沼の見える街

ぬまがさワタリのブログです。すてきな生きもの&映画とかカルチャー。

「アフター6ジャンクション」出演たのしかったよレポ&補足

2/21(火)の「アフター6ジャンクション」に「動物が主人公の海外アニメ映画に(ほぼ)ハズレ無し」というテーマで出演しました。ちょっと緊張したけどすごい楽しかった!!聞いてくださった方&実況とかしてくださったリスナーさん、ありがとうございました。帰り道で読んで「うれしー」と思いました。

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ラジオで50分も喋らせてもらうのも初めての経験だったし、本番ならではの面白かったポイントの感想や、放送のなかで語りきれなかったこと(もともと語ろうとしてた内容が2万字とかあったからな)も含めて、メモも兼ねて箇条書き的に書いておきます。アトロクのヘビーリスナーとして初出演の思い出を書き残しておきたいんだ!!

ちなみに特集のアーカイブはSpotifyなどで聴けるので、この記事と合わせてどうぞ(私自身はなんか気が引けてまだ聴いてない)

https://open.spotify.com/episode/3P7IulQjNCdFMtvkw40Z3i?si=734cc3dd46b44ab9

 

【当日のようす】

初出演で遅刻したくないので早めにTBSラジオのある赤坂に着く。(映画の前にチャン・イーモウの『崖上のスパイ』観てこようかなとか思ってたけど微妙にギリギリになりそうでやめた。意識を高くもったのだ)

赤坂は土地勘が全然ないのだが、でっかく赤坂って書いてあるし、まごうことなき赤坂だろう。右から読んでも左から読んでも…

そしてTBSラジオに潜入!あやしいものでないことを警備員やフロアの人に説明し、入館パスをもらう。さっそく収録現場に向かいたいところだが、その前にアトロクリスナーなら知らぬものはいないTBSラジオ観光名所に寄っていく。それは……セブンイレブンであった。

この少し上の階にあるセブンイレブンが最近、なぜかフロアの反対の位置に移転&リニューアルをしたと宇多丸さんやパートナーさんがラジオで語っていたので、それはぜひ立ち寄らねば…と思っていたのだ。行ってみたところ、まごうことなき普通のセブンイレブンであったが(当然)、リスナーとしては「これが噂のセブンイレブンか…」とちょっと楽しかった。あとなんかみんないそがしそうだったので(当然)じゃまにならないようさっさと出ていった。おみやげになにか買えばよかった。

 

その後はおとなしくアトロク収録のスタジオに行き、構成作家さんの古川さんと打ち合わせをする。前日に(絶対に50分ではムリな話したいことを詰め込んだ)2万字の長文を送りつけられて再構成が大変だったと思うが、苦労をおくびにも出さず冷静に優しく、初出演の私を優しくガイドしてくださった。

待ち時間に、火曜パートナーの宇垣総裁こと宇垣美里さんが持ってきてくれたというチョコレートを、ありがたくもおすそわけしていただく。美しいだけでなく、めちゃくちゃ美味しかった……。チョコレート沼、深入りするとヤバそうだな。

チョコの美味しさに元気をもらいながら、20時の放送に向けて精神を統一するのだった…。

 

【放送開始!】

・いきなりだが「エンタメにおける動物描写は今後、今で言うジェンダーや人種のような、人間のマイノリティ描写に匹敵する重要性を得ていくことになるだろう」という核心から入らせてもらった。初出演だし本当はもうちょっと色々と前置きをするつもりだったが(ジェンダーの問題を例に、宇多丸さんが年間ベストにあげていた『透明人間』『プロミシング・ヤング・ウーマン』や、宇垣さんが推薦コメントを寄せていた『セイント・フランシス』に触れてみたりとか)、尺の都合や、構成作家・古川さんのご提案もあったし、アトロクリスナーの意識の高さを信用した判断ということで…。最初からフルスロットルなので少し緊張したが、特集全体で伝えたかったことにダイレクトに入れてよかったと思う。

・このくだりで「動物倫理」についても少し触れたが、聞き慣れない概念かもしれないので、興味ある人は田上 孝一『はじめての動物倫理学』など読みやすい新書も出てるので読んでほしい。

・自己紹介パートは(送った文章ではついダラダラ長々語ってしまったが)放送ではごくあっさりすませられて正直少しホッとした。できる限り自分以外の生命とか自分以外の作った作品とかについてオタク語りしていたいものだ……

