沼の見える街

ぬまがさワタリのブログです。すてきな生きもの&映画とかカルチャー。

ジョジョアニメ「漫画家の家に遊びに行こう その2」感想

  • ジョジョ4部アニメ「漫画家の家に遊びに行こう その2」の感想です。
  • 1クールぶんが終了したことで、今回からOPが新しくなりましたね。音楽もアニメもすごくカッコよかったです。心音を写したイントロから味方キャラがぐるぐる回るカットに入っていき(億泰が渋い)、4部ファンにはおなじみのあのみんなで空を指す集合絵のポーズに決めるという流れがとても綺麗ですね。
  • その後のアニメーションの写し方も、ちょいちょい不穏なカットが挟まれるのが凄く4部らしくて良い。重ちーと間田と億泰という(4部を代表するボンクラ的な)トリオが楽しそうにしているなか、ラスボス吉良の不気味さを象徴する「爪を切る」という行為の絵をはさみ、何かを察して飛び立つ鳩から(4部のもう一人の主人公である)露伴へと視点をつなげるというテクニカルさ。何回見ても「おおっ」と思います。
  • 仗助・康一・億泰のトリオを俯瞰で眺める不安げなショットに、「虫喰い」がちょろちょろっと走る姿が入っていたりするのも良いですね。エコーズAct3やシンデレラもカッコいい。由花子たちの顔にブラインドの影が落ちているように見えるのも、シンデレラの能力を暗示していてうまいです。鈴美さんのヒロイン感もスゴかった…。
  • 前回までのOPの賑やかで楽しいムードから一気に「4部はここからが本番」という不気味(かつ熱い)雰囲気にシフトしたことがはっきりと伝わってきて、話を知っているにもかかわらずワクワクさせられるOPでした。そしてOPの内容から考えても、シアーハートアタック戦の次くらいから最後のOPになるのは確実でしょうな。神風動画さん、戻ってくるか…?どちらにせよ、今からめちゃくちゃ楽しみです。
  • OPの話が長くなってしまいましたが、本編も前回より格段に素晴らしい作画と演技のクオリティで、しかし実質的なギャグ回でもあり、大満足でした。もう冒頭の、露伴の漫画を描くアクションを完璧に再現するくだりからして最高でしたね。
  • 仗助と露伴の心理戦も、アニメで改めて思ったんですが、かなりメタ的な展開ですよね…。敵キャラが「こんな時に漫画の主人公ならどうするか…?」っていうセリフをまさに漫画の主人公に投げかけているわけですから…そういう意味でも面白かった。そしてバトルの決着のつけ方はジョジョの中でも屈指の力技というかゴリ押し感があるものなので、アニメでもギャグっぽさに振り切ったのは正解だったと思います。(0.2秒で対抗策を思いつく露伴とか笑いました。)
  • 康一くんが仗助の髪型の「理由」を語る回想も、アニメで自然な感じで見せるのはけっこう難しかったと思うんですが、導入も自然でとてもよかったし、演出も感動的でした。なんといっても、仗助の恩人の「声」を聞かせずにセリフを全て字幕で表現したのは「大正解」としか言いようがない。
  • あの恩人は「ひょっとすると仗助本人だったのでは?」みたいな推測も当時からけっこうなされたようなのですが、やっぱり「赤の他人だった」というほうが格段に感動的ですからね。杜王町には救い難い「悪」も確かに存在しますが、その一方であの時の恩人のように、困っている人を助けずにはいられない「黄金の精神」を持っている人間もいる。そして仗助を救ったその精神がしっかりと彼に受け継がれて、巡り巡って杜王町に潜む最大の「悪」を倒すことになる。これこそが4部の核心であり、グッときてしまうポイントなわけです。そんなわけで、あの字幕の演出はまったく正しいと思いました。(欲をいえば「大事な学ランを汚してまで…」みたいなセリフは一応カットしないで欲しかったですが。)
  • 今日は時間がないのでこの辺で終わりにしておきますが、今週のツボを押さえた演出をみるに、来週の「ネズミ狩り」から続くアレコレも凄く楽しみになりました。おしまい。

レジェンドナイト

トム・ハーディ一人二役でギャングを演じる映画『レジェンド』が、今日で終演だったので観てきました。クールで残酷ながらも妙なオフビート感とキュートさに貫かれた作品で、とても良かったです…! ラストの音楽の格好良さはもう脳がとろけるかと思いました。

それにしても、つくづくトム・ハーディは多彩…! 強烈な個性をもつ俳優なのに、作品ごとにガラッと雰囲気を変えてきて、今回なんてまるで別人の双子の兄弟を一人二役ですからね。堪能しました(タロンくんも美味しかった)。また詳しくは後日!

