- 映画『海街diary』鑑賞しました。TOHOシネマズ日本橋、1100円。結論から言えば、めちゃくちゃ良かったです。少なくとも今年前半の映画では二本の指に入りますね(『百日紅』と迷う)。
- 吉田秋生の原作漫画『海街diary』は、鎌倉に住んでいる3姉妹が、ひょんなことから腹違いの妹と一緒に暮らし始めるというお話。とくに凄い事件とかは起こらないけれど、人々の感情の揺れ動きや、なんてことない生活の様子の描写が本当にていねいな作品です。優しく軽妙なタッチにもかかわらず、時として大きな「波」のような感情がグワッと迫ってくる、恐るべき漫画であります。
- そんな凄い原作を、あの是枝裕和が映画化するということで、そりゃあ「見るしかない枠」ですよね。原恵一の『百日紅』と同じく、まず外さないだろうとは思ってはいましたが…いや〜。期待以上の完成度の高さに驚きですよ。個人的には『そして父になる』よりも断然こっちが好きですね。
- どこから語るべきかわかりませんが、まずは何といっても役者が全員すばらしいです。豪華なのは言うまでもないけど、「そうきたか」みたいな驚きもあるキャスティングで、絶妙でした。
- まず真面目で責任感の強い長女・幸(さち)に、綾瀬はるか。最初は正直「え〜…?」と思いましたよ、「いくらなんでも美人すぎるだろ」と。たしかに幸は美人設定だけど、それにしたって綾瀬はるかッスか…!?と。
- しかし、それも杞憂でした。内に色々抱え込みまくった不遇ストイック美人っぷりが最高でしたよ。「すごく美人だけど、だからってそこまで得とかしてないんだろうな…」という、幸の幸薄い感じがバッチリ出ていました。綾瀬はるかなのにね…。いや、さすがとしか言いようがないです。
- そして、チャラいけど気のいい次女の佳乃(よしの)に、長澤まさみ。(まだ二人しか挙げてないのにすでに豪華すぎますね…。)彼女も相当「まさか」な配役なんでしょうが、これまた巧い。超有名かつ華やかな女優さんにもかかわらず、本作ではちょっと抑えて裏から支えてる雰囲気もあったりして、実にいい仕事をされてました。綾瀬はるかとの絡みもたっぷり用意されており、ファンにはたまらないことでしょう。今頃pixivでは「はるまさ」タグが(略)
- 個人的にイチオシなのが、三女の千佳を演じた夏帆さん。この人、初めて見たけどすごく良かった…!他の三人のいわゆる直球な「美人さ」とは少し異なる、まさに映画的いうべき魅力的な顔立ち。この人がいるといないとではもう、映画自体がぜんっぜん違ってたと思いますね。抜擢は大正解でしょう。のんきなムードメーカーの千佳を軽やかに演じきっていました。なんかのきっかけで大ブレイクしそうな、今後が楽しみな女優さんですね。
- そして何と言ってもMVPは「四女」すず役の、広瀬すずさんですね(役名と名前が同じ!)。もう…超かわいかったです。生きているだけでかわいいですね。容姿も声も動作も一挙一動がかわいくて、人が死んでもおかしくないレベル。もはやストーリーとか追わなくても、彼女をスクリーンで観るためだけにお金を払っても全然損しないと思いますよ。べらぼうにかわいいです。死にます。
- とはいえ、かわいいだけの女優さんではありません。誰がどうみても超かわいいのに、しかしその一方で、ひしひしと伝わって来る「自己評価の低さ」。特に序盤。愛されて当たり前だなんて決して思うことができない、すずという少女が根っこに抱えている「諦念」を見事に体現していましたね。
- しかしその「諦念」が、姉妹や街の人々とのかかわりのなかで、徐々に変わっていく様子が感動的です。たとえば本作のひとつのクライマックスとなる、桜並木のトンネルの下を、すずが友達の自転車にのせられてくぐる場面。すずの幸福感にあふれた笑顔が大写しになり、そのあまりの美しさに拝みたくなりました。というかあんなド直球な「幸福」の描写を久しぶりに見た気がします。「これが幸せというものだよキミたち」というボールを照れずにまっすぐ投げてくる是枝監督、かっこいいデス。
- いわゆる「泣かせ」の演出は(是枝監督らしく)ほぼ無いのですが、「なんてことのない情景がさざ波のように胸を打つ」という原作のスピリットを、見事に引き継いだ傑作だと思います。超オススメ。原作漫画もぜひお試しくださいませ。
- まだまだ全く語り足りないのですが、今日は絵も描いちゃったので一旦このへんで。それにしてもこのところ邦画が熱い。上半期のベスト3、ぜんぶ邦画かも…嬉しいことです。こっから怒涛の洋画大作ラッシュが来るので、そっちも楽しみですけどね。特に『インサイド・ヘッド』とか。ではまた。