沼の見える街

ぬまがさワタリのブログです。すてきな生きもの&映画とかカルチャー。

「蒼樹うめ展」に行った。

  • 上野の森美術館でやってる『蒼樹うめ展』に行ってきた。土日は300分待ちとか大変なことになっていたようだけど、平日の午後ということもあり、今日は待ち時間ほぼゼロ。前半の「ひだまりスケッチ」ゾーンは、展示の空間が狭くて動きづらかったけど、後半のまどマギゾーンはスペースが広くとってあって、ゆったり見られた。
  • 「ひだまり」ゾーン、イラスト原画やネーム段階の漫画など、なかなか充実した展示で、ゆのっちの絵描き歌とか、先生が新規イラストを描く様子を映像で眺められるエリアもあった。ファンはもちろん未見の人も楽しめると思う。「ひだまり荘」やうめ先生の仕事場が再現されていたり、小規模展示ながら工夫も感じられる。(先生へのメッセージコーナーもあったので、とりあえず美樹さやかへの愛を表明しておいた。)
  • 先にまどマギゾーンを見ちゃおうと思って下の階に行ったら、突如拍手の音がワーーッと聞こえて、まわりの人がドドーーッと駆け出したので、なんだなんだと思ってついていったら、うめ先生が「ライブドローイング」で絵を描き始めたのだった。1日に1キャラくらい描いていって、開催期間の2週間のあいだに大きな集合絵を完成させるという企画みたい。すでに、まどかとさやかちゃん(めっちゃかわいい)が描かれていた。今日うめ先生が描いていたのは多分ゆのちゃん。どんな絵ができるのか楽しみですね、うめ先生は無茶振りで大変だけど…。あと誰もが言うことでしょうが、うめ先生は「ちっちゃくて可愛いよね!小学生みたい!」でした(失礼)。
  • まどマギゾーンではキャラクターの初期設定画や原画イラストの他にも、メイン5人のデザインに関する、うめ先生のフェティッシュなこだわりなどが詳しく書かれたコーナーもあって、なかなか楽しめた。直筆のキャプションも味があってグッド。音声ガイドは700円と高めだったのでスルーしたけど、うめ先生本人の作品解説や、悠木碧さんや阿澄佳奈さんとの対談(?)も入っていたようで、借りたらよかったかな〜とちょっと後悔。
  • あ、ほむらの抱き枕のでっかいイラストがドーンと飾られてたのはびっくりでしたね…。上野の美術展で抱き枕(の絵)が展示されたのは、さすがに史上初だろうな…。…大丈夫なのかしら、アレは。ちょっと気まずいというか、現代アートじみていたというか、色々と考えさせられてしまった。かなり初期の商品のようで、わりとストレートにいやらしい感じだったし(ストッキングが破れていたりとか)…。
  • いや、もちろん抱き枕イラストだって、れっきとした蒼樹うめ先生の作品であることに変わりはないわけで、変に区別するのはおかしいんだけど。アニメ最終話の、まどかとほむらのヌードの絵とかも展示されてたし。ただやっぱり他の作品に比べると、ひとつだけあまりに性的な意図が露骨すぎるので、仮にも「美術館」という場に展示されてしまうと、ちょっとこう、別の意味が付与されてしまう気がするんだよな…。「少女のイメージを性的に消費する現代文化の一側面に対する批評的な視点」みたいな…。
  • いや、そういう意図だとすれば面白いけど、「蒼樹うめの展覧会」としてはどうなの…?ってことになっちゃうしな…。とはいえ仮にも文化施設として、その視点が全然ないのもまずいと思うので、わりと複雑な問題だと言えるけど、展示担当の人はどういう風に考えてたんだろう。もしかして特に何も考えてなかった…? だとしたら「抱き枕とかの件はそっとしとこうぜ、美術展なんだし…」と思ってしまうけど…。うーーーん。難しいですね。まあこんなことを気にするのは一部の(私のような)めんどくさい人だけ、とわかってはいるんですが。
  • ……とはいえ、まさしくこういった「どうなの?」という一種の「歪み」のようなものが、結果として「蒼樹うめ」という作家を、現代ポップカルチャーにおける非常に特殊な立ち位置に押し上げていることは間違いなくて、そこはとっても興味深いです。
  • 蒼樹うめという漫画家の作家性というのは当然、「ひだまりスケッチ」に代表されるような、可愛い少女のキャラクターや、のんびりと優しい世界観を構築する力であって、「蒼樹うめファン」というのはそうしたキャラや世界の手触りが好きな人のことを指すわけですよね。
  • それでもここまで(上野で美術展が開かれるほどに)大ブレイクしたきっかけは、まさにそのうめ先生の作家性(可愛い少女と優しい世界)を、一回ぶち壊して踏みにじってハードに消費することをコンセプトに据えた作品「まどかマギカ」なのだという事実が、やはりどこか強烈に「歪んで」いるように思えて、不謹慎ながらすごく面白い。
  • もっといえば「まどかマギカ」以降も、(当たり前かもしれないけど)蒼樹うめの作家性そのものは何も変わっておらず、ファンの要請も「まどマギ」以前と根本的には変わらない、ということが、また実に皮肉というか、面白いんですよね…。「消費のされ方」の振れ幅がこんなに大きい漫画家さんって珍しい気がするし。その振れ幅こそに一種の「歪み」が生じていて、その歪みを端的に象徴するのが先述した「抱き枕」でもあり、そう考えると「蒼樹うめ展」にあれを展示する意義は確かにあるとも言えるのか…。いやしかしなぁ…などと面倒臭いことを色々考えたのですが、くたびれたので今日は終わります。なんにせよ蒼樹うめ先生の、今後の活躍に注目せざるをえないですね。いろんな意味ですごく面白いと思いますよ、この作家さん。
  • とりあえず「ひだまりスケッチ」が載ってる「まんがタイムきららキャラット」(10周年だそうです)を帰りに本屋さんで買ってみました。ぱらっと読んでみましたが、可愛かったです。萌え。ではまた。