沼の見える街

ぬまがさワタリのブログです。すてきな生きもの&映画とかカルチャー。

寄稿のおしらせ:『14歳からの映画ガイド 世界の見え方が変わる100本』

【告知】本日9/26発売の『14歳からの映画ガイド 世界の見え方が変わる100本』(河出書房新社)に私も寄稿しています。各界の映画好きの皆さんが、若い世代にガチでオススメできる「これぞ」という映画を紹介する1冊。私はジョーダン・ピール『NOPE』を選んでみました。

t.co

今さら帯を見て私以外の豪華執筆陣にびっくりしてますが、ぜひお手にとってみてね。販売ページで皆さんの紹介映画の一覧も見れます(いきなり朝井リョウさんと武田綾乃さんがインド映画2連発きめててイイすね)

ちなみに本書用の作品チョイスで、10代向けの動物映画か…どうしよ…アニメとか?と思いかけたが(安易)、編集さんに「10代に向けて…とかそういうのは全く意識しないで大丈夫です」と言われたのでいっそ『NOPE』にしてみた。私も10代の君たちに贈る!!的な暑苦しいノリ好きじゃない10代だった気がするしな…。実際この数年を代表するハリウッド大作だと信じているし(なのにアカデミー賞くんさぁ…)よかったと思う。

なお私の『NOPE』紹介はブログで一度書いた記事をブラッシュアップして再構成したものですが、今のとこ私が書いた映画にまつわる文章の中ではあれが一番お気に入りなので、リアル10代の子に読んでもらえたら嬉しい。イラストも本書用に描き下ろしてみたのでチェックしてね〜

ところで鈴木敏夫と名前が並ぶことももう無いかもしれないので、帯は記念にとっておこうと思う。

この夏はあなたのせいで(?)大変だったんだぞ…!!↓ 

numagasablog.com

「ブルーバックス」おすすめ10冊+α(9/28まで電子版半額セール中)

講談社の科学系新書レーベル「ブルーバックス」が60周年記念ということで、9/28まで大規模な(史上最大らしい)電子版50%セールを開催中なので、個人的に面白かったり広めにオススメできそうなタイトルをまとめておこうと思った。

amzn.to

ブルーバックスは広大な科学ジャンルを扱っているレーベル(昨年時点で出版総数2200点らしい)なので、チョイスが偏ってると思うけど…。数学とかも沢山あるのだが弱いジャンルなのであまり紹介できなかった。あと新しめの本が多いです。

60周年記念の一環なのか、ブルーバックス本が読み放題サービスのkindle unlimitedにもけっこうドカンと入ったので、加入して読み倒してもいいかも。いま3ヶ月無料キャンペーンもやってるそうなので(〜10/15)対象者はぜひ。

ところでオススメ本は「10冊」に絞ってみた…つもりだったが、いま目次を数えたら11冊あった。まぁあわせてオススメできそうなブルーバックスの類書や関連書などもそれぞれ「+α」として選んでどうせ合計30冊くらい紹介するから、なんでもいいか…。

 

 

『能力はどのように遺伝するのか 「生まれつき」と「努力」のあいだ』

まず、今年6月に出たばかりの新しい本から。「能力は遺伝か環境か」「一流になるのは才能か、努力か」といった二者択一の議論がされがちだ。しかし遺伝子と能力の関係はもっと複雑で多次元的であることを「行動遺伝学」の専門家が語る本となっている。

遺伝子はこの数百年で最大の科学的発見だが、ゆえに優生思想のような危険な考え方にも歪んだ形で利用されてきた。一方で、遺伝が個人や社会にとって重要因子であることも無視すべきではなく、遺伝の「制約」と「柔軟性」を踏まえた上での緻密な議論が必要なのである…と本書『能力はどのように遺伝するのか』は説く。

遺伝子の科学的なメカニズム、遺伝子と環境の関係を考えていく中で、社会が目指すべき形も見えてくる。たとえば疾患や能力や人格に「遺伝的な理由」で問題があった場合、遺伝の方を悪とみなして、あの手この手(薬物・教育・ゲノム編集etc…)で「遺伝子を環境に合わせる」ことを良しとしがちだが、本当は環境の方が「遺伝子に合わせる」べきなのでは、といった考え方は、これから重要になっていくかも。

キャッチーなところでは「親ガチャ」という概念が本当に妥当なのか、職業や収入に影響する指標「教育年数PGS」をもとにガチ分析したりもする。「親の社会階層が子どもの社会達成を左右する」という意味では「親ガチャ」は正しいのだが、遺伝の影響はそれとは別に格差をシャッフルする効果もあると。こうした一筋縄ではいかない「遺伝」の実情を語る刺激的な一冊としてオススメ。

遺伝子を扱う本は数限りなくあるが、ブルーバックスの類書としては『遺伝子とは何か?』など。

 

『コーヒーの科学 「おいしさ」はどこで生まれるのか』

おそらく世界で最も有名な嗜好品の一種であり、あまりにも身近であるがゆえに、私たち人間はコーヒーについて実はよく知らない。コーヒーってそもそも何なのか、どういう植物なのか、なんでまたカフェインなんて特殊な化学物質をもっているのか、なんで人類はそれを飲み始めたのか、そしてなぜ美味しいのか…などなど、コーヒーという面白い植物を科学的・化学的観点から解説していく。

その一例だが、「カフェイン」という物質の正体を語る部分も面白い。コーヒーの果実がなる「コーヒーの木」が作るカフェインには、実は他の植物の育生を邪魔する作用があるというのだ。カフェインは落ちた種子から広がっていき、近くの植物が育つのを抑え、自分だけが生長できるようカフェインを活用してるという。コーヒー、お前…イヤなやつだな、とか思いかけるが、そのおかげで美味しいというのなら文句も言えない。

コーヒーに限らず、紅茶などの「茶の木」もだが、そもそも植物がなんでカフェインを作るのかと言えば、「毒だから」という身も蓋もない理由があるわけだ。他の植物の生育を邪魔したり、虫やナメクジといった外敵から身を守る作用があったりと「化学兵器」としての役割が大きいという。そんな植物・動物視点では「毒」以外の何物でもないカフェインが、まさか人間の間で、人類史上に刻まれる超絶大ヒットを記録する愛され化学物質になるとは、コーヒー的にも「何なのお前ら?」って感じだろう…(トウガラシとかも同じなんだろうけど)。

他にもコーヒーゲノムからカフェイン合成関連の遺伝子を抽出した結果、「植物にとってカフェインを作ることが一種の"収斂進化"である可能性」が示されるとか、生きもの勢としてもグッとくる話が多い。それも当然かもしれない。植物もれっきとした「生物」なのだから…。というわけで同じブルーバックスの『植物たちの戦争 病原体との5億年サバイバルレース』もオススメ。

『コーヒーの科学』はたぶん個人的にブルーバックスで最もよくオススメしている本である(私がコーヒー大好きというのもあるだろうが)。コーヒー豆の焙煎のメカニズムとかけっこう化学的にド派手なことが起こっていてびっくりするし、身近なものを徹底的に科学の目で見つめ直すという意味で、「科学入門」としての力がある1冊だと思う。

