- 待ちくたびれていた『ジュラシック・ワールド』をやっと観ました。TOHOシネマズ日本橋、0円(6ポイント鑑賞)。まだ本格的な公開の前のようなので、あんまりネタバレなしで語りたいと思います。
- 結論から言えば、たいへん楽しかったです。全米公開の6月から散々待たされたこともあり、かなり期待度は上がっていたのですが、裏切られることはありませんでした。日本公開は8月7日の予定だったのですが、あまりに世界中でヒットしているもんだから、2日ほど繰り上げたとのこと。初日が水曜日の映画とは珍しいですね…。とはいえまだIMAXや4DXは解禁されてないし、本番は今週末からなのでしょうけど。
- あらすじはとてもシンプル。大人気の恐竜テーマパーク「ジュラシック・ワールド」で、新しい客寄せパンダとして超つよい恐竜を遺伝子組み替えで生み出したら、案の定そいつが暴走して惨劇が幕を開けたよ!というお話です。より端的に言えば、ニンジャならぬ「恐竜が出て殺す!」シンプルイズベスト!……あらすじとか不要でしたね。
- とはいえ今回、まず面白いと思わされたのは、作中でもテーマパークがオープンしてから20年が経過しているため、すでに劇中の来場者にとっても恐竜が目新しい見世物ではなくなっているという点。「今の子供達にとって恐竜なんて象みたいなもんだよ」というセリフに、その状況がよくあらわれています。
- いうまでもなく作中のパーク来場者は、私たちリアルの観客を暗喩しているんだと思います。我々現代人も、もはや映画で何を見せられたところであんまり驚けなくなってしまっていますし。そしてパーク内部で右往左往する関係者たちに、映画を含めた「エンタメ産業」の従業者たちを、どうしたって重ね合わせてしまいますね。「倫理的にどうなの?」というレベルの実験を重ねてまで、より過激でスリリングな「見世物」を作り出し、際限なく上昇していく観客の期待に応えようとする。作るものが恐竜だろうと映画だろうと、根本的には同じことです。
- しかしその果てしない刺激への渇望に対する、ある種の軽視や問題視が内外に生じている点が何やら示唆的ですね。パーク内部の職員にさえ、「恐竜って言ったって本物じゃなくて、遺伝子操作で作った紛いもんでしょ?」って若干なめられてる始末。そいつが「初代ジュラシック・パークはよかったな〜、全部ホンモノの恐竜でさ…」とか言って、「初代」のロゴTシャツ(激レア)を着てるのに笑いました。実際、「アニマトロニクス」という精巧な着ぐるみロボを動かす手法が重要視された初代(一作目)と違い、『ジュラシック・ワールド』の恐竜はほとんど全てCGなのですが、そのことに対するちょっとした皮肉(自虐?)にもなっている気がします。いわゆる「懐古厨」的な視点が全編を貫いているのが、本作の非常に興味深い点。よく言えば「初代」へのリスペクトにあふれているわけですね。
- …というようなメタっぽい含みをもって見ると、より本作を深く味わえるのでしょうが、まずはそんなことは全く気にせず、ただただ「恐竜が出て殺す!」という楽しい2時間を存分に味わえばいいと思います。娯楽大作としての完成度の高さは、間違いなくシリーズ屈指ですから。
- 監督はコリン・トレボロウ。多くの映画ファンが「誰…?」と思ったことでしょう。私も全く知りませんでした…。ネット配信映画の業界では有名な方のようですが、長編はこれが2作目ということで、大作の監督としてはほぼ「無名の新人」と言っていいのではないでしょうか。こういう人にこんな超メジャーな作品の監督をポンと任せられるという点に、アメリカ映画界の懐の広さを感じずにはいられませんね…。すごいぜスピルバーグ。すごいぜレジェンダリー。