『日本で一番悪い奴ら』感想

  • 映画『日本で一番悪い奴ら』の感想を忘れないうちに書いとこうと思います。ベスト10に入れたにもかかわらず結局感想を書いてませんでしたからね…。(観たのいつだっけ。先々週くらい?)夏バテ気味でやる気がないので大したことは書きませんが、とても面白かったです。
  • 監督は『凶悪』の白石和彌で、主演は『そこのみにて光輝く』『リップヴァンウィンクルの花嫁』の綾野剛です。こうして列挙すると綾野剛フィルモグラフィーはすごいですね…。呉美保や岩井俊二など、腕のある監督が声をかけたくなる何かがあるんでしょうな。
  • そして今回も綾野剛は素晴らしかったですね。舞台は北海道警察、綾野が演じるのは諸星要一という若い警官で、最初は仲間にハブられてる弱々しい柔道青年なんですが、裏社会とつながって拳銃を押収しまくることで、組織の中をどんどんのし上がっていきます。彼の隆盛と没落を描いたのがこの映画というわけです。
  • 笑ったのが、弱々しい青年がヒャッハーマインドのドチンピラ警官へと変わるのが本当に一瞬なんですよね。「裏社会とのコネを作らないと警官ってのはダメなんだよ」みたいなことをピエール瀧演じる上司に言われて、めちゃくちゃ素直にそのアドバイスを受け取り、「諸星要一」という本名を印刷した名刺をあちこちに配りまくる。そして気づいた時にはホントに裏社会とのコネができていて、やがて情報元となる「S(スパイ)」を作り、そこから得た情報をもとに拳銃を取り上げて自分の出世のための「点数」にする。
  • いきなりヤクザの家に押しかけて、女とのセックスに興じるヤクザをぶちのめして手錠で拘束し、捜査令状も何もなく部屋を探し回るくだりとかあまりに酷すぎて笑うしかありませんでした。おまえ急に貫禄つきすぎだろ!っていう。でもこの「素直さ」「まっすぐさ」がダイレクトに「凶暴さ」につながっていく諸星のキャラクターが妙に魅力的で、ついつい「おう、おまえはもう行けるところまで行けよ」とか思ってしまいます。
  • そうこうしてるうちに諸星が裏社会のゴタゴタに巻き込まれていき、中村獅童の演じるヤクザ・黒岩に呼び出しをくらったりする展開もすごく面白かった。内心はめちゃくちゃビビりつつも弱みを見せるわけにはいかない諸星と、勝手に部下の拳銃を押収されて怒り心頭ながらも、どこか諸星が気になっている黒岩…という関係が絶妙でした。
  • 黒岩の開口一番の「はい、こんにちは〜」は中村獅童のアドリブみたいだったですが、あれ最高でしたね。思わず手が震える諸星をみてつい吹き出してしまい、そこからまさかの意気投合…という流れも自然でしたし、「マッチョであり続けなければならない」という警官とヤクザの悲哀とおかしさがよく出ていた、本作の白眉シーンのひとつだったと思います。
  • 諸星の相棒役となる、『TOKYO TRIBE』で主役を演じたラッパーのYOUNG DAISくんが今回もいい仕事してました。途中から出てくる犬っころっぽい青年・田辺太郎の役なんですが、「かわいい舎弟」としてこれ以上ないくらい魅力的で、実にハマってましたね…。やはり本当に実力のある役者さんです。ラッパー出身の俳優さん、今後もどんどん増えていきそうですな。
  • この太郎が紆余曲折の末、途中でとあるお店を開くことになるんですが、それに対する諸星のリアクションには不覚にもグッときました。諸星は一貫してめちゃくちゃなことばかりやっているんですが、この映画でたった一度だけ心から嬉しそうにするんですよね。だからこそその後の展開に「ああ…」という悲しさが生まれるわけですが…。
  • この映画は、警察という最も「マッチョ」な組織のなかで、ヤクザや同僚と渡り合う「マッチョ」さを鎧のように身につけていった、とんでもなく素直な男の一代記ともいえます。マッチョさ(ワルさ)を武器にのし上がっていく姿は爽快ですが、どんどん無理が出てきて、ついにはそれを貫けなくなる。後半のある取引で頭に銃を突きつけられ、それまでの強気な態度とは一転して心底怯えている諸星の姿は強烈でした。オラオラと突き進んできた諸星が、あそこで初めて「死」を意識させられたということなんでしょうね。そうしたらもう、恐怖で動けなくなってしまった。そこから転落が始まっていくわけですが、中盤までのトーンとは打って変わった悲しさに溢れた没落の過程も見応えがあります。
  • それでも最後、落ちるところまで落ちた諸星が「俺は俺の意思で生きた」というような満足げな表情を浮かべるシーンを見ると、「ハッピーエンド」とは全く言えないにしろ、傑作『ブレイキング・バッド』を見た後のような不思議な爽やかさが心に訪れるのも事実です。(麻薬を流して荒稼ぎ、そして転落…というストーリーも似てますしね。)脱げなくなったマッチョさの鎧に押しつぶされながら、全体的に「間違い続けながら」も、それでも行き着くところまで突っ走った人間・諸星要一。映画が終わる頃には、彼の人生が心に焼き付いて離れなくなっていることと思います。
  • いったんこの辺で終わりにしますが、しっかりリアリティもあって、笑える場面もたくさんあって、130分と長尺ながらも退屈せずに最後まで観ることができました。ラストシーン、日の丸と一緒にある言葉がドーンと出てくるくだりも、まさに「反骨」の姿勢を感じさせて素晴らしかったですね。たいへん面白い(個人的には『凶悪』より格段に面白い)エンタメ映画ですので、映画館でやっているうちにぜひご覧になってみては。ではまた。