お酒好きなら『ビールの科学』とかどうでしょう…

 

『睡眠の科学・改訂新版 なぜ眠るのか なぜ目覚めるのか』

『コーヒーの科学』の対義語(?)みたいな本ではあるが、同じくらい高頻度でオススメしている本。いきなりこの「はじめに」からして、生物ファンとしても「そうだよなぁ〜…」と思える。

自然環境の過酷な生存競争を考えたら、完全に無防備になる「睡眠」なんて真っ先に削る種が現れそうなものだが、いわゆる「高等」な脊椎動物は例外なく「眠り」の支配下にある。つまり動物である以上、眠りからは決して逃れることはできない…。

この「なぜ眠らなければならないのか?」という、実は解明が困難な疑問に、覚醒をつかさどる物質「オレキシン」を発見した睡眠の専門家が答える本となっている。

眠りや夢に関する素朴な疑問にも科学的な答えが用意されていて面白い。たとえば「寝溜めはできるのか?」という問い。これは「できない」というのが答えなのだが、そこから「睡眠負債」というキーワードや、アデノシンという睡眠物質の存在に触れつつ、さらに深めて論じていく。

また「なぜ夢の中で夢だと気づけないのか?」という問い。それは人が何かを考える時「いま自分は考えている」と認知する力(メタ認知能力)を司る「前頭前野背外側部」の活動が、睡眠中は著しく低下するので、そもそも夢の中では「思考」ができないから…だという。

さらに言うとその「夢の中で夢だと気づけない」=「前頭前野背外側部」の働きが低下している状態は、一種の精神障害に非常によく似ているらしい。一般的に精神障害は他の肉体的な障害より、「健常者」による追体験や想像が難しいと思っていたが、実は毎晩「体験」しているのかもしれない…と考えると興味深い。「異常」と片付けられるような様々な精神状態が、実はすでに日常的に体験している身近なもの…と考えるきっかけにもなるかなと。

『コーヒーの科学』が身近な「もの」から入る科学入門だとすれば、本書『睡眠の科学』は身近な「行動」から入る科学入門といえると思う。眠る全ての人間にオススメしたい。

類書としては『自律神経の科学』もなかなかガチで読み応えある本です。言葉はよく聞くけど意外と知らない「自律神経」のメカニズムについて丁寧に解説。涙と唾液の(神経的な面から見た)共通点とか面白い。交感神経と副交感神経の電気活動が高まっていると、体の部位や内臓がどういう反応になるかの一覧表とかが載ってる。

 

『進化のからくり 現代のダーウィンたちの物語』

日本のカタツムリ(陸貝)研究の第一人者が、進化生物学の面白さ(と学問としての大変さ)を生き生きと語る本。生物学者の営みがどういうものなのかを改めて伺える本でもあるし、市井の生きものファン(私含む)も励まされる内容。プロの生物学者が書いてるのだが文章力も巧みで読みやすく、一風変わった生物学入門としてもオススメ。

『進化のからくり』では、ある特定の生物についてとことん調べる…という手法は一般的には奇異にも見られるという話も出てきて、本書の著者もバブル時代のリーマンに「カタツムリなんて研究してどうすんの?」とか面と向かって言われたりしたという。しかしカタツムリ=陸貝のように(外から見れば)狭く些細に思える対象を深く掘り下げることで、「生命の進化」という極めて重要な問題の核心が見えてくるのだ。それは科学という営みの根本でもある。

本書の最後にある「進化学者にとって〝ガラパゴス〟は、独自性に伴う排他性と脆弱さのメタファーではない。それは独自でローカルであるとともに、グローバルな価値を持つ存在を意味する。」という象徴的な文章は胸に刻むべきだなと思う。私たちの周りにある沢山の「ガラパゴス」に目を向ければ、広大な世界の秘密を解き明かす鍵になることだろう。

ところで『進化のからくり』にもあったが、進化にまつわる学説って日本でも最近まで冷遇されていて、80年代には高校でも一切扱っておらず、大学でさえまともに教えてなかったと聞くと、海外の宗教保守の進化論否定をあまり笑えない感じになってくる。そもそも「進化」自体が相当に新しい概念というのも「進化あるある誤解」の背景にあるんだろうな…と思ったりした。

ブルーバックスの生物学といえば…な類書として『カラー図解 アメリカ版 新・大学生物学の教科書』シリーズもオススメ。アメリカの名門大学(文理両方)が採用する生物学の教科書『LIFE』から重要分野を抜粋したシリーズ。紙の本で買うのもイイが(ブルーバックスなのにブ厚い)、電子版も便利なので生物勢はもってて損なし。なお全5冊だが電子化してるのは最初の3冊だけみたい。

本シリーズは科学者養成の現場で使われるガチな生物学教科書なのだが、『第1巻 細胞生物学』の「科学の限界」を記した部分とか、私ら一般人も心に刻むべきだと思う。

人文学や社会学を変に軽視する人もいるけど、真摯な科学者は「文系」を侮ったりしない…という話。

ちなみに2巻は分子遺伝学、3巻は生化学・分子生物学。いずれも文理に関係なく現代の超重要分野なので揃えちゃってもいいと思う。

 

『科学者はなぜ神を信じるのか コペルニクスからホーキングまで』

「宗教と科学の摩擦」「科学と人文」という話題が出たので、正面から扱った本書『科学者はなぜ神を信じるのか』も紹介。物理学と宗教となると、いかにも相容れなさそうだが、歴史に名を残す科学者たちにも「神」の存在を信じ、科学観と信仰を矛盾なく両立させる人もいた。神と物理学が交錯する地点を、自身も信仰をもつ物理学者が考察する。

科学的プロセスによって物理法則を理解し、それによってこの宇宙の仕組みを解き明かしていくことは可能でも、では究極的にはその物理法則はなぜ存在するのか、何が生み出したのか…という「未知」は常に存在し、そこには「神」(と呼ぶかはともかく)の余白がある、と本書は語る。

「神なんかいない、非科学的」と言うのは容易いが、「宇宙の奥の奥まで科学で解き明かしたとしても、そのひとつ奥には未知がある」という底知れなさを悟ることはむしろ科学的な態度だろうし、その常に存在する「ひとつ奥の未知」を「神」と呼ぶ…という論理は、信心がなくてもなるほどね、とは思える。

こうした「この世界には(現時点での)人間の叡智では全然わからん未知の領域がある」と認める態度は実はとても「科学的」とも言えるんだよね。「科学で説明できないものを信じてる奴は愚か」と断じる態度も傲慢で、実は非科学的なのかもしれないと自戒を込めて思った。

ところで今アツい「マルチバース」概念も本書に登場。ホーキングが亡くなる前、宇宙のあちこちで泡のように宇宙ができる「永久インフレーション理論」という、マルチバース(多宇宙)を予言するような難解な理論を出していた。その無限の宇宙は全く異なる物理法則をもつはずだが、そうなると私たちの宇宙の物理法則は、偶然の産物に過ぎない=なぜこういう物理法則になったかを問えないことになり、ホーキングはそれが不満だったと。物理法則の有限性を示そうとしたホーキングもまた、物理法則が「誰かが意志をもってデザインした」ものであってほしいと考えていたのだろう…と著者は語る。

