沼の見える街

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『ラン・オールナイト』を語るナイト

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  • おととい鑑賞したリーアム・ニーソン主演『ラン・オールナイト』。賛否あるようだが、私はとても好きだった。そりゃあすごく深いとか、芸術性が高いとかそういう映画ではないけども。夜、家に帰る前に映画館にふらりと立ち寄って、たまたまこれに当たったらとても嬉しい、みたいな良作でしたよ。幸せな気持ちになります。人はいっぱい死ぬけど。
  • パンフレットを読んで知ったのだが、冷徹な殺し屋プライス(右下)を演じた「コモン」という役者さん、ヒップホップ界隈ではものすごく有名な歌手だったのですね。もうすぐ公開の、キング牧師を主人公にした『グローリー』という映画の主題歌を歌って、アカデミー最優秀歌曲賞を取っている。ず、ずいぶん立派な人に極悪非道の殺し屋を演じさせたんだな…。このコモンさんも『8Mile』のエミネムみたいに、いつか自伝っぽい映画をやるのかもしれないですね。
  • しかし『イコライザー』でも思ったけど、アメリカの大都市を舞台にした映画で、夜のカフェテリアでなんか飲んだり食べたりするシーンが出てくると、否応なしにテンションが上がってくる…。エドワード・ホッパーという画家が描いた『ナイト・ホークス』という絵みたいな雰囲気の安っぽいカフェ。『イコライザー』のデンゼルがお茶してるシーンは、まさにその絵を参照したそうな。いいよな〜アレ。
  • 日本にはないもんなあ、あんな感じの夜でもやってる、窓が大きいカフェ兼バーみたいな施設…。似たようなのはあっても高級な感じで、気軽には入れないし。夜更けにひとりぼっちでうらぶれた顔つきで、やっすい紅茶とケーキを味わいながら文庫本を読んだりしたいぜ。そしてクロエ・グレース・モレッツと仲良しになりたいぜ。
  • まあ『ラン・オールナイト』では、カフェで主人公に寄ってくるのはクロエちゃんではなく刑事のおっさんなんだけど。しかも話題も『老人と海』についての微笑ましい文学談義とかではなく、「よう人殺し!元気かい?17人も殺したくせにマフィアの後ろ盾のおかげで裁かれもせず、のうのうと暮らしていられる気分はどうだ?」とかで、わりと殺伐としている。同じ「元・殺人マシーン」のお茶タイムなのにエライ待遇の違いだな、と思いました。
  • ま、本作のリーアムは戦闘力という点では『イコライザー』のデンゼルおじさんには及ばないようで(あの人と比べるのも酷だが)、けっこう泥臭い戦いがメイン。
  • とくに駅の公衆トイレでの一対一の戦いの「美しくなさ」たるや…。勝ったは勝ったけどなんか汚水にまみれてるし、臭そう。その直後に電車とか乗らないでほしいですね…。でもそういう「汚れた勝ち姿」が、主人公のダーティな人生を象徴しているのでしょう。そんな「美しくなさ」、泥臭さこそが本作のリーアムの魅力。
  • まあそうは言ってもリーアム・ニーソンなので、強いといえばめちゃくちゃ強い。とくに息子を連れ去ろうとするパトカーをものすごい勢いで追跡するシーンは大迫力だった。街中を逃げ惑うパトカーにめちゃくちゃに体当たりをぶちかまし、最後には横転させて窓ガラスにつっこませる。「一緒に乗ってる息子も死ぬのでは…」と心配になるくらいの恐ろしい剣幕で、最近のリーアムが得意とする「きのくるったおとうさん」キャラが全開の見事な場面だった。ていうか主人公サイドが怖いカーチェイスって珍しいな。
  • あとはやっぱり『許されざる者』みたいなクライマックスも、どうしたって燃えますよね。「おれは今から一線を越える」って言ったその直後に本当に「越えて」くるっていうテンポ感もすごくいい。ふつう一拍おいて、覚悟を決めたり準備をしたりっていうシーンをはさむだろうに。あの「早さ」、シンプルながらも意表を突かれた。エド・ハリスじゃなくても「もうくるのかよ!?」ってなるよな、そりゃ…。「はやっ!こわっ!」て。
  • あ、もうすぐ日付が変わる…。監督(あの名作ホラー『エスター』の人なんですね)の過去作などとからめてもっと語りたいのですが、いったんこの辺で。こういう映画がたまに見られたら、ホント幸せです。