沼の見える街

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映画オタクやりたい邦題!『ミニオンズ&モンスターズ』感想

『ミニオンズ&モンスターズ』ちょっと予想の斜め上で面白かったので感想メモ。

「ミニオンズ」シリーズは劇場に行ったり行かなかったり、という塩梅のファンなのだが(行けばやっぱクオリティは間違いなく高いし面白い)、今回も「行けたら行くわ」くらいのテンションだったが、映画ファンが何やら騒いでいる気配を感じ、行ってみたら確かに「うお〜なるほど〜〜〜」って感じでテンション上がった。

今回は公式には「ミニオンズ」シリーズの7作目という位置付けのようだ。本当に初出の「怪盗グルーの月泥棒」から、「怪盗グルー」のナンバリングと「ミニオンズ」スピンオフあわせて7作目…ということだが、「怪盗グルー」シリーズでも実質主役やんけみたいな立ち位置になってるので、若干わやわやな区分だ。

今更言うまでもないが、「映画は観てないがキャラクターだけは知ってる」という意味での知名度なら世界屈指の有名キャラであるし、映画本編もたとえば「怪盗グルーのミニオン大脱走」(2017)なんかは世界興収10億ドル超えの超絶大ヒットである。

そんな超絶大人気を後ろ盾に、もはや「ミニオンさえ出てれば何やったってヒットするんだから何やったっていいでしょ?」と開き直ったかのような作品が今回の『ミニオンズ&モンスターズ』である。一言で言えば、思いっきり映画ファンに向けられた「映画アニメ映画」となっていた。それもハリウッド黎明期のクラシックな映画ネタに喝采を送るタイプの面倒な…じゃなくてコアな映画ファンに向けられたアニメだ。

目についた映画オタク歓喜ネタ(あくまで私が気づいた範囲なので一部だが)をいくつか箇条書きにしてみよう。

 

〜ネタバレは一応気をつけるが必然的に多少は含むので注意〜

 

・冒頭に出るユニバーサル・ピクチャーズのロゴが、どんどん時代を遡っていき、ついに最初期に至る。これ自体は「スパイダーバース」とかでもやってた王道ネタだが、こうしてみるとかなり変遷が大きくて面白い。

The Universal Pictures Logo History, Colors, Font, And Meaning

・その後に挟まれる、1930年代初期くらいの白黒アニメ調ミニオンズも地味に重要だ。
この時期のワーナー・ブラザーズのアニメとしては「ルーニー・テューンズ」が有名だが、むしろ姉妹シリーズの「メリー・メロディーズ」を意識したっぽい。

「A Great Big Bunch of You」(1932)っぽいバイブスを感じた↓

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もう100年前のアニメスタイルだが、ゲームの「Cuphead」なんかも大人気だし、全然現役で生き残ってるアニメーションと言わざるをえないのは改めて考えるとスゴイね…。やっぱ「時代の徒花」では片付けられない、表現形式の普遍的な魅力ってのはあるんだろうなと思う。

・そして「アニメーションの歴史」という観点から見逃せない引用が直後にもうひとつ。エドワード・マイブリッジの「動く馬」シリーズである。ja.wikipedia.org

1878年に撮影された馬の連続写真セットで、本来は科学的研究のために記録されたのだが、写真の連なりで動きを表現する営み、つまり「映画」の原初とも言われる、たいへん重要な記録写真だ。

「NOPE/ノープ」でも鍵を握る存在になりましたね(こちらの記事参照↓)

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「映画の始まり」であり「アニメーションの始まり」でもあるという背景から、意外と現代のフィクションにも頻出するモチーフなので、もし知らなければこの機会に覚えておくと楽しいだろう。

しかしなんつっても「ミニオンズ」だけあって、歴史のお勉強では終わらず、ミニオンたちがこの「動く馬」に急に割り込んできたり、他にも色々登場する歴史的な連続写真の登場人物にちょっかいを出して台無しにしたりするシークエンスが最高に楽しく、映画ファン的には爆笑&垂涎ものといえよう。

初期映画ネタもたくさんあって、最も有名なのは「ラ・シオタ駅への列車の到着」(1896年)。スコセッシも「ヒューゴの不思議な発明」でド派手にオマージュしてましたね。

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同じくらい有名なメリエス『月世界旅行』(1902年)。なぜか顔がある月面にロケットがブッ刺さる絵面が悪夢のように強烈で、いまだに初期映画の顔ともいえる作品となっている。ミニオン版はもうちょっとマイルドになっていた…かな…?