ちょうどマルチバースの記事もあったりする。その存在を唱える科学理論は先述した「泡宇宙」含めて色々あるが、共通するのは「私たちが観測できる空間と時間は唯一の現実ではない」と示唆する点。観測・検証できないならそれは科学なのか?という声もあるが、今はまだ、ということなのか…。

t.co

同じブルーバックスだと『不自然な宇宙 宇宙はひとつだけなのか?』もあわせて読むといいかも。

 

『パンの科学 しあわせな香りと食感の秘密』

ブルーバックスは食べ物系の「◯◯の科学」本も充実しており、何読んでも大抵面白いのだが、個人的にホームベーカリーで常日頃からパンを焼きまくっていることもあり、本書『パンの科学』をイチオシしておく。

パンを構成する材料が各自どんな役割を果たし、生地をこね・寝かせ・叩き・焼くプロセスでどんな化学反応が生じた結果、美味しいパンができるのか…とパン科学の第一人者が解説する1冊。

パン焼き勢とはいえ、基本ホームベーカリー任せなので全然知らないことも多くて、たとえば食パンに入れる塩ってなんか味のアクセント的な?と思いながら適当に入れてたが、本書『パンの科学』によると、塩はパン作りにおいて小麦粉・イースト・水に並ぶ不可欠な「四大主役」のひとつだという。塩がないとグルテンが引き締まらないらしい。ナメててすまなかった、塩…

ちなみに「四大主役」が小麦粉・イースト・塩・水なら、「4つの脇役(副材料)」は糖類・油脂・卵・乳製品だという。脇役も重要とはいえ、油脂は確かにバターでも太白胡麻油でもある程度なんでもいいのはパン作りを始めて気づいた。糖類も色々あるしちなみに卵と乳製品は私は使ってないが、美味しいパンが焼ける。

なお本書『パンの科学』著者さんは、ホームベーカリーの黎明期(30年前)から商品開発にも携わって、最近も助言してるらしい(我がパン生活における恩人と言えるかも)。パン科学の複雑なプロセスがあの無骨な箱に詰まってるのだなと思うと感謝である。高度に発達したパン科学は魔法と区別がつかない…。

ブルーバックスの類書としては『牛乳とタマゴの科学 完全栄養食品の秘密』とか…

『麺の科学』とか…

『おいしい穀物の科学』とか。

パン、麺、コメで「ブルーバックス主食の科学」コーナー開けるね。

 

『日本の伝統 発酵の科学』

食べ物系「の科学」ではこちらもオススメ。味噌、醤油、納豆、漬物、鰹節など、日本では昔から微生物パワーを駆使し、食べ物のおいしさと健康性をブーストしてきた。そんな錬金術のごとし発酵食品の歴史とメカニズムを、現代科学の視点から紹介する面白い本。

メジャーどころの大豆製品をはじめ、発酵の技術はやっぱ日本食そのものを考える上でも重要だよね。動物性食品に頼らずに風味やコクを出す技術としても、今けっこう注目に値する気がしている。

味噌の発酵メカニズムも詳しく書かれてるので、ピーキー健康食品こと味噌汁の不思議パワーを解き明かす参考にもなりそう↓

↓のニュースにもあるように、ここにきて発酵技術がめちゃくちゃ重要になってきてる今、世界屈指と言えそうな発酵食品大国な日本も、けっこうなビッグウェーブに乗れるチャンスあるのでは…?と思ってしまうが、どうなんでしょうね。

t.co

一方で発酵技術は日本だけのものでは(当然)ないので、世界中の発酵食品の解説も読めるのでありがたい。イタリアの正式なバルサミコ酢は、特定の白ぶどうの果汁をろ過して煮詰め、木製の樽で12年以上発酵・熟成させたものに限るらしい。へ〜…。

ブルーバックスの類書としては『チーズの科学』とか。ミルクの発酵の興味深いメカニズムを語る。

こういう食べ物系ぜんぶまとめたみたいな『「おいしさ」の科学 素材の秘密・味わいを生み出す技術』も読んだ。そもそもなぜ人はおいしさを感じるのか…みたいなところから、身近な食材のおいしさの仕組みを科学的に考える。専門性と世俗感のバランスが良く、読みやすい。

食べ物系「の科学」本、たくさんあるので知的くいしんぼうは読み漁ろうね。

 

『ウォーキングの科学 10歳若返る、本当に効果的な歩き方』

現代人の運動不足が深刻の中、お金のかからない、誰でも実践可能な運動としての「歩行」を改めて紹介する本である。そのロジックが(ブルーバックスだけあって)さすがのガチ感にあふれてるので、「ランニングならともかく、どう歩いたって同じでしょ」と思ってる人も一読オススメ。

運動と健康ガチ勢の著者ゆえの「どうすれば全国民を健康にできるか?」という問題に向き合う、迫力ある真剣さが随所に滲んでいて面白い。全国民がジムに通えればそりゃ一番良いんだろうが、経済的・時間的にジム通いなんて続けられる人は少数だろうしな…という観点からウォーキングに平等かつ民主的な(?)運動としての可能性を見出すのだ。

ちなみに『ウォーキングの科学』、今年6月にヨーロッパを旅した時に読んでいて、今週は平均2万歩とか歩いてるから超健康じゃん…と思ったわけだが、本書によると歩けば歩くほど健康度が増える、というわけではないようだ。

あくまで「どう歩くか」が重要みたいなので(早足と普通歩きを一定間隔で繰り返すのがオススメらしい)ぜひ意識して健康ウォーキングライフを送ろう。

ランニング派には『ランニングする前に読む本』というのもある。

運動系・健康系ブルーバックスだと『筋肉は本当にすごい すべての動物に共通する驚きのメカニズム』もすごそう。(9/26追記・『筋肉は本当にすごい』読んだがだいぶガチにサイエンスな語り口で筋肉という人体のエンジンを語る熱い本だった。細かい部分はまだ理解できてないが、動物のくだりとかは読みやすく面白い。)

健康ブルーバックスといえば、巷にあふれる怪しい「健康食品」に騙されないために『本当に役立つ栄養学 肥満、病気、老化予防のカギとなる食べものの科学』もオススメ。

 

『我々はなぜ我々だけなのか アジアから消えた多様な「人類」たち』

ネアンデルタール人など、過去の地球を生きた様々な「人類」の研究は進んでいるが、アジアの「人類」の真実はまだ深い闇に包まれている。身長が110cmしかないフローレス原人、台湾の海底で見つかった澎湖人など、アジアの「人類」の多様性は凄いものがあったのだが、今やみんな滅び去ってしまい、残された人類は「我々」だけ…。それはなぜなのか、何が起こったのか、滅んだ「人類」はどんな暮らしをしていたのか…といった謎を考える本。

本の終盤では「私たちホモ・サピエンスにはジャワ原人の血が流れているかもしれない」という大胆だが合理的な仮説が提示される。広い意味では「我々は我々だけではないかもしれない」という、ロマンがあるような、ちょっと怖いような嬉しいような複雑余韻を残す。人類学入門としてオススメできる一冊。

類書は『図解 人類の進化 猿人から原人、旧人、現生人類へ』など。先述の「ジャワ原人」説を提唱した海部さんも共著者。

 