・「動物が主役の海外アニメ映画」は体感95%くらいの当たり率!という今日の本題に入る。宇多丸さんに「残り5%はなんなんだ笑」というツッコミをいただく。だよね。まぁいうて色々な動物アニメがあるから言い訳の余地を残しておきたかったのだ…(せっかくなので『SING2』に言及しようと思ったが無用な火種を増やしたくないのでやめといた)

・歴代のディズニー動物アニメを列挙してた時、『101匹わんちゃん』に宇垣総裁が「大好き!」とビビッドに反応してくださって、私もちょうど見返したばかりで、なんだこのスゲえアニメは…と思ったので、時が許せばいくらでも話し込みたかった。

・ちなみに放送後に光栄なことに、宇垣総裁のお犬様「テンプラ」のお写真も見せていただいた…めちゃかわであった。

・あとディズニーのくだりで『ディズニーと動物』を取り出したら宇垣総裁に突っ込まれたので少し嬉しかった。生放送って楽しいね(?)

・ここで宇多丸さんたちから「日本の動物アニメ映画ってどうなんでしょう?」という質問が出る。日本アニメ映画でも『平成狸合戦ぽんぽこ』や『おおかみこどもの雨と雪』などまぁまぁ思いつくわけだが、たしかに欧米や海外に比べるとメジャーどころではあまり数が思いつかないんだよね…。その場の思いつきだったが、「日本ではポケモンが動物アニメの代替として機能してるかも」という話を軽くしてみたり。「ポケモンと動物」は過去にweb記事も書いていたので、全然じっくり話せるテーマではあったが。↓

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【バッドガイズ】

・放送ではタイトルコールとあらすじを言わせてもらえることになり、「いつも聞いてるやつだ!」とちょっと張り切った。にせんにじゅうね…2022年公開の『バッドガイズ』です!(噛んじゃった)

・『バッドガイズ』の偏見を持たれてる動物、サメの話。『ジョーズ』の功罪の話に当然なるわけだが、宇多丸さんも言うように、スピルバーグが「『ジョーズ』なんか作るんじゃなかった」とまで後悔してるというのは知らなかった。作らなかったら映画の歴史変わっちゃうだろ!(だがスピルバーグの後悔の深さはよく現れている)

・サメにしてみれば人間のほうがよっぽどモンスター…という話で、「こんなことが可能な生物は、私の知る限り……人間だけです」という『ガメラ 大怪獣空中決戦』の台詞を挟む宇多丸さん。まさしく『ガメラ 大怪獣空中決戦』はものすごいエキサイティングな動物映画としての側面もあるので、脱線して話し込みそうになったけど我慢する(放送後に少しお話できた。レギオン襲来もアトロク映画祭でやるのかな〜、行きたいな)

・「タランチュラは毒が全然強くないクモ」という話、皆さんのリアクションを見る限りでは、やっぱりあまり知られてないみたいね(生物ファンの間では有名なネタではあるのだが)。この偏見に関しては、宇多丸さんの言うように大概ボンドが悪いよな。ついでに言えばピラニアもボンドだし…

・CMタイム、宇垣さんに「『バッドガイズ』のピラニアの"臭い"ネタ、おならネタってなんか元ネタあるんですか?」と聞かれる。言われてみれば…と思うが、特に思い当たる節がなかったので「死臭とかそういうイメージかな?」とかぼんやりしたことしか返せず。オナラ系は子どもへのウケがいいから、とかなんだろうか…

・唯一、バッドガイズ動物のなかで本当に人を沢山殺している動物である、ヘビの話。世間の偏見に従うように「悪」にしがみつくしかない、ストリートの若者の実情に重ね合わせる宇多丸さんの話はけっこうドスンと響いた(リアルでもありそうな話だなと思って)。

・ちなみにそんな『バッドガイズ』に近いテーマで、人間からの怖がられるヘビを主人公にして、オーストラリアの動物園から脱走する動物たちを描くNetflixアニメ『バック・トゥ・ザ・アウトバック めざせ!母なる大地』も面白いので、動物好きはオススメ。

・ところで『バッドガイズ』は実はWWF(世界自然保護基金)ともコラボしてて、バッドガイズのメンバー動物への支援キャンペーンなども実施。寄付するとぬいぐるみがもらえたりしていた。

・あと『13th -憲法修正第13条-』の話とかもできたらよかったのだが、さすがに時間がなかったので省略やむなし。まぁこの辺はブログ記事にも書いたので読んでみてください。

