは実はゲームなんじゃね…?と思えてしまう。
『Horizon Forbidden West』、キャラクター造形の素晴らしさはやはり主人公のアーロイさんが突出しているものの、この世界に生きる人々の描写も同じく見どころが多い。アーロイさんを創り上げた精神性とも完全に通じるのだろうが、性別や性志向や人種や身体的/知的障害のような幅広いマイノリティ描写を、世界で生きる人々の描写の中にさらっと、かつ膨大に取り入れている姿勢も見事だなと感銘を受けた。そうした多様さへの志向は本作に限らず、特に海外の先鋭的なエンタメ全般で徐々に取り入れられている要素だけど、やはり本作のような堂々たる大作エンタメ・巨大タイトルでそれをやる社会的インパクトは絶大だと思う。
こういうのを「わざとらしい配慮」とかいう人もいるのかもしれないが(ラスアス2発売後もウンザリするほど見た…)、むしろこれだけ激変した世界で、住民が白人ばっかりとか男ばっかりとか"健常者"ばっかりとか異性愛者ばっかりとかだったら逆にリアリティなくて興醒めすると思う。一度文明が完全に崩壊した世界(=社会規範が一掃された)という設定を、多彩なマイノリティ描写をブーストする装置として巧く活かしているとも言える。
印象に残ったキャラクターは沢山いて、今回は「仲間」という概念があるのでサブキャラの魅力も深く語られるのだが、なかでも隻腕の戦士コターロが特に好き…。優秀な戦士なのだが、「力こそパワー」であるバトル部族・テナークスの社会で、腕を失ったという身体的ハンデを負い目に感じてもいる。でもだからこそ(同じくマイノリティとしての属性や出自をもちながら)ほとばしる勇気ととんでもない発想力で文字通り「壁」をぶっ壊していくアーロイさんの存在が、どれほど眩しく思えたことか…と勝手にグッときてしまった。義手をめぐるエピソードも本当に心打たれたし、身体的ハンディキャップをもつ人の表現としても力強いものだったと思う。日本語版の声も煉獄さん(日野聡)でめちゃカッコイイぞ!
仲間のキャラだとアルヴァも良い。登場時はなんか頼りない雰囲気で「アーロイ夢小説の主人公みたいだな」とか失礼なことを思ってしまったが(ごめん)、話が進むにつれて、その圧倒的な知的好奇心ゆえの芯の強さが垣間見えるようになって、素敵なキャラ造形だなあと(コターロに「ロングレッグみたいな突き進み方」とか評されてて笑った)。顔立ちもあどけない可愛らしさがあるんだけど、なんか絶妙にフィクションで見かけないような、リアリティある顔つきなのが良い。
『Horizon Forbidden West』の魅力的なサブキャラ陣の中でも、マイノリティ表現で特に強く印象に残ったのは「爆発シスターズ」の妹・ブーマー。彼女は現代でいう自閉症(autism)に相当する人で、周囲の人間や感情に注意を払うことが苦手なのだが、自分が愛する爆発物の探求にひたすら邁進している。そんな性質ゆえに爆発トラブルもしょっちゅうで、姉さんには心配されるし、まわりからは文字通り「煙たがられて」いるのだが、そういう彼女だからこそ突き破れる逆境だってあるよね…という、とてもまっとうな視点を感じるエピソードがあって心打たれた。片腕を失ったコターロと同じく、障害は欠落ではなく、その人自身であることが大切なんだ、という真摯なメッセージ性が共通していて素晴らしいなと思う。
アーロイさん、カッコよすぎて(老若男女問わず)色んな人にさまざまなデカめ感情を向けられるのだが、やはり根っからの「流れ者」であるため、そんな感情もクールに受け流して旅立たざるをえず、そのせいでまたみんなの感情がデカくなっていくスパイラルがなんかもう面白くなってくる。今回のラスボスはその究極版というか、巨大感情ファイナル形態という感じで、強すぎるし笑うしかなかった。と同時に「アーロイさんの影に別の誰かを見出しているラスボス」vs「アーロイさんの人生を実際に"生きた"プレイヤー」みたいな構図にもなっていてかなり熱かった。
ーーー以下、ラスボスに関するネタバレ注意ーーー
『Horizon Forbidden West』のラストバトル、「アーロイをエリザベトの代わりとして見ているラスボス」vs「実際にアーロイさんと一緒に旅をしてきたプレイヤー」の戦いでもあるんだなと考えるとかなり熱い。