『宇宙人と出会う前に読む本 全宇宙で共通の教養を身につけよう』

宇宙人の集う社交場に迷い込んだ一般地球人が、地球や人類の基本的な事実(太陽はいくつ?人体の成分は?)を相手の宇宙人に伝えるには…?というSFスタイルで綴る科学入門。『数の悪魔』を連想する小説っぽい語り口なので、ブルーバックスの中では明らかに異端だが面白い。

まず「地球出身です」と答えたところで太陽系外の宇宙人にしてみれば「は?チキュウ?」となるのは確実なので、じゃあどうやって伝えよう?とか、宇宙規模で考えた時に何が普遍的で何がそうでないのか考えていく、という面白さがある。

物理学や化学のユニバーサルっぷり(まさに)に比べると、生物はやっぱ地球ローカルだろうな…とは当然思うし、本書でも生物の左右対称性が宇宙規模では全く必然ではない話とか出るのだが、一方で意外と生物が近似のシステムや形状に収束していくのでは、という仮説もあったりして興味深い。

スケールのでかい類書としては『なぜ宇宙は存在するのか はじめての現代宇宙論』とか(いま読み中)。

 

『カラー図説 生命の大進化40億年史』シリーズ

土屋健先生の古生物シリーズ。古生代編と中生代編が出ていて、そのうち新生代編もくると思われる。進化の黎明期を彩る重要種を紹介していくスタンダードかつお手頃なシリーズなので古生物ファンはぜひ。魅力的で不思議な動物たちが壮絶すぎる大絶滅で一掃される展開も無常でヤバい。

ちなみに中生代編には今年5月に科博で見た「奇跡の鎧竜」ボレアロペルタとズールの解説があったので嬉しかった。

ところで(ラブカ図解でも描いた)クラドセラケ先輩の話が出たのだが…

最新研究だと「軟骨魚類ではあるが、サメ=板鰓類ではない」の見方が強まってるらしい…。「最古のサメ」の呼び名も返上する必要があるのかな(最初期のサメ形捕食者だったのは確かだが)。

同じ著者さんの(ブルーバックス類書として『カラー図解 古生物たちのふしぎな世界 繁栄と絶滅の古生代3億年史』など。

 

ーーー9/25追記ーーー

『『ロボットはなぜ生き物に似てしまうのか 工学に立ちはだかる「究極の力学構造」』

せっかく読んだばかりだし面白かったのになぜか紹介し忘れていた!

↓記事にもしたのに…

numagasablog.com

『ロボットはなぜ生き物に似てしまうのか』、面白いどうぶつ&工学本なのでぜひ。人工的に真似しようと思ってもできない生命の特殊性と、工学の可能性について考える本。

本書はロボット工学者による本なのだが、そもそも魚や鳥のような「元ネタ」を知らなければ、「泳ぐ」「飛ぶ」機械を作るという発想に至らなかった可能性もある、と語ってて面白い。「模倣」以前に、私たちの発想そのものが実は他の生命に規定されているのかもと。

さらに言えば、「人間=私たち自身」という「モデル動物」がいなければ、人間の脚や腕によく似たパーツを連結したロボット(ショベルカーや産業用ロボットなど)の、基本的なメカニズムに至ることは難しかっただろうとも語られる。多くの人工物が、思われている以上に動物や人間に似ているのかも…。

動力を追求するロボット設計者にとって究極の憧れでもある部位、それは「筋肉」である…という話も面白い。筋肉は「生き物の体を駆動させるモータ」であり、大きな制御装置や電源も不要、体の隅々に配置できるという、夢のようなアクチュエータ(動力源)なのだそう。

→結論「筋肉は本当にすごい」(2回め)

 

キリがないのでいったん終わり。まだ紹介できてない本もけっこうあるので、思い当たる本があれば追加するかも。

amzn.to

今回の大規模セールは9月28日までで、紹介した本(電子版)はすべてセール対象なのは確認済み。ぜひゲットするなり、kindle unlimited(対象者は3ヶ月無料キャンペーン中でまとめ読みするなりしよう。

ちなみにブルーバックス60周年記念の特設サイトもできていた。講談社の人気漫画とコラボしたりしてる(編集部員のオススメも気になるがなぜかエラーで読めなかった…)。マスコットキャラクターは火星人らしい。

t.co

科学系の新書レーベルとしては読みやすく、値段も安く、扱う範囲も広く、質も保証されているブルーバックスさん、今後も日本のポピュラーサイエンスの要衝としてがんばってほしい。

ゴルフ場の人食いザメ「オオメジロザメ」図解

「ゴルフ場の人食いザメ」こと「オオメジロザメ」のお話を図解しました。流れ次第では近所にやってくる…かもしれない。

TwitterにALT文章あり↓

ちなみに「ゴルフ場の人食いザメ」と呼ばれたサメたちですが、人に危害を加えることもなく愛され名物サメになり、その多くは再び洪水が起こった時にまた去っていったのだとか。ただし1匹、不届き者に盗まれてしまったらしい…。ゆるせぬ。

↓「ゴルフ場の人食いザメ」に関する最近のNYタイムズ記事(ギフトにしとくので興味あれば読んで)。ゴルフ場に閉じ込められたオオメジロザメの特殊なケースは、サメの寿命や適応能力を知りたい科学者にも恩恵を与えたもよう。ゴルフ場もサメで人気が出たのでわりと得したっぽい。

t.co

↓図解中でふれた「黒潮大蛇行」も調べてたのだが、ちょうど先日行ったばかりの「海」展でも詳しく解説されていて、タイムリーだなと思った。今週は海ウィークだったわ(9月後半だけど)

numagasablog.com

↓ナショジオのオオメジロザメ図鑑。

natgeo.nikkeibp.co.jp

オオメジロザメの河川での生息メカニズム、東大の研究。

www.aori.u-tokyo.ac.jp

↓日本で発見されたオオメジロザメと「黒潮大蛇行」の影響。

bunshun.jp

↓大阪湾で発見されたイタチザメ。

ja-jp.facebook.com

↓サメの話をする時に読み返す『世界サメ図鑑』。

世界サメ図鑑

世界サメ図鑑

Amazon

 

科博の特別展「海 ―生命のみなもと―」行ったよレポート

上野の国立科学博物館の特別展「海 ―生命のみなもと―」に行ったので簡単なレポートです。

umiten2023.jp

科博の特別展は必ず行くようにしてるが、夏の特別展は夏休み(絶対混む)ともろ被りしているため、油断してると終わってた!ということにもなりがち。意外ともうあと数週間なので動物勢はお早めに〜

 

まずは最も広いメイン展示場で、来場客を飲み込まんとする実物大メガマウス!