2016年前半・映画ベスト10

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  • ちょっと遅れましたが、2016年前半の映画ベスト10です。今回もイラストにしてみましたが、(偶然にも)なかなか良い感じの並びになったのではないでしょうか…。
  • 1位は迷いましたが『貞子vs伽椰子』で。総合的な完成度ではもちろん『ズートピア』に敵うものなし、と思うのですが、こういうホラー映画が劇場で観られたことがとても嬉しかったのと、レポ漫画を描いたらいっぱいリツイートしてもらえて嬉しかったので(浅いな!)、こちらを1位にしました。いやホント、素晴らしいホラーエンタメだと思いますよ。まだまだヒット街道を爆走して欲しいです。
  • リップヴァンウィンクルの花嫁』はある意味ではひどいお話なんですが、観ている間の独特の心地よい浮遊感と、観終わった後に湧いてくる「やっぱり生きるって面白いな…」という幸福な感慨が最高でした。「こういう映画を観たくて映画ファンをやっている」といっても過言ではない、傑作だと思います。
  • 『同級生』も似た種類の爽やかさを与えてくれる映画です。生きていれば後悔することは沢山あるし、挫折も失敗もあるし、進んだ道が正解だったかなんてわからない。だからこそ、その道に進んだおかげで「同級生になれたじゃん」っていう言葉が、とても優しく響くんですよね。BL好きはもちろんですが、私のような門外漢にとっても本当にぐっとくる美しいアニメ映画でした。
  • 『イット・フォローズ』も良いホラーでしたね…。ゆっくりと迫り来る理不尽な怪異、Jホラーっぽい陰湿さもありながら独特のフレッシュさもあって、観ているあいだ幸せで仕方がなかったです。「あんまり怖くないじゃん」みたいな意見もけっこう聞きましたけどね…。ただ「怖さ」がホラーの魅力の全てだとは私は全然思っていません。「怖さ以外」の点がとっても魅力的な映画でした。監督の次回作も楽しみです。
  • ちはやふる』は「上の句」のロジカルで熱いラストバトルの決着、そして「下の句」でクイーンを演じた松岡茉優にそれぞれ1億点を献上したいです。「漫画の実写化」という縛りだけでなく、日本の青春エンタメとしては最高峰に位置する作品として今後しばらくは語り継がれていくことでしょう。これまた続編がすぐにでも見たい気持ち。次はバトルに次ぐバトルがいいな〜。
  • 『神様メール』は結局ちゃんと感想が書けませんでしたが、隅から隅まで皮肉と可愛らしさと優しさに満ちた、本当に素敵な逸品でした。「神」がいるとしたら本当に「善」なのか?という深いテーマにも斬り込んでいて、考察のしがいがあります。こういう映画が月に1本くらい観たい…(無茶かな)。
  • 『マジカル・ガール』は息を呑むような美しさに貫かれた映画でした。これまた本当にひどいというか、実に残酷な話なんですが、魅惑的な緊張感に満ちた一級のノワール・サスペンスなのは間違いありません。まどマギ好きとしても絶対に見逃せない映画でした。
  • 『コップカー』もサスペンス枠ですが、オフビートなノリがたまらなかったですね。上質の短編小説を読んだような味わいで、なんとも幸せな気持ちになります。ジョン・ワッツは次のスパイダーマンを監督するそうですが、こんな見事な佳品を撮れる人なら絶対に外さないことでしょう。そしてケビン・ベーコンはやっぱり最高!