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ミニオンたちの物語が本格的に始まる前の、映画ミュージアムの冒頭シーンからもう映画ネタが満載(監禁されてるジョージ・ルーカスとか声出して笑ってしまった)で、いちいちあげていけばキリがない。だが本作『ミニオンズ&モンスターズ』の白眉としてあげたい名シーンはやはり、ミニオンたちがロサンゼルスの街(劇中ではハリウッドタウンという名前らしいが)に突撃していく列車シークエンスだろう。 

このシーンの凄いところは、単にクラシック映画のネタを散りばめただけでなく、それらを「列車アクション」というひと繋がりのシークエンスに美しく織り込んでいくことだ。

とりわけサイレント時代に活躍した「三大喜劇王」と称される、チャールズ・チャップリン、バスター・キートン、ハロルド・ロイドの名アクションを立て続けに引用し、観客が「あっ、あの映画のあのシーン!」と笑う間さえほとんど与えず、まさに暴走列車のごとく突っ走っていく。

 

ハロルド・ロイドの、時計に掴まるスタントが有名な映画『要心無用』(1923年)。

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100年後の今みてもロープが伸びすぎちゃうシーンで「あっ!!」と声出そうになる。

 

バスター・キートン「キートンの蒸気船」(1928年)のあまりに有名なスタント「崩れ落ちる壁」。パロディにされた回数では「AKIRA」のバイクに匹敵するかもしれない。一歩も動いてないが、文字通り一歩(というか十数cm)間違えれば死ぬであろうスタントだということは一目でわかる。

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この動画↑では「崩れ落ちる壁」の直後に映る「キートンの大列車追跡」(1926)の列車シーンのミニオン版もありましたね。

 

そして映画ファンには説明不要であろう、チャップリンの「モダン・タイムス」(1936)のただでさえ大変な工場のシーンにも、ミニオンが突如乱入してもっと大変なことに。

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これらの「三大喜劇王」がミニオンたちの暴走を通じてアベンジャーズさながらに奇跡の大集合というわけだから、そりゃアツいシーンにもなろうというものだ。ここでサイレント時代を飾る喜劇王たちにフィーチャーしてるのも、ただの懐古趣味やスノビズムではなく、ミニオンたちが現代のアニメ版「喜劇王」としての役割(それもチャップリンたちと同じく喋らない)を務めていることを考えると、自らの歴史に改めて目を向けるという点で、実はシリーズ屈指の重要なシーンになったんじゃないだろうか。それにふさわしい、徹底して作り込まれた名場面だったと思う。

そんな本作、過去を振り返って(主に白人男性に光が当たりやすい)映画界のかつての栄光に浸るだけじゃないのも素晴らしいところ。物語が進むにつれて、女性参政権運動/サフラジェットにさらりと触れてみせたりもする。わけもわからず…ではあるものの、ミニオンたちが女性の行進に連なったりもするシーンは拍手であった。なんだかんだ、こういうとこの意識の持ち方は(恐縮ながら本邦の主流アニメと比較しても)アニメーションの作り手として格が違うよな…と感嘆させられる。

サフラジェットの活動を描いた映画「未来を花束にして」も前に紹介マンガ描いた↓ので、興味あれば映画みてね

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公開時から散々言われてたように邦題はちょっとダサいのだが…(原題はシンプルに「サフラジェット」)。内容は良いよ

未来を花束にして(字幕版)

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  • キャリー・マリガン
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そんなわけで『ミニオンズ&モンスターズ』、このように(少なくとも世界全体で愛される子ども向けアニメとしては)信じがたいほど知的で重層的なが際立っていた作品では確実にあった…のだが、まぁとはいえ「ミニオンズ」シリーズなので、終盤にいくにつれて、わりといつものドタバタした感じになっていくのは否めないが、エンドロール前の文字通りメタなオチ(これはぜひ劇場で味わってね)が素敵だったので特に文句はない。

全体としては相当に満足高かったし、やっぱ海外の子ども向けアニメは本当に侮れないなとつくづく思った。この夏、映画オタクに一番オススメしやすい映画がまさかミニオンズとは…。

もっと「こんなネタが…」とかいくらでも早口で語れるはずだが、クラシック映画に詳しい人はいくらでもいるし、短めに収めたいのでこのへんにしとこう。

英語だけどこのイースターエッグ解説記事↓も参考になりました。

www.goodhousekeeping.com

 

ちょうど映画をみる前日、AppleTVのドラマ「シュガー」シーズン2で、シュガーが「As Time Goes By」をピアノマンに弾いてもらう回を見たばかりだったのだが、まさか翌日に「ミニオンズ」新作で全く同じオマージュを見ることになるとは…。

youtu.be

まぁ一応「カサブランカ」くらいは一回見ておくと人生なにかと楽しいよってことね

 

おわり