メガマウスは50年前くらいにハワイ沖で発見された深海ザメ。体長7mもの巨体をもち、深海ザメとはいえ比較的浅い水深(200mとか)に生息し、夜には海面に浮上してくることも考えると、わりと最近まで見つからなかったのは意外な気もしてくる。

ただ、個体数の少なさもあって、生きた姿が目撃されることは極めて珍しい。最近では2匹の生きたメガマウスが水面を泳ぐ姿がサンディエゴ沖で撮影されたニュースも。しかもオス/メスで求愛行動をしていると思われ、メガマウスの社会的な生活を捉えた現状ほぼ唯一といっていい貴重な映像資料となりそう。

t.co

ちなみにこの実物大メガマウス、元は神奈川の京急油壺マリンパーク(21年に閉館…)に展示されていたメガマウスを持ってきたとのこと。閉館は残念だが、再び日の目を見てよかった。ヤスリのような小さな歯もちゃんと再現されていて良い模型。「がまぐち」って感じね。

実物大サメといえば、ホホジロザメもいるよ。

人食いザメとしてのキャラが立ちすぎてるサメゆえに、意外とサイズで語られない気もするけど、実物大で見るとやっぱ超でかいよねホホジロザメ。250m以深まで潜って獲物を探すらしい(と考えるとやっぱメガマウスはいうほど深海ザメでもない感じもしてくる)

 

メイン展示場のもうひとりの主役、ナガスクジラ。

科博名物、半分は骨格の(人体模型ならぬ)鯨体模型となっていて、ナガスクジラの骨格の様子がよくわかる。大量の小魚やプランクトンをこし取って食べるために舌骨が発達しているそうだ。実物大の骨を眺めながら、そういえばゼルダ新作でもクジラの骨を巡るイベントあったな〜とか思い出した。

展示にあった「ホエールポンプ」という解説も興味深い概念。クジラの息継ぎと餌取りの上下移動(ポンプ)が起こす「湧昇流」によって、海の生態系を担うプランクトンが栄養を得ていたりする。つまりクジラの「ポンプ」が海洋生態系を支えているという話。私たち人類は水平思考がどうとか言いつつ、空でも海でも(自力では)立体的に活動しづらい肉体をもつこともあり、「縦方向」の思考に弱すぎるよなとは前から思っているので、クジラに学ぶべきことは多いかもしれない。

 

メイン展示場では「親潮」と「黒潮」という日本周辺の2大海流を軸にして、様々な生き物や生態系を紹介していた。

今回の「海 ―生命のみなもと―」展は、「海の生き物の展示」であると同時に、やはり「海」そのものの展示としての側面も強いのが興味深いところ。ホエールポンプのような「縦軸=垂直」の海の動きと、海流のような「横軸=水平」の海の動きを、あわせて紹介することで、海のあり方を3D的・立体的に理解してもらおうというコンセプトなんだと思う。

実際、海流そのものを解説する展示もあった。

ちょうどワケあって調べてた「黒潮大蛇行」のコーナーも見つけて、タイムリーだった(どのように蛇行が発生するかを説明する動画もあって勉強になる)。世界でも黒潮だけに見られる「海の大事件」で、2017年から始まって5年以上も続いていて…とあったが普通に今年も続行しており(過去最長の7年目)、漁業や気候など多方面に大きな影響をもたらしている。

t.co

海そのものの展示といえば、特別展の冒頭も、熱水噴出にまつわる特集でけっこう見応えがある。最も心をくすぐったワード「ロストシティのチムニー」。チム・チム・チェリーのチムニー(煙突)である。

現在の地球で唯一アルカリ性の熱水噴出が発見された、大西洋の海底「ロストシティ熱水域」の炭酸塩チムニー(煙突)。海底熱水といえば酸性で、黒い硫化物を沈殿させるもの…という知見を覆したという。真っ白の煙突が並ぶ「失われた海底都市」…。ロマンである。

ちなみにチムニー、抱きまくらぬいぐるみもある(茶色いけど)。唯一無二すぎるだろ

 

他にも、生き物と海の関わりについて、見どころが色々あるのでぜひ学んでほしい。

たとえばキーストーン(=要石)種の代表格として紹介されるラッコ。ラッコを再導入したらウニを食べまくってケルプ生態系が回復した話は有名。

このへんのことは前にも図解した。

 

もうひとつ、意外と面白かったのが「人類と海」の歴史。

旧石器時代にどうやって人類が海を超えたのかの謎を解こうと、石器時代に手に入る材料や道具のみを使って作った舟で、実際に台湾〜与那国島を渡ったというからスゴイ。地図もコンパスも使わずに星や太陽だけを頼りにした航海は、45時間くらいかかったらしい。

あと、かなり地味だが興味深かったコーナーが「貝塚」の中身をずらっと並べた展示。

貝殻の多くに稚貝が含まれておらず、貝の利用の持続可能性をけっこう考えていたんじゃないかという話もあって縄文人に感心。このままでは海洋資源を取りまくって滅ぼしかけてる現代人が縄文人より格段にアホになってしまう。

縄文人が利用していた様々な動物の骨などもあってワクワクしちゃう。ブダイやイシダイの硬いユニークな歯も、そりゃ見つけたら何かしら使うよね〜という感じで、こいつらわかってるな(何目線)と。よくみるとシャチの歯とかあるし。わざわざ狩ったわけではない…よね?

気になった魚・ヨコヅナイワシ。2.5mのイワシってどんだけだよ、と思うが、正確にはイワシの仲間ではなく、セキトリイワシという別の仲間の最大級サイズ。

ぬいぐるみもある。かわいい

こんなにイワシのぬいぐるみが充実してるのは海展だけ!

ハダカイワシ…!

 

図録も相変わらず充実してるので生き物勢は忘れずにね。フルカラー200p専門家がっつり監修で2600円は安いぞ。まじでな

 

余談:せっかく上野に行ったのでアメ横に寄って、隠れ家的なカフェ「御影ダンケ」に入ってみた。アメ横の喧騒の中にこんな昔ながらの喫茶店が…という驚きがある。「わちふぃーるど」とピーターラビットが同居する味わい深い空間でした。

 

カブトガニ&ルンバ(『ロボットはなぜ生き物に似てしまうのか』)

『ロボットはなぜ生き物に似てしまうのか』という本を読んだのだが、カブトガニとルンバが似ているという話が面白かった。こういう能力/機能をもつ存在を生み出せと言われたら、自然も人間も同じような「答え」に行き着くという例かもしれない…。

『ロボットはなぜ生き物に似てしまうのか 工学に立ちはだかる「究極の力学構造」』、面白いどうぶつ&工学本なのでぜひ。人工的に真似しようと思ってもできない生命の特殊性と、工学の可能性について考える本。電子版が半額になっている(たぶん本日9/7まで)。kindle unlimitedにもあるよ。

『ロボットはなぜ生き物に似てしまうのか』はロボット工学者による本なのだが、そもそも魚や鳥のような「元ネタ」を知らなければ、「泳ぐ」「飛ぶ」機械を作るという発想に至らなかった可能性もある、と語ってて興味深い。「模倣」以前に、私たちの発想そのものが実は他の生命に規定されているのかもと。

さらに言えば、「人間=私たち自身」という「モデル動物」がいなければ、人間の脚や腕によく似たパーツを連結したロボット(ショベルカーや産業用ロボットなど)の、基本的なメカニズムに至ることは難しかっただろうとも語られる。多くの人工物が、思われている以上に動物や人間に似ているのかも…。