ラスボス(一応名前は書かない)はアーロイさんの「コピー元」であるエリザベトに深い愛情を抱いていて、彼女を失ったことに取り返しのつかない失意を抱いたまま1000年も過ごしてしまったので、ようやく会えたアーロイが気に入ってたまらず、アーロイの大冒険もフォーカスを通じて見てテンションMAXになって、「一緒に行きましょうアーロイ!コピーとはいえあなた実質リズ(エリザベト)みたいなもんでしょ!行こ行こ宇宙行こ!ゼロからやりなおそ!リズなら絶対そうするって!ウォオオオーー(大意)」と巨大感情爆発ファイナル形態となってプレイヤーに襲いかかる。その巨大感情(物理)がめちゃくちゃ強いので「これは詰んだか?」と、いったん退却して再挑戦するべきかなと諦めかけた…。だが、しかし。
1作目と2作目を計100時間くらい(かは知らんが)プレイしてきた私ことプレイヤーは、アーロイさんがエリザベトとは異なる存在であり、彼女オリジナルの人生を生き、彼女オリジナルの冒険を繰り広げてきたことを知っている。なんたって自分で(苦労して試行錯誤して)「プレイ」してきたから。なのでどんなにラスボスが強かろうと、エリザベトへの想いが強かろうと、お前はいわばアーロイさんの冒険をYouTube動画の配信実況でしか見ていないニワカであり、プレイしてきたのはこっちなんじゃボケ〜〜!!という熱い闘志によって立ち向かった。
そして「エリザベトにこんなことできるかァ〜!?」とばかり相手の武器を切断し、「アーロイさんはアーロイさんなんじゃボケ〜〜!!」とばかり全力砲撃によって辛くも勝利をおさめたのだった。まぁバトル中もバトル後もアーロイさん本人はいたっていつも通りクールな立ち振る舞いだったわけだが…。(それはそれとしてラスボスの巨大感情は百合的にはすごく甘美だと思いました。なんだかんだ生き延びてほしい気持ちもちょっとあったので悲しさもある〜。まぁでも美味しすぎるポジションだったので…ヨシ!)
さらに言えば、ラスボスが「絵画」を愛し、美しいそれ(≒エリザベト/アーロイ)を解釈して保存して「所有」しようとする姿勢と、そんなことは不可能と知っているアーロイさん&プレイヤーとの最終決戦、という構造は意図的なんだろうなと。もっと言ってしまえば本作のラスボス戦って、「絵画vsゲーム」の一騎討ちにもなっていると思う。
本作を作っているスタジオ・ゲリラはオランダのゲーム会社なこともあり、自国の伝統的な文化である「絵画」に対するリスペクトをゲーム内で存分に発揮している。実際、17世紀オランダ絵画をじっくり味わえる場面があったりもする。
『Horizon Forbidden West』、作中のある重要キャラが美術通で、レンブラントやフェルメールなど(高画質で再現された)オランダ絵画の名作をゲーム内でじっくり味わえてスゴイのだが、作品を所蔵するアムステルダム国立美術館とがっつり公式コラボしていた。日本語の動画も。https://t.co/LVrpmlz4Lp
— ぬまがさワタリ@『ゆかいないきもの超図鑑』3/8発売 (@numagasa) 2022年4月16日
しかし本当に素晴らしいのは、そうした「過去の栄光」として自国の文化をひたすら崇め讃えるだけでなく、いま自分たちが作っている最先端の"文化"である「ゲーム」によって、乗り越えようとする意志が感じられること。圧倒的な歴史と権威をもつ「絵画」に、芸術としてゲームが"勝ち"うる本質的な点があるとすれば、それは「プレイできる」ことなんだ…!というロジックも見事だし、なんて志が高いんだろうと感動してしまった。
ーーーネタバレおわりーーー
そんな感じで『Horizon Forbidden West』の魅力でした。今年2022年はヤバい大作ゲームが目白押しだけど、今年の私的ベストゲームは本作で確定だなという感じ。GOTYとかはエルデンリングあたりに行くんだろうな〜とは思うが、どう考えても本作が(ラスアス2とかと並んで)PS4終盤〜PS5初期世代を代表する名作ゲームとして歴史に名を残すのは確実だと思うし、難易度調整もあってオープンワールド入門にもぴったりなので、未プレイ勢はぜひ1作目(内容を考えれば激安よ)から続けて遊んでみてほしい。次回作…はさすがに気が早いけど、追加コンテンツはそろそろ発表くる予感するんだよね…楽しみ!!
一作目はこちら。私も久々に遊び返そうかな。