  • 『日本で一番悪い奴ら』。これはまだレビューとか書いてないんですが、とっても面白かったです。監督の前作『凶悪』よりも格段にクオリティが上がっていると感じました。そして綾野剛は今年、本当に当たり年ですね…。もともといい役者さんとは思っていましたが、まさかベスト10に主演級の映画が2本も食い込むほど好きになるとは思っていませんでした。マッチョな思想に取り憑かれて破滅へと突き進んでいく男の悲しさと、それでもラストになぜか残る爽快さ、そして作品が持つ反骨精神…。紛うことなき傑作だと思いますし、いずれレビューか漫画でも描こうかなと画策してます。
  • 今回はとりあえずこんなところで。ベスト10に入れなかったものでも、素晴らしい映画たくさんありましたからね。また思い出したように語っていきたいと思います。後半も良い映画にたくさん出会えるといいな…。ではまた。

さだかやオマケと白石映画

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  • 昨日描いた『貞子vs伽椰子』のオマケイラスト、一応ブログにも載せとこうかと…。対決しようと伽椰子んちを訪れたのに意外とテレビが小さくて、プーさんばりに引っかかってしまった貞子さんと、それを引っ張るカヤストファー・ロビン一行…っていう図。そんなわけでプーさんのパロディなんですが、気づいた方は全然いなさそうですね。わかりづらすぎた…。俊雄くんがもっと踏ん張ってるニュアンスを出したかったんですが、猫との兼ね合いで表現できずに残念。イラストは難しいですな…。こういうのをササッと描けるようになれたらさぞ楽しかろう…。鍛錬あるのみか。
  • 『貞子vs伽椰子』の漫画をRTしてくれた人のホーム画面とかで、いろいろな人の感想を読むのが楽しいですね。ちくしょう怖いじゃねーか!という人もいれば、そんなでもなかったかな〜という人もいて、やっぱり個人差があるのでしょう…。「 怖そうだけど面白そうだし観に行ってみようかな」とコメントしてくれてる人がたくさんいて嬉しい限りです。騙されて観に行ったらいいと思いますよ、ほんと…。損はしません。
  • ところで最近、『貞子vs伽椰子』の監督・白石晃士の映像作品をいくつか意識的に見ています。ここ最近で観たのは『コワすぎ!劇場版』と『ある優しき殺人者の記憶』と『ノロイ』です。どれも全く違う話なんですが、妙にブッとんだ部分と妙にリアリスティックな部分が混ざり合っていて、謎の勢いに満ちていてすごく面白かった。事態は深刻なんだけど、その深刻さがどんどんエスカレートしていくせいでクライマックスではなんかもう笑ってしまう…。こういうのも白石イズムなんでしょう。『貞子vs伽椰子』もバッチリそういう話ですからね。
  • それと、ストーリー的にはむしろ異物感を与えるような強烈なキャラクターが登場するという点も共通してますね。コワすぎの工藤Dはもちろん、『殺人者』のウルトラチンピラ日本人とか『ノロイ』の霊能力者とか、凄まじく強い印象を残してくれます…。
  • 『貞子vs伽椰子』も強烈なキャラは盛りだくさんでした。森繁教授、霊媒師の法柳、そして言うまでもなくケイゾウとタマオの毒舌コンビ…! もう話の緊張感やリアリティラインを損なうギリギリのバランスでこういう鮮烈な人物を突っ込んでくるので色んな意味でハラハラしますが、やっぱり観た人の心の中に彼ら・彼女らへの愛おしさが残るあたりが素晴らしいですな…。だいたいロクでもない目にあって終わるとはいえ。
  • そんな感じで、白石監督作品、今後もチェックしとこうと思います。次はネオ様という有名なキャラの出る映画『カルト』かな。白石ユニバース、見届けたいところです…。