『ロボットはなぜ生き物に似てしまうのか』、動力を追求するロボット設計者にとって究極の憧れでもある部位、それは「筋肉」である…という話も面白い。筋肉は「生き物の体を駆動させるモータ」であり、大きな制御装置や電源も不要、体の隅々に配置できるという、夢のようなアクチュエータ(動力源)とのこと。人工筋肉もあるけど生物の筋肉とはまだ似て非なるものなんだよね。

一方で、『ロボットはなぜ生き物に似てしまうのか』で「おお…」となった箇所(p256)。

①血管という精密なパイプ、②DNAによる複製という、2大「工学者が憧れる生き物ならではの機能」が、実はガンや心疾患など日本人の死因トップ3とも対応してるという事実。最大の強みが最大の弱点でもあるという洞察が光る。面白い本なのでセール中にでも読んでみてね。

おまけ ↓うちのカブトガニちゃん

特別展「古代メキシコ」たのしかったよレポート

先日、上野の東京国立博物館の特別展「古代メキシコ」に行ってきた。かなり面白かったので簡単に思い出を振り返る。東京では9月3日で終わってしまうのであと1週間くらいしかないが…

mexico2023.exhibit.jp

ちなみに写真撮影はほぼぜんぶOKだった。今時っぽいというか、まぁ海外では博物館で写真NGとかあまり見かけないわけで、日本もデフォルトでこうあってほしい。

展示を眺めてて思ったのは、古代メキシコ、かなり「鳥」好きだったのかなということ。(私が鳥好きだから目に付きやすいだけかもだが。)

まずは展示の目玉のひとつ、アステカ文明のサギ男…ではなく「ワシの戦士像」。戦闘や宗教で活躍した軍人の像のようで、ワシの羽や頭をその身にまとっている。膝(脛か)にワシの鉤爪がにゅっと生えてるデザインもかなり独特。↓

テオティワカン文明の鳥形土器もあった。「奇抜なアヒル」(Pato Locoなら"いかれたアヒル"のほうが適切かもだが…)と名付けられただけあり、ファンキーな雰囲気で面白い。こういうトサカのある水鳥を全然思いつかないが、何か具体的なモデルがいたのだろうか…。↓

同じくテオティワカン文明の香炉。鳥のモチーフがいくつか埋め込まれている(ちょっとゼルダっぽいよね)。戦士の魂を鎮める儀礼に使ったのかも、と解説にあった。↓

テオティワカン文明の「鏡の裏」に貼られた、羽を広げたフクロウの装飾。「投槍フクロウ」と呼ばれていた王を描いた可能性がある。投槍=「とうそう」だが、「なげやりフクロウ」と読むとちょっとおもしろい…↓

マヤ文明にもフクロウの土器があった。フクロウは死を預言する地下世界の使者だったらしい。ひょこっと頭出しててカワイイ…

いっしょに展示されていたマヤ文明のジャガー容器。ジャガーは権威の象徴で、不思議な力をもつとされた動物。なんともいえない顔をしている。↓

同じくマヤ文明のクモザル容器。クモザルはトリックスターとして神話に登場した。黒曜石の目が少しこわいね。

鳥といえば、アステカ文明の「エエカトル神像」はいちばん「うお、なんだこりゃ」と思った一品。風を意味する名で、生と豊穣を司る神らしい。いっけん体育座りしてる坊主だが、カワウやペリカン、クイナなどに似てると言われるクチバシっぽい口がついている特徴。クチバシを加えた結果、不思議な面長っぽい顔になってて、虚ろな目の感じといい、奇妙に不気味で強烈な像だ…。↓

やはり鳥は古代メキシコ文明全体でけっこう重要かつ神聖な動物だったのかも。テオティワカンの「羽毛の蛇」像(アステカ文明でいうケツァルコアトルに近い特徴をもつ)なども、「羽毛のある爬虫類」という意味では鳥を連想せざるをえないし。

しかしジャガーやサルなど元ネタ動物がわかりやすい古代メキシコ文明の神話的動物の中でも、急にイマジナリー度が急増する「羽毛の蛇」は妙にロマンがある。東洋の龍との共通点も興味深い。やっぱ昔は龍がいたんだろうか…(非科学)

 

鳥以外で心に残った展示物。

人身供犠が盛んだったアステカ文明の「テクパトル」と呼ばれる儀礼用ナイフ。生贄用のわりに目と口(歯)がついていてちょっと可愛い。キュートな顔して生き血を吸ってきたのだろうか(多くは使われた痕跡ないらしいけど)。ちをよこせ!!

アステカ文明の夏祭りの屋台で、焼きとうもろこしを売っていた人。…ではなく「熟したとうもろこしの女神」チコメアトル神の香炉。わりとニッチな神がいたのだな。それだけとうもろこしが重要な食物だったということでもある。

けっこうお気に入り、マヤ文明の「球技をする人の土偶」。腰でゴムボールを打つという面白げな球技に、王侯貴族が励んでいたらしいのだが、その姿をかたどった像(腰の入れ方がアクティブで良い)。戦争や人身供犠にも関連したそうなので、やってる方は真剣だったのだろう…。

 

図録もよくできてるのでオススメ。180度ぱたっと開く製本で読みやすい。表紙が3パターンあったので、サギ男…じゃなくてワシ男にしておいた。

特別展のムック本とかも出てる。せっかくだし図録買えば良いと思うけど一応↓

国立博物館自体も久々に行った気がする。ついでなので常設展もちょっとだけ見て回った。建物もやっぱよくて、この睡蓮の池とか綺麗だったな。

またそのうちゆっくり過ごしたい。おしまい。あと1週間で終わるので早く行こうね(混みそうだが…)

mexico2023.exhibit.jp

鳥山明の良いとこ全部のせ。映画『SAND LAND』感想&レビュー

「有名漫画家が描いた1巻完結の面白い漫画」の天下一武道会を開催したら、間違いなく優勝候補の一角を担うであろう漫画…それが『SAND LAND』(2000)である。

【1巻完結漫画の金字塔『SAND LAND』】

本作は『ドラゴンボール』完結から5年後の2000年に、短期集中連載としてジャンプに掲載されていた漫画だ。個人的にもほぼリアルタイムで読むことができた、唯一の鳥山明作品として思い入れが深い。

内容をざっくり説明すると、愚かで強欲な人間の手によって砂漠と化した世界「サンドランド」で、悪魔の王子ベルゼブブと、善良だがワケありな老人ラオが出会い、魔物シーフをお供に連れて、水を求めて冒険の旅に出る…という物語だ。

まず、少年漫画なのにおじいさんが主人公という設定が当時でも斬新で、「そんなのアリなんだ」と思ったことを覚えている(今なら例えばイーストウッドの映画『許されざる者』とか色んな参照元を思いつくのだが)。

ぱらぱら眺めるだけでわかるように、絵のクオリティも極めて高い。鳥山明らしいメカやクリーチャーのデザインや描き込みもさすがの一言で、『ドラゴンボール』完結後に円熟の域に達した氏の画力を堪能することができる。あまりの人気で長期連載化しすぎた『ドラゴンボール』から解放され、好きな題材をのびのびと描いている巨匠の余裕や遊び心に満ちた感覚も伝わってくる。しかし後で知ったことだが、この作画クオリティを、アシスタントも使わず1人で(短期とは言え)週刊連載として成立させていたとは、やはり化け物である…。