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【ハッピーフィート】

・ペンギンの子育ての科学的リアリズムと人間側の規範のお話。ペンギンの子育ての大変さは、過去に「コウテイペンギン子育てスゴロク」として図解しましたね(『図解なんかへんな生きもの』参照)。
・放送で話せなかったペンギンの生態も交えて、このへん少し詳しく説明すると、コウテイペンギンの父親は、おなかの卵を抱くスペースで、氷の上にずっと立ち続ける。メスがエサを取りに行って帰ってくるまで、オスは3〜4か月絶食する。(ちなみにオスは「ペンギンミルク」という乳状の分泌物をヒナに与えて飢えを凌ぐ。)そしてアニメのように、体を寄せ合ってブリザードに耐える。南極の気温はマイナス60度にもなるので、少しでも失敗すれば卵は凍りついてしまう。だからこそ、マンブルの父親は、卵をうっかり落としてしまった時にあれほど狼狽したというわけ。

・そしてマンブルが誕生。父が卵を落としたのが原因かはわからないが、ある種のハンディキャップを背負った存在として生まれる。ペンギンはあしのうらに寒さをしのぐための羽毛が生えているのだが、マンブルはこの羽毛がなしor不足して生まれたということかな?と。
・その結果、マンブルは氷の上にちゃんと立つことができない。そのかわり、足をしょっちゅう動かす「ハッピーフィート」であり、ダンスの才能をもつ。ただし「歌」を何より重視するコミュニティでは、ダンスの才能はなんの役にも立たないどころか、厄介者扱い。しかしマンブルが冒険を通じて、おなじく南極で育つアデリーペンギンのコミュニティなど、他の価値観にも触れていくなかで、その「他者との違い」こそが真に大切なものだ…と伝わってくる、とても普遍的な物語になっている。

・ちなみに映画でマンブルが属している「ペンギンの学校」も、近い形態が本当に自然界にある。「クレイシ」(フランス語で保育園)と呼ばれるヒナの集団で、自立への足がかりになる。

・『ハッピーフィート』の「モンスター映画」としての面白さは放送で語れてよかった。人間側の動物への思い込みを覆す意味もあるかも、という宇多丸さんの意見にも同意。子育ての過程でヒナたちがトウゾクカモメにさらわれるのはペンギン日常あるある(過酷)。そしてヒョウアザラシも、海で魚をとりにくるペンギンたちを待ち構えている。体の大きなミナミゾウアザラシの方はペンギンを食べることはないが、でかくて威圧的でペンギン目線では怖いことだろう。

・そして『ハッピーフィート』の最重要ポイントだと思っている、水族館でのシーンを通じた、人間文明や人間社会への批判的な眼差しについて。動物園や水族館は縁の深い場所でお世話にもなっているので、やや語るのに勇気がいるポイントでもあったが、やはりジョージ・ミラー監督の誠意を受け止める上でも外せないところだろうと。

・『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』の日本プロモーションの話も(キャメロンかわいそう! ) 。たしかに『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』は「捕鯨」を筆頭に、海洋動物への搾取に対する批判的なメッセージ性も強い。ただ念のためフォローすると、キャメロンは日本の捕鯨を批判してるというよりは、中川真知子さんという方の記事によると、捕鯨の描写的には自分の属するアメリカの捕鯨文化への自己批判という側面も大きいようであるのだが。

・そして日本でも変化は起きていて、たとえば2020年に私もコラボさせてもらった、品川区の公立水族館の「しながわ水族館」では、リニューアルによってイルカショーの中止が決定。今は日本も過渡期にあって、段階的ではあっても、現実世界でもこうした動きが今後も続いていく可能性が高いと思う。

・そこにあわせて、『ファインディング・ニモ』を見てカクレクマノミを飼おうとする人間が激増したことについての、宇多丸さんの呆れコメント。まったくもってひどい話だよね…と思うし、フィクションの限界もちょっと感じてしまう話。

・というわけで厳しい視線もある『ハッピーフィート』だが、同時に描いている希望の話もするのだった。そのための鍵になったのが、マンブルの「ダンス」であり、最初は彼を異端にしていた才能だったというのも、本作の素晴らしいところだと思う。メロディや言葉は種の壁を超えることはないけど、「リズム」は生命にとって普遍的なものなんじゃないか、というミラー監督の音楽思想?も感じた。この辺は語れなかったが、リズムといえば…だし、宇多丸さんの意見も聞いてみたかった!