ジョジョアニメ「漫画家のうちへ遊びに行こう その1」感想

  • ジョジョ4部アニメ「漫画家のうちへ遊びに行こう その1」感想です。
  • ついに露伴先生登場回なわけですが、今回もOP曲が省略されて、けっこうギチギチに詰め込まれているようです。4部OP大好きなんですがわりと省略率が高い気がしてもったいないので、ジョジョアニメには30分といわず35分くらいあげればいいのにな!と思います(無茶言うな)。
  • 今回の最大のポイントは地味に間田くんではないだろうか…。サーフェイス戦の登場時に原作よりもかなり背が低く描かれてたので、「あ、身長をならしてきたんだな」と思ったんですが、まさかさらに縮めてくるとは…!いや、原作通りといえばその通りなんですが! びっくりしました。
  • 康一くんと間田の会話も微笑ましかったですね、良いオタク友達になれそうだ…。演出がいつもと違う感じでよりギャグ「漫画」っぽい感じだったのも、露伴先生回であるのも意識してのことだったんでしょう。
  • ついに登場した露伴先生の不気味さと熱さもうまく表現されてました。「味も見ておこう」でけっこうしつこくクモを舐めてるところとか…(ていうかクモのグロシーンは一応規制が入るんですな)。そして有名すぎる「この岸辺露伴が金やちやほやされるために…」という名セリフも、直前の音楽のかっこよさもあいまって良かったです。特に今回は作画に微妙に波があった気がしますが、決めるべきところでガツンと決めてくれたので満足です。
  • その後、露伴先生が「もしかして誰も読んでくれないんじゃないか」という不安を独白するくだりは、実は微妙に覚えてなかったので新鮮でした。露伴でもそんな「普通」の不安な気持ちになるんだ、そりゃそうだよな…と。でもだからこそ、彼の「特殊」な才能と「普通」に悩んだりもする部分が合わさって、あんなに強力なスタンドが発現した…みたいにも考えられるのかもなと思いました。
  • 半端ですが今日は眠いのでこのへんで…。次回の冒頭は『ピンクダークの少年』のライブドローイングがついにアニメで見られるわけですね。楽しみすぎる!