- 監督は無名ですが、主演を務めるのは『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の主役スター・ロードを演じて、一躍大スターになったクリス・プラット。本来ならば『ジュラシック・ワールド』に有名俳優は使わない方針だったようですが、『ガーディアンズ』の公開よりも先に本作の出演が決まっていたため、仕方ないというか、嬉しい誤算というか。それにしてもクリスさん、2年連続で宇宙と恐竜の超大作の主役っていうのも壮絶なフィルモグラフィーですね…。次回作を『ジュラシック・ギャラクシー』にすれば色々まとまってお得なのでは(?)。
- さてこのクリス・プラット、今回はチャラい宇宙泥棒ではなくて、真面目でワイルドな恐竜飼育員・オーウェンを演じていました。このオーウェンとヴェロキラプトル4姉妹の「交流」が本作最大の見所のひとつです。交流といっても、甘ったるいものでは決してありません。子供の頃からずっと世話をしてきたラプトル4姉妹に対して、いくらオーウェンが愛着を抱いていようと、いかんせん相手は獰猛な恐竜なので、隙あらばオーウェンだって襲われかねません。現に本作の序盤にも、彼らの関係性にまつわるたいへんスリリングなシーンがありました。犬や猫や鳥やアライグマとは違い、「人と恐竜との間には絶対に越えられない溝がある」という線引きが本作ではキッチリとなされていて、そこが実にクールで素晴らしい。
- その線引きがあればこそ(予告でも使われていましたが)、バイクに乗ったオーウェンと一緒に、ヴェロキラプトル4姉妹が夜のジャングルを疾走する場面がものすごく燃える名シーンとして輝きを放つわけです。あれは文句なしにカッコイイ。作中でその様子をみた男の子が「か、かっけえ…」みたいな台詞を言ってましたが、完全に同意すぎて逆に笑えました。うん、これ以上に「男の子がカッコイイと思う絵面」ってそうはないよな。「男の子の夢ぜんぶ入り」だよな。だって夜の密林を恐竜を引き連れてバイクで走るんですよ。そりゃカッコよくなかったらおかしいですよ!(変なテンション)
- ただ、そこからは若干「王道の燃え」を外して意表をついてくる感じの展開になるんですけどね。「あ、そうくるか…」と思いました。観たときは正直ちょっと「え〜」って思いましたが、ラスボスの凶悪さと、例の「線引き」がさらに強化されたワケで、思い返すとなかなか上手い展開。そこからちゃんと「王道で燃える」ラストバトルに流れこむくだりも熱いですしね。
- そして「初代」へのリスペクト、ここに極まれり!という感じのクライマックスのガチバトル…!ネタバレはしませんが、あれはどうしたって盛り上がりますよ。「発煙筒」の使い方、そして闇から出てくる巨大な影…という流れもシリーズファンをニヤリとさせます。実に熱い!
- まあ、ラスボスの倒し方はちょっと予想通りすぎたかな〜という感じはしましたが。全体を通してたいへん綺麗で丁寧な脚本なんですけど、裏を返せば伏線やヒントが分かりやすいということでもあり。せっかくだし、もうひとひねり欲しかった気もします。そりゃ〜私としては「あの子」が活躍してくれるのは大歓迎なんですけどね。でも綺麗にまとまってスパッと終わったのはとても好印象。
- あ、けっこう長くなっちゃったのでいったんこの辺で…。あの夜のジャングルの場面とか非常にお絵描きしたいですし、その時にでもまた個別のシーンについて詳しく。ツッコミどころや弱点もなくはないですが、まずは王道の娯楽活劇として万人にお勧めできる名作でしょう。本作と『MI5』で夏の大作ラッシュはひと段落、という感じのようですが、いちばん楽しみにしてた「ジュラパ」最新作がちゃんと面白くて良かった…。待ちくたびれた甲斐は十分にありました。今日は恐竜の夢でも見ます。水族館も行ったからサメの夢でもいいけど。おやすみなさい。