沼の見える街

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三菱一号美術館「アール・デコとモード」感想

三菱一号美術館「アール・デコとモード」に行った。

mimt.jp普段は足が遠のき気味な服飾系の展示だが、美術同様(なんならもっとビビッドに)時代の移り変わりを映し出すのが服であり、好奇心を刺激された。
第一次世界大戦が終わり、1920年代のフランスで開花した都市の消費文化が築いた装飾様式、人呼んで「アール・デコ」。世の中の変化によって生まれた女性の新たなライフスタイルが「モード」を変えていくのだった。コルセットを廃したポワレの円筒形ドレス(1911)は端緒のひとつ。

アール・デコという装飾様式は、1925年にパリで開催された「アール・デコ博覧会」の名前が由来。ちょうど100周年を機に開かれた展示だと思うが、服飾という超絶うつろいまくりであろう業界で、100年後も一般人が名前くらいは知っている(そして形を変えつつもいまだに現役でもある)スタイルを生み出せるというのは凄いことだ。解説に「今日のモードの礎となっている」とあるので、印象派やキュビズムくらい凄いのだろう。
女性が格段に活動的になった、という社会変革は服にモロに現れ、シルエットは簡潔になり、小物や道具の携帯化も進んだ。ドレスも時間/場所/目的などで細分化されたのが特徴。

キャロ姉妹のイヴニング・ドレス(1922)↓

アール・デコ展、時代の直前を映す鏡としてトゥールーズ=ロートレックの絵画もあった。

ロートレックが共感とともに描いた、パリの娼館で働く女性たち。「コルセットの女一束の間の征服」(1896)では娼婦がコルセットの紐を扱う。「現実的な肉体を整形する、コルセットの矯正下着としての機能が見て取れる」と解説。

コルセットからの解放がアール・デコの起爆剤となったと考えると、アートであると同時に身につける実用品でもある服が、現実を映しとる美術よりも社会の変化を鋭く反映し、強く文化を先導する、というのはむしろ自然にも思えてくる。

そしてアール・デコ展の動物好き的な収穫、フランソワ・ポンポン(なんてかわいい名前だ)の動物彫刻。

アール・デコの時代を生きた彫刻家、フランソワ・ポンポン。
かつてロダンにも師事していたが、彫刻家サン=マルソーの助手となってノルマンディーの田舎で過ごすうち、動物モチーフの彫刻をたくさん作るようになる。
1922年、実物大の彫刻《シロクマ》をサロンで発表すると、大きな注目を集め、革新的な動物彫刻家として称賛された(当時67歳)。1933年に没するまでに約170種の動物彫刻を作ったという。

シロクマの翌年《バン》も発表。すらりとした流線型の体に、不釣り合いなまでの大きな足…という不思議なバランスが、彫刻家にとってグッとくる造形というのは、なんかわかる気がする。いいよね、バン(オオバンもつくってほしかった)

 

群馬県立館林美術館
「フランソワ・ポンポンについて」

gmat.pref.gunma.jp

「ポンポンは野外で逆光に照らされた動物の輪郭線の美しさを見出し、古代エジプトの平面的で単純化された浮彫彫刻にも影響を受けて、簡潔で流麗なシルエットによる動物彫刻を生み出しました。」

簡潔さとシルエットの重視という点で、ポンポンの動物彫刻はアール・デコの服飾と相通じる特徴をもつ。
動物の形に美を見出したポンポンの作品が、アール・デコの世界観を形作る重要ピースになったと考えると、(美術と動物が切り離せないように)服飾の歴史と動物もまた切り離せないのかもしれない。

 

余談だが、三菱一号美術館、アール・デコと一緒にフェリックス・ヴァロットン(1865-1925)の木版画展もやってて、めちゃよかった。

「愛書家」(1911)

画面の上半分の黒の使い方がすごく大胆で惹かれる。全部そうだがこの絵は特に。三角のライトとか色としては単に真っ黒に塗りつぶされてるだけなんだけどしっかり三角が目に浮かぶので凄い。本棚が上にいくに従って本の線が少なくなっていくのも洒脱。

 

「暗殺」(1893)

場面で起きていることはショッキングなのに木版画ならではの淡々とした静けさに満ちていて、それがかえって音のない舞台のように不気味なドラマチックさを生んでいる。

<アンティミテ>という室内シリーズ。見逃さないでね