『葛城事件』観た。

  • 今日は用事があってなぜか都庁に行ったんですが、映画の日だったので帰りに新宿バルト9で『葛城事件』を観てきました。評判は耳にしていましたが、予想を超えて恐ろしい映画だった…。いつもの「感想」という形よりさらに適当ですが、ちょっと思いつくままに何か書いてみようと思います。
  • これ、もともとは演劇作品だったんですね。たしかに舞台は相当限定されてますし、アクションとか大きな事件もほとんどなくて会話劇が進行していく感じなんで、ずっと演劇っぽい緊張感がありました。
  • 映画の内容は、めちゃくちゃ高圧的な父親のいる「葛城家」という一家が、だんだん破滅へと転がり落ちていくというような話です。その父親と、従順っぽい母親と、優等生的だけど抑圧されてる兄と、高校を卒業してふらふらしてる引きこもりの弟…。おもにこの4人家族のひたすら息詰まるような、イヤ〜〜な関係性を延々と描いていく映画です。
  • …なんかこうして書いてみると地獄のような映画ですね!どこの馬鹿がこんな陰鬱な映画をわざわざお金を払って観るんだ!?……と言いたいところですが、性格や関係性といった人間の描写がとにかくリアリティに満ちていて、「いやだ〜いやだ〜なんでこんなもん観なきゃいけないんだ〜」と思いながらも、やっぱり観てよかったですね…。万人にオススメできるかというとハッキリ言ってNOですが、面白いかつまらないかで言えば凄まじく面白かったです。
  • もう冒頭で明かされるので言っちゃいますが、例の引きこもりの弟というのがある残虐な事件を起こしてしまい、死刑が確定するんですね。すると刑務所にいる弟の前に変な女のひとがあらわれて、彼女はなんと彼と「結婚」をしてしまうのです。獄中にいる人とそんな勝手に結婚ができるのかって感じですが…。
  • 彼女はちょっと意識が高すぎるのではないかというくらいの強固な死刑制度反対主義者で、死刑というものが人間に対する「絶望」だと考えている。彼女の理想自体はたしかに尊いものですが、「だから死刑囚と(ほとんど勝手に)結婚する」という行為はとても正気の沙汰とは思えません。殺人犯や異常な父親に対する「視点キャラ」としては、ちょっとあまりにもおかしな人なので、かなり戸惑いながら物語につきあっていくことになるんですが、多分そういう狙いなんでしょうな。いわゆる「感情移入」できるキャラをあえて作らないようにしている。
  • あえて主人公をひとり選ぶなら父親なんでしょうが、こいつがまた中華料理屋さんで店員さんに罵詈雑言をぶつけるようなクズ野郎でして…。私が人間として間違いなくいちばん嫌いなタイプの男であり、とても感情移入することは不可能…と言いたいところですが、やはりいくつかの部分では「クズ野郎が」と思いつつもどこか自分と重なる部分を見つけてしまい、なんともいえない気分になりました。
  • 物語の中心にいる弟も、またムカつくんですよコレが…。口ばっかり一丁前で他人を見下して、お母さんやお兄さん(やその家族)に八つ当たりしている。でも、これまた自分の境遇や欠点と似たところに気付いたりもしちゃって、「うぎゃ〜〜…」という気持ちに襲われます。イヤな奴ばっかり出てくるんですが、どうしても「自分」と切り離せない。最悪に絶妙な人間描写です。
  • 個人的にいちばんキツかったのは、営業マンの兄の描写ですね…。昔から「いい子」として振る舞い続けて、仕事も家庭もちゃんとあって(弟に比べれば)順風満帆な人生に見えたんですが、特に何の前触れもなく仕事をクビになってしまう。そしてついには…という、一連の流れが描かれます。仕事をクビになったあと公園でタバコを捨てて、でも根が真面目だからつい拾いにきてしまう…みたいな描写とか、それに続く展開を考え合わせると「完璧」な人間性の表現としか言いようがなくて、「ああああ〜〜〜…」ってなります(こんなんばっかじゃねーか)。
  • その前に、この映画で唯一と言っていい「家族の温かさ」を思わせるシーンがあるんですが、それがむしろ凄く残酷に響いてきて、でも泣けてしまって…っていうのも絶妙なバランスでした。「うな重、いいじゃん!」っていうセリフとか、映画全体の重苦しさから考えると、なんて幸せな言葉だったんだろう…みたいな感慨に浸ってしまいます。まぁ当然のようにそんな幸せはぶっ壊れる(むしろ悪化する)わけですが。それでも、その幸せが「存在しなかった」わけじゃない…というのが、ほんの少しの「救い」なのかもしれませんが…。
  • 順番もめちゃくちゃですし、まだまだ全然何も語っていないに等しいですが、今日はこの辺で…。最近Twitterとの兼ね合いもあって、このブログで「映画感想」をどういう風に続けていくか迷っていたところもあったんですが、読み手をあまり意識しないこれくらい適当な文章なら20分で2千字くらい書けてしまうので、今後しばらくはこんな感じのノリにしちゃおうかな…とうっすら思っているところ。また「レビュー」っぽく書きたくなったら軌道修正するかもしれませんが。Twitterよりもさらに適当でざっくばらんな、練らない感じのノリで書き散らしていこうかな。今日はおしまい。また何か考えたら書きます(描きます、かも)。