沼の見える街

ぬまがさワタリのブログです。すてきな生きもの&映画とかカルチャー。

『葛城事件』観た。

  • 今日は用事があってなぜか都庁に行ったんですが、映画の日だったので帰りに新宿バルト9で『葛城事件』を観てきました。評判は耳にしていましたが、予想を超えて恐ろしい映画だった…。いつもの「感想」という形よりさらに適当ですが、ちょっと思いつくままに何か書いてみようと思います。
  • これ、もともとは演劇作品だったんですね。たしかに舞台は相当限定されてますし、アクションとか大きな事件もほとんどなくて会話劇が進行していく感じなんで、ずっと演劇っぽい緊張感がありました。
  • 映画の内容は、めちゃくちゃ高圧的な父親のいる「葛城家」という一家が、だんだん破滅へと転がり落ちていくというような話です。その父親と、従順っぽい母親と、優等生的だけど抑圧されてる兄と、高校を卒業してふらふらしてる引きこもりの弟…。おもにこの4人家族のひたすら息詰まるような、イヤ〜〜な関係性を延々と描いていく映画です。
  • …なんかこうして書いてみると地獄のような映画ですね!どこの馬鹿がこんな陰鬱な映画をわざわざお金を払って観るんだ!?……と言いたいところですが、性格や関係性といった人間の描写がとにかくリアリティに満ちていて、「いやだ〜いやだ〜なんでこんなもん観なきゃいけないんだ〜」と思いながらも、やっぱり観てよかったですね…。万人にオススメできるかというとハッキリ言ってNOですが、面白いかつまらないかで言えば凄まじく面白かったです。
  • もう冒頭で明かされるので言っちゃいますが、例の引きこもりの弟というのがある残虐な事件を起こしてしまい、死刑が確定するんですね。すると刑務所にいる弟の前に変な女のひとがあらわれて、彼女はなんと彼と「結婚」をしてしまうのです。獄中にいる人とそんな勝手に結婚ができるのかって感じですが…。
  • 彼女はちょっと意識が高すぎるのではないかというくらいの強固な死刑制度反対主義者で、死刑というものが人間に対する「絶望」だと考えている。彼女の理想自体はたしかに尊いものですが、「だから死刑囚と(ほとんど勝手に)結婚する」という行為はとても正気の沙汰とは思えません。殺人犯や異常な父親に対する「視点キャラ」としては、ちょっとあまりにもおかしな人なので、かなり戸惑いながら物語につきあっていくことになるんですが、多分そういう狙いなんでしょうな。いわゆる「感情移入」できるキャラをあえて作らないようにしている。
  • あえて主人公をひとり選ぶなら父親なんでしょうが、こいつがまた中華料理屋さんで店員さんに罵詈雑言をぶつけるようなクズ野郎でして…。私が人間として間違いなくいちばん嫌いなタイプの男であり、とても感情移入することは不可能…と言いたいところですが、やはりいくつかの部分では「クズ野郎が」と思いつつもどこか自分と重なる部分を見つけてしまい、なんともいえない気分になりました。
  • 物語の中心にいる弟も、またムカつくんですよコレが…。口ばっかり一丁前で他人を見下して、お母さんやお兄さん(やその家族)に八つ当たりしている。でも、これまた自分の境遇や欠点と似たところに気付いたりもしちゃって、「うぎゃ〜〜…」という気持ちに襲われます。イヤな奴ばっかり出てくるんですが、どうしても「自分」と切り離せない。最悪に絶妙な人間描写です。
  • 個人的にいちばんキツかったのは、営業マンの兄の描写ですね…。昔から「いい子」として振る舞い続けて、仕事も家庭もちゃんとあって(弟に比べれば)順風満帆な人生に見えたんですが、特に何の前触れもなく仕事をクビになってしまう。そしてついには…という、一連の流れが描かれます。仕事をクビになったあと公園でタバコを捨てて、でも根が真面目だからつい拾いにきてしまう…みたいな描写とか、それに続く展開を考え合わせると「完璧」な人間性の表現としか言いようがなくて、「ああああ〜〜〜…」ってなります(こんなんばっかじゃねーか)。
  • その前に、この映画で唯一と言っていい「家族の温かさ」を思わせるシーンがあるんですが、それがむしろ凄く残酷に響いてきて、でも泣けてしまって…っていうのも絶妙なバランスでした。「うな重、いいじゃん!」っていうセリフとか、映画全体の重苦しさから考えると、なんて幸せな言葉だったんだろう…みたいな感慨に浸ってしまいます。まぁ当然のようにそんな幸せはぶっ壊れる(むしろ悪化する)わけですが。それでも、その幸せが「存在しなかった」わけじゃない…というのが、ほんの少しの「救い」なのかもしれませんが…。
  • 順番もめちゃくちゃですし、まだまだ全然何も語っていないに等しいですが、今日はこの辺で…。最近Twitterとの兼ね合いもあって、このブログで「映画感想」をどういう風に続けていくか迷っていたところもあったんですが、読み手をあまり意識しないこれくらい適当な文章なら20分で2千字くらい書けてしまうので、今後しばらくはこんな感じのノリにしちゃおうかな…とうっすら思っているところ。また「レビュー」っぽく書きたくなったら軌道修正するかもしれませんが。Twitterよりもさらに適当でざっくばらんな、練らない感じのノリで書き散らしていこうかな。今日はおしまい。また何か考えたら書きます(描きます、かも)。