沼の見える街

ぬまがさワタリのブログです。すてきな生きもの&映画とかカルチャー。

『チャッピー』&『ラン・オールナイト』みた

  • 映画『チャッピー』と『ラン・オールナイト』、ハシゴしてきました。TOHOシネマズ日本橋、どっちも1100円。
  • まず『チャッピー』。一言で言っちゃえば、「愛すべきバカ映画」でした。間違っても、予告やポスターから何とな〜くイメージされるような、「真の人工知能が実現した時、人類がとるべき選択とは?」みたいな、壮大かつ深遠なテーマの作品ではないと思います。むしろもうすぐ公開の『アベンジャーズAoU』がその主題に近いのかな。近年の映画だと、『her』のかしこくてえろいAIも印象的でしたね。(スカヨハばっかりだな。)
  • 『チャッピー』も、そういう哲学的な命題みたいな方向に行くかと思ったんですけどね〜…。その実態は、みんなでドリトス食べながら鑑賞するのが正しいような、まごうことなきボンクラムービーでしたというべきか。久々にみたよ、こんな突っ込みどころだらけの映画…。ま、そこを「愛嬌」と思えれば、普通に楽しい娯楽作品じゃないでしょうか。
  • ただ正直、たとえば同監督の『第9地区』における人種問題みたいな、もうちょっと普遍的で深みのある物語を期待していたんだよな…。軽妙なタッチは美点だったけど、一方でそれが浅さや安っぽさに感じられてしまう部分もあり、イマイチ乗りきれなかったりして。まあでも、突っ込みどころも含めて愛すべき作品だと思うので、また後日くわしく。まだ私の気づいてない深い読み方があるのかもしれないし。
  • でですね!『チャッピー』のついでにもう一本くらいみるか、程度のノリで観た『ラン・オールナイト』なんですが…。結論から言えばスンゲエ好きな映画でした。悔しいけれど。
  • 悔しいというのは、正直めちゃくちゃ舐めていたので。というかザッと内容を聞いた限りでは期待する要素が一切なかったので…。
  • だって元凄腕のリーアム・ニーソンが家族のために人を殺しまくる映画ですよ?…またかよ。またかよ!!『96時間』シリーズであんだけ殺しといてまだ殺したりないのかよ!!誰でもそう思うでしょ!もはやシンドラーの面影これっぽっちもないよ…。何ドラーズ・リストなんだよ。本作に至っては救う人のリストどころか、殺した人のリストが重要アイテムになっちゃってるじゃねーかよ…!
  • もうだから、この映画を企画した人、いい度胸してますよねホント。全世界から「またかよ!」って言われるに決まってるのに。ただまあ、来週のタマフルの課題映画になってるし、ちょうど『チャッピー』の直後にやってたし、ついでに見とくか、みたいな態度で私は見ました。「ウタマルさんもこんな地雷臭ただよう映画じゃなくて、さっさと『百日紅』とかを論じてくれりゃいいのに…」とか、「今日の記事では『チャッピー』にどんな突っ込みを入れようかな」とか余計なことを考えつつ見始めました。
  • そしたらもう、びっくりですよ。こんなに良い映画だとは思っていませんでした。期待値を下げていたからというのではなくて、実際に映画としての総合的なクオリティが高い。地味な小品だけどよくできていて、誰が見ても「ふつうに」おもしろく楽しめるはず。去年でいう『イコライザー』枠という言い方で、伝わる人には伝わるかもしれません。
  • この映画、何がおそろしいって、ほんっとうに何一つとして、「目新しい」要素が一個もないんですよ。ざっとあらすじを説明すると、元殺し屋の主人公が、今は罪悪感に押しつぶされて冴えない暮らしをしている。たったひとりの愛する息子には、死ぬほど嫌われているのだが、あるとき息子が恐ろしいトラブルに巻き込まれてしまう。主人公は息子を救えるのか?親子のひと晩の逃亡(ラン・オールナイト)、そして戦いが始まる…!というお話。
  • 見ればわかるんだけど、登場人物のひとりひとり、展開のひとつひとつとってみても、「どこかでみたなあコレ…」というものばかり。物語を組み上げる一つ一つのパーツは凡庸も凡庸。にもかかわらず、渋くてカッコよくて面白いという点が本作のすごいところ。
  • そもそもリーアム・ニーソンにこういう役をやらせる、という点ですでに「新しさ」はゼロのはず。(その点では、あのデンゼル・ワシントンに殺戮マシンの役をやらせた『イコライザー』はすごく新しかったんだな、と思う。)それなのに、どうしてこんなに本作にはフレッシュさを感じられるのか。
  • なんというべきか、目先の「新しさ」だけが映画の面白さじゃないんだな、と思い知らされて、元気が出てくる。「ベタ」をひたすらブラッシュアップすると、輝きを放つのだなあと実感した。『百日紅』とは違った意味で、『ラン・オールナイト』、見ている間ずっと幸せで、ついにこにこしてしまいました。いや、物語的にはわりと悲惨な話なので、誤った鑑賞態度なのかもしれませんが…。
  • いったんここまでにしとこう。イラストも描くので、そのときにでもまた。いやはや、掘り出し物でした。なめてちゃいかんですね、何事も…。