ストーリーの切れ味も見事だ。「砂漠の世界で水を求めて旅に出る」という極めてシンプルな物語を軸に、テンポよく次々に起こるアクシデントの数々、無駄を削ぎ落としたキャラクター配置と、とにかく圧倒的に読みやすい。そのエンタメのお手本のような明快さは、鳥山明のストーリーテラーとしての高い技能を証明している。

「砂漠化した世界を舞台に、資源を独占する横暴な権力者に立ち向かう」という物語自体も全く古びてないどころか、むしろ気候危機と格差が深刻な現代にこそ刺さっていると思う。本作で描かれる不平等の構図は、(化石燃料業界を筆頭に)大金持ちや権力者が資源を独占し、エネルギー供給の手段を掌握することで、支配力を維持しようとする現実の構図そのものだ。そしてその結果、地球温暖化の進行は一向に止まることがない。異常気象や火災の発生はニュースで知られるところだし、文字通り「砂漠化」の進行が懸念される地域も多い。

『SAND LAND』はあくまで少年漫画誌に掲載された王道のエンタメ作品ではあるが、だからこそというべきか、現実社会の支配や不平等の構造を、鳥山明という天才的クリエイターが(意識的かはともかく)鋭敏にすくい取っていたことに感銘を受けてしまう。

ところで『SAND LAND』の砂まみれの世界観といい、シンプルな「行きて帰りし物語」といい、横暴な支配者に抗う気骨といい、やはり『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015)を想起する映画ファンも多いのではないかと思う。まぁ『マッドマックス』1作めは1979年なので、むしろ本シリーズが鳥山明に影響を与えている可能性も大きいわけだが、とはいえあの映画史に残る大傑作『怒りのデス・ロード』の15年前に、日本の漫画家が近い発想の名作を仕上げていたと思うと、ちょっと嬉しくなる。

 

【晴れて(まさかの)映画化】

そんな名作マンガ『SAND LAND』が、このたびまさかのアニメ映画化を遂げたという。そもそもゲームの企画だったのだが(それもだいぶ思い切ったな)、長編アニメとして作らないかという東宝側の提案もあって、めでたく制作の運びとなったようだ。とはいえ23年のマンガだし、ファンとしては「どうなるんだろ…」とちょっと心配しつつも劇場に駆けつけた。その結果…

たいへん楽しむことができた。原作コミックに思い入れが深い者としても、大いに満足できるアニメ化だったし、(ファンの贔屓目もあるかもだが)2023年の完全新作として出されても遜色ない出来栄えだったと思う。そして映画館で鑑賞して改めて感じたが、明快で痛快な活劇の面白さといい、人間臭く愛おしいキャラ造形といい、シンプルで力強い台詞回しといい、意外なほどきめ細やかなディテールの詰め方といい、とにかく鳥山明の良いところが全部出ている作品だなと思わされた。

原作のストーリーはほぼそのままだが、細かいところをけっこう足したり削ったり変えたりして、106分のエンタメ映画として成立するよう上手く仕上げている。

たとえば冒頭、魔物たちが軍の車を襲うシーン。原作では主人公(のひとり)ベルゼブブの視点だったが、映画では車の運転手たちのやりとりから始め、そこを魔物に急襲されるという形で、ホラー映画っぽいテイストに変更していた。この世界では悪魔や魔物が人間に恐れられている…という(重要なはずだが実は原作にはなかった)要素をうまく織り込んでいて、巧みな改変だったと思う。

もうひとりの主人公である、おじいさんの保安官ラオが町の人たちに助けを求められ、自分がなんとかすると約束して出発する様子を入れたのも適切な補足だろう。というかその後原作を読み返すとベルゼブブのもとにいきなりラオが出現するので、よく言えば爆速テンポだが、ちょっと唐突と言えば唐突にも感じられる。

他にも、ベルゼブブの父サタンがラオを指していう台詞が「あの人間は信用できそうだ」から「あの人間は興味深い」という、意味は同じかもしれないがより悪魔っぽい台詞に変わっていたり、終盤で活用される映画オリジナルアイテム「クソサボテン」が登場したり(中盤のラオの行動が伏線にもなる)と、地味に細やかな変更を見ることができる。

序盤の最大の見どころである、砂漠の猛獣「ゲジ竜」とのバトルも、スクリーンで見るとかなりの迫力があった。(ゲジ竜はよく見ると原作より足の数が多かったり、デザイン面での変更もある。)荷物を切り離してゲジ竜から逃れるくだりも、巨大な穴を車でジャンプするアクションに変更されていて、外連味が増していたと思う。

序盤のゲジ竜戦といい、それに続く様々なシチュエーションでの乗り物バトルといい、きっちりスリリングに楽しませてくれるアクションが続くのも本作の見どころだ。ベルゼブブが最強クラスの魔物にもかかわらず、一貫して緊張感を持続できているのも地味に凄い気がする。ベルゼブブは圧倒的に強い魔物なのだが、とはいえせいぜい腕力や五感が人間より格段に優れている…という程度ではあり、無敵や万能というほどではない(ゲジ竜を倒したり戦車に穴を開けたりはできない)…というバランスがいい感じに働いている。この「無敵ではないがとても強い」身体能力を、老人ラオの百戦錬磨の知恵と組み合わせて危機に立ち向かっていく、という意外と知的な楽しさもある。

具体的なネタバレはしないでおくが、中盤から終盤にかけてのアクションは、ボリューム的な意味で大幅にパワーアップしているので、原作ファンも嬉しくなるはずだ。(映画の後に原作を読むとちょっと地味であっさりしすぎに感じるほどかもしれない。)

 

ーーー以下ネタバレ、作品の核心部分に触れるので注意ーーー

 

【後悔と贖罪】

このたび『SAND LAND』を劇場で見て、改めて心打たれたシーンがあった。それは、「他者への偏見が大惨事に繋がったこと」への後悔と贖罪が正面から描かれることだ。ラオの正体は、実は伝説のサバ将軍であり、「破壊兵器」を作っていたとされる民族を攻撃した際に起こった爆発事故で死亡したと思われていた。しかしラオは魔物シーフの口から、その爆発事故の衝撃の真相を告げられる。実はラオが攻撃を命じられた民族が作っていたのは「破壊兵器」ではなく「水をつくる装置」であり、水を独占するために彼らが邪魔だったゼウ大将軍が、ラオを騙して攻撃させた…とわかったのである。

権力が煽った憎悪によって、他者への偏見が増幅され、結果として大虐殺を起こしてしまったという「罪」を突きつけられ、ラオは「本当の悪魔は、俺の方じゃないか…」と絶句する。この台詞は映画オリジナルで付け足されたもので、ベタな言い回しではあるのだが、本作のテーマを考えれば極めてまっとうで、かつ重たい言葉だと言うほかない。前半で「人間による魔物への偏見」「魔物や悪魔よりも悪いかもしれない人の業」を(コミカルにではあるが)語っていたことも、良い具合に伏線となっている。