・これも放送には入らなかったが、続編となる『ハッピー フィート2 踊るペンギンレスキュー隊』(2012)についても語っておきたい。2もとても面白いのでナメずに観てね。こちらは「ディザスタームービー」としての面白さを通して、気候変動のような、さらにスケールの大きい地球の問題への姿勢を描こうとしていると思う。

・地球温暖化の影響もあってか、氷山が溶け出して動き、ペンギンたちの居住地を閉じ込めて孤立させてしまう。この絵面が「これはもうダメじゃね?」と思うくらい絶望的な光景なのだが、マンブルとその子ども・エリックたちが冒険しながら窮地を救っていく。
・まさかのオキアミも登場し、サブストーリーの主役に。オキアミといえば南極の食物連鎖ピラミッドの最下層で、大量に食べられながら他の動物達を支える動物。そのうちの1匹が「自分の人生はこれでいいのか」と悩み始め、「食物連鎖のピラミッド」を駆け上がろうとするという楽しいストーリー。(相棒のオキアミとのBL的・ゲイカップル的な関係性も良い。)

・そして『ハッピー フィート2』、クライマックスのある有名な曲を、それまでに登場した動物たちが合唱する場面が、アニメのミュージカルシーンの中でも屈指の感動をもたらしてくれた。
・マンブルたちの心優しさが、絶体絶命の危機のなかで救いとして花開く描写としても素晴らしいし、さっきの「自分のようなちっぽけな存在が何になる」と思っているオキアミが、曲の最後に果たすある役割も感動的。これは、たとえば気候変動のような大きな危機に晒されている私たちの世代が、「1人1人のアクションが大事」というのは単なる綺麗事ではないんだよ、と背中を押す寓話のようにもなっている。動物オンリーの話でそんな高度なことをやるとは、やっぱジョージ・ミラーはすごいわ。

 

【ウルフウォーカー】

・放送中に本作にたどりつかないIFもなくはなかったので、無事に収まって安心した。あらすじ読みつつ、『ウルフウォーカー』=『RRR』説を提唱する。面白がってもらえたので提唱してよかった…。

・「ウルフビジョン」の説明。オオカミに変身したロビンが、ウルフビジョンを駆使して森を駆け抜ける場面ね。ここはまず3Dモデルで森のVR空間を作り、そこに精緻かつ膨大な数の手描き2Dアニメーションを組み合わせていくという、「2.5次元」スタイルと呼ぶべき革新的な手法を取っているとのこと。
ロビンが家でオオカミとして目を覚まし、初めてウルフビジョンを体験する場面だけで、実に1500枚もの印刷物が必要だったという。

放送には入らなかったけど、まぁ過去にブログでも語ったことなので、興味あれば読んでみて。

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・犬の視点を世界で見るという点では、『マロナの幻想的な物語り』(2020年日本公開)というアニメ映画もとてもオススメ。また違った意味で驚異的な「犬から見た世界」の描写など、ヨーロッパから凄い動物アニメが続出していることも興味深い。犬の声はのんさんだし。

『荷を引く獣たち』という本は放送でぜひ紹介したかったが、ちょっと余裕がなかった。でもその年に読んだベスト本に選んだ1冊なのでぜひ読んでほしい(何回もTwitterとかで言及してるけどね)。ただ放送で言及してないにもかかわらず、聞きながらTwitterでこの本に触れてる人がいて、アトロクリスナーの教養を感じるなど。

・ご自身が障害者であり、また動物を愛するアーティストであるスナウラ・テイラーさんが書いたこの本では、「動物への抑圧」と「障害者の抑圧」が実は複雑に絡み合って繋がっていると語る。そこから、健常者中心主義と人間中心主義がつながっているのなら、障害者と動物の解放への道のりもまた根本で繋がっているのでは…と論じていく。
(『ゆかいないきもの超図鑑』の主人公のひとりを車椅子ユーザーの動物好きにしたのは、この本の影響もある。)

・その観点から『ウルフウォーカー』を見れば、オオカミという動物の表現に、どのような意味が託されているのかを、様々な視点から見ることができる。先述した「女性であること」の他にも、たとえばトム・ムーア監督は「オオカミたちはrefugees(直訳:難民)である」とも語っている。「故郷を追われるマイノリティ」のメタファーとしてオオカミを見る解釈も、難民の境遇への理解や共感がかつてないほど求められている今、いっそう重要だなと。

・このあたりもぜひ話したかったが、さすがに50分では無理でしたね。こちらの対談記事でも詳しく語ったから読んでもらえれば。

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【(放送には入らなかった)ピクサー/ディズニーの動物アニメ短編】

・時間が余れば、あっさりめに楽しめる「動物アニメ映画」を箸休め的に2本紹介したいと思っていた(しかし時間は一切余らなかったのでここで紹介しておく)。

・まず、ピクサーの短編アニメ『ひな鳥の冒険』。2016年『ファインディング・ドリー』の併映。

youtu.be・波打ち際を走り回るシギのひなが、世界の荒波に揉まれながら(まさに)、はじめてエサをとることに成功する…というだけの短い話だが、すごく良いアニメ。
この鳥は正確には「ミユビシギ」というシギがモデルと思われる。本作のアラン・バリラロ監督が、カリフォルニアにあるピクサーの近くの浜辺で見たミユビシギにインスピレーションを得て『ひな鳥の冒険』を作った。

・ただ実はミユビシギは日本でも普通に見られるシギで、主に春や秋に海を超えて渡りをして、日本とアメリカをつないでくれる鳥でもある。今の季節も首都圏の浜辺などで観察される。波から逃げるようにささーっと移動するかわいらしい姿がネットでもよくバズっている。

・私も鳥が大好きで、毎日のように水辺を散歩して鳥の姿を探し回っているので、ここまで水鳥にフィーチャーした、しかも超ハイクオリティな鳥アニメが出てきたのは本当に嬉しかった。
・そのキャラクターも、ディフォルメを極力省いた造形に注目。ピクサーもディズニーも動物主人公の作品は沢山あるが、その中でも最もリアル寄りの造形ではないかと。もちろん行動などは、動物学的なリアリティとアニメ的なわかりやすさをうまくミックスしているんだけど、現実世界の動物のデザインの素晴らしさを実感させる。
・鳥好きには、Netflixで見られるアードマンの短編『ことりのロビン』もオススメ。

 

・もう一本、あっさり見られる最新の動物アニメとして『ツリーから離れて』(2021)をあげたい。こちらはディズニーで、『ミラベルと魔法だらけの家』の同時上映だった。『ツリーから離れて』は、アライグマの親子が主人公の2Dアニメだが、『ひな鳥の冒険』と対になるようなテーマとなっている。

・『ひな鳥の冒険』が子どもの好奇心と失敗と挑戦を「子ども目線」から描く作品とすれば、『ツリーから離れて』はそれを親の目線から描いた。かつて恐ろしい目にあったからこそ、子どもの自由を縛ってしまう…という、三世代にわたる親子の抑圧と解放というテーマを、一切言葉を発しないアライグマの行動を通じて描く、かなり地味だが挑戦的な短編。なにげに『ミラベルと魔法だらけの家』のテーマとも通じる話になっている。

・『ひな鳥の冒険』『ツリーから離れて』は共通点の多い作品だが、動物の行動やデザインをかなり現実に近づけておきながら、同時にちゃんとアニメーションとしても情感豊かで、人間が感情移入しやすいものにするという、最新の動物アニメのトレンドを切り開いているといえる。今後も注目していきたい。

 

【そして放送後…】

・放送後も少し残って、数十分くらい宇多丸さん&宇垣さん&古川さんとお話させてもらった…(ご多忙&お疲れとは知りつつ、ついテンション上がって楽しくなって話し込んじゃったよ)。そういえばこれも動物映画だよな〜とか、こんな動物テーマのフィクションで広げるのが可能かもねとか、『長ぐつをはいたネコ』新作すごそう、とか宮崎駿の新作はどういうことなんだよ(ポスターのあれは鳥なの?)とか、盛り上がらせてもらう。「馬」は数的に絶対できるけど逆に広すぎるとか、「羊」はどうかなとか、ショーンから転じて『ウォレスとグルミット ペンギンに気をつけろ』は世界一面白い30分だとか色々…。放送でも宇多丸さんが言ってたけど「鳥」はたしかに絶妙で面白いテーマだなと思う(ヒッチコックも『鳥』だけでなく『サイコ』とか、鳥に強めのオブセッションがあったりするし)。最近も『異端の鳥』なんかもあったし。鳥に限らず「動物とフィクション」は正直いくらでも話せるテーマなので、またなんらかの機会があればぜひ呼んでもらいたい! 

・そして楽しかった思い出を抱えながら帰路についたのだが…

楽しさにぼんやりしすぎて地下鉄を乗り過ごしてしまい、東京駅を目指してけっこう歩いた。さむかった。だが、これもまた良い思い出となるだろう……