基本的にドライな作風で、登場人物がそれほど深く苦悩したりしない鳥山明作品の中では意外なほど珍しい、取り返しの付かない過ちを犯した男のヘビーな後悔と贖罪に対して、この映画版は的確にスポットライトを当ててみせる。ここをしっかり描くことで、後にラオが大将軍に告げる「お前だけは絶対に許さない」という言葉が、格段の重みを放つことになるのだ。

そして本来であれば、本作のような気軽なエンタメ映画に紐づけて話題にしたいことでもないのだが、まさに偏見や差別によって引き起こされた虐殺を省みないことが政治的な常套手段になってしまっている今の日本では、こうしたド直球かつ王道の少年漫画的メッセージですら大事にしないといけない状況と言わざるを得ない…。

日本に限らずとも、「兵器を作っている」という大義名分で虐殺に駆り出された人間の後悔を描くストーリーを、「大量破壊兵器」を口実としたイラク戦争が起きる3年前に描いていたという事実もけっこうスゴイ気がする。もちろん鳥山明がこうした具体的な事象を意識して『SAND LAND』を作ったとは思わないが、これも先述した環境問題と同じで、普遍的で強度の高いエンタメを作り出そうとすれば、必然的に現実社会の様々な問題を突くような鋭さが生じてしまうこともある…ということだろう。

 

【あえて言えば…な弱点】

そんなわけで大いに楽しんだ『SAND LAND』だし、物語自体は今も全く古びてない…とは思うものの、まぁ本当に2023年の新作として見た場合、気になる点が全然ないというわけではない。真っ先に浮かぶのは、キャラクターが(おじいさんに偏ってるのは全然いいと思うが)男に偏りすぎ問題かもしれない。原作を知らない人が見たら「なんで主要キャラが男ばっかりなんだ?」とちょっと不自然に感じてしまうのではないか。

まぁ23年前の(そもそも全体的にホモソーシャル的な)ジャンプ漫画に現代エンタメ並のジェンダーバランスを求めるのは酷だろうし、映画化で変えるわけにもいかなかっただろう。ただ、もし今の鳥山明が『SAND LAND』のような話を描くなら、アレ将軍か、無理ならサタンあたりの立ち位置のキャラを女性にすることで(お母さんに頭が上がらないベルゼもかわいいんじゃね)、バランスを取ったんじゃないかとも想像する。…ということをTwitterで書いたら「原作のキャラを女性に改変しろというのか、行き過ぎたポリコレだ〜」みたいなつまらないクソリプが届いたが、誰も改変しろとは言ってない。いくら『SAND LAND』が名作とはいえ、2023年の最新作として見た場合は多少古びたり不自然になっているところもある、という当然の話をしている。

さらに言えば、結末もちょっと煮えきらない部分もなくはない。ここまで権力打倒の物語をまっとうにやりきったなら、もう王制そのものも打倒しちゃえば?とは言いたくなってしまう。邪悪な大将軍を追放したのはいいが、あの無能で愚かな王自体は権力の座にとどまり続けるんか〜い、という点でやや拍子抜けするのは確かだ。とはいえ、王制への謎の執着はディズニー作品とかにも同じことが言えるし、まぁ魔物とか悪魔とかいるドラクエ世界観だし、そこは童話的なお約束というか、深く突っ込むことはしないでおこう…。

また原作マンガ→アニメの改変ポイントはほぼ文句ないものの、いくつかの場面では鳥山明独特の味わいが少々抜けていたようにも感じた。たとえば、ラオの実力と人格を認め、過去の過ちに気づいたアレ将軍が、密かに国王や大将軍を裏切り、無線を使ってラオたちに王の泉の場所を教えるシーン。原作ではアレ将軍が「実は泉はあそこにあるんだよな〜」的な「ひとりごと」を言うことで、ラオに情報を伝えるというシーンなのだが、映画では「他の戦車に報告すると見せかけて、ラオに情報を届ける」という形に改変されていた。ぶっちゃけ明らかに映画の展開のほうが自然ではあるし、たいへん適切な改変だとは思う。ただ真面目なアレ将軍が異様にくだけたわざとらしい口調でラオに情報を伝えてくれる原作シーンの面白さ(『カリオストロの城』の銭形の「どうしよう??」の良さにも通じる)が、いかにも鳥山明らしい人間臭さに満ちた、本作屈指の好きな場面だったので、ファン的にはちょっと残念ではあった。

あと全体に、コミック1冊の内容を映画用に膨らませた内容であるため、やや冗長に感じる部分もなくはなかった。戦車戦やクライマックスの闘いも含めて、「膨らませた」部分もよくできてはいるのだが、すごく面白いとまで言ってしまうと原作ファンの贔屓目になりそうだ。熱心なファンは「蛇足」「贅肉」と感じる人もいるかもしれない。まぁ原作そのままのテンポと内容でやるとたぶん1時間くらいで終わってしまう話ではあるので、しょうがないところではある。

 

【『SAND LAND』のまっとうさ】

そんなわけで(大抵の面白かった映画同様)気になる部分が皆無ではなかったが、映画『SAND LAND』は、改めて鳥山明のストーリーテリングやキャラ造形の才能を実感するという意味では、これ以上ない機会といえる。「鳥山明を体感せよ」というコピーには何の偽りもないと言って良いだろう。本作が2000年に出た原作漫画の23年越しの映画化であることを思うと、むしろこんなにきっちり1本の独立したエンタメとしてまとめ上げた近年の日本アニメ映画をほとんど思いつかないことに、多少の危機感を覚えるほどだ。

もっと言えば『SAND LAND』が証明してるのは、主人公チームの3分の2がおじいさんで、女子高生もイケメンも出ず、キャラ造形がそれほど華やかでなくても、ストーリーやアクションが良くできてさえいれば、完全に良い映画になるということだ。『君たちはどう生きるか』もその観点から言って凄かったが、今時そんな企画は鳥山明や宮崎駿レベルの知名度がなければ実現困難、というならそれはそれで複雑な気持ちになる…。

そして先述したように、へたに捻ったり逆張りしたりせずに、王道のエンタメを突き詰めた本作が、テーマの面でも現代の日本社会や世界に深く刺さってしまっていることは特筆すべきだろう(少年漫画の勧善懲悪がそのまま刺さる現実世界がどうなんだよという話ではあるのだが…)。変に「正しさ」に逆張りしたせいで結局なにが言いたいのかよくわからなくなってしまったり、むしろ権力や多数派に都合の良い考えに追随してしまうような作品も沢山ある中で、本作の筋の通ったまっとうさには、今時珍しいほどの清々しさを感じずにはいられなかった。そうした真摯な物語を、あくまで(砂漠だけに)カラッとした鳥山明節で仕上げていることも感銘を受けてしまう。エモや情緒や泣かせに頼り過ぎな昨今の制作陣は見習ってほしい。

なんにせよ映画『SAND LAND』、今年の日本アニメ屈指の快作であることは間違いないので、残念ながら客入りは微妙とかいう話も聞くが(見る目ないぜ)、日本のアニメ好きは確実に劇場で観といたほうがいいよ。おわり。

原作も電子版とか出てるので読もうね。

ドラゴンボール以降の鳥山作品つながりで『COWA!』も読んでみたが、こっちもしみじみ良かった…。マコリン…