沼の見える街

ぬまがさワタリのブログです。すてきな生きもの&映画とかカルチャー。

今週の気候ニュース:観測史上初「真夏の震度7」の脅威

今週の気候ニュースも世界的には色々あったが、今回はひとつに絞らせてもらおう。

news.web.nhk

7月28日に熊本県で震度7の地震が発生した。

日本が「震度7」の指標を取り入れて以降、8度めの「震度7の大地震」となる。

震度7 - Wikipedia

そのひとつが10年前の熊本地震であり、今回で2回目となった。すでに38人の方が亡くなっているという報告がある。(ちなみに2016年の熊本地震は277人(直接/間接)の方が亡くなっている。)

今回の地震で最も目を引いたのは、やはりイオンモール熊本の爆発事故だろう。

news.web.nhk

個人的にも地元のイオンモールにはよく足を運ぶし、地域によってはそれなりに重要な公的インフラに足を突っ込みつつある、という商業施設なので、この爆発事故が熊本の皆さんに与えた衝撃はイメージしやすい。(モールの規模にもよるが)むしろ災害があった時に避難場所として機能しうるような空間でもあるので、大地震で真っ先にここが被害を受けたというのは、心理的にもなかなかシビアだと思う。

一方で、10年前の熊本地震の経験も決して無駄だったわけではなく、前回の地震では約8千棟が全壊した(半壊なども含めると約20万棟超の被害)のだが、その後の修復で耐震性がアップしたことで、今回は比較的、建築物などの被害が抑えれらたという。これはせめてもの良いニュースと言えそうだ。

ただし、7/28の災害発生当初から、個人的に最も懸念していたのは、地震の衝撃によるダメージそのものではない。暑さである。

歴史をみても、日本で初めて「夏に発生した震度7」の大地震ということになる。そしてご存知、気候変動によって、夏の猛暑は激化している。今年はさらにエルニーニョ現象まで加わり、文字通り「酷暑」が予想される。今回の熊本地震の避難生活は、これまでのどの地震よりも過酷なものになりうるかもしれない。

実際、明日8/3の熊本県は41度を超えるという予報が出ている。

tenki.jp

こちらの記事では、都市防災研究者の中林教授が「複合災害」として対処しなければ、と呼びかけている。

digital.asahi.com

「体温を超えるような猛暑は熱波災害であり、その意味ではすでに複合災害になっているのです。そこに地震で広域停電です。飲み水に加え、多くの避難者がいる避難所を中心に電源車などを配備し、クーラーを使えるようにすると同時に、小規模な施設にはプッシュ型の支援で発電機やポータブルクーラーを用意し、県が市町村の状況を把握し、公平に被災地域に直接送れる態勢を整えてほしい」

 「台風などによる風雨災害も懸念しています。8~9月は台風が多く発生する時期です。いつ雨が降ってもおかしくない。瓦屋根の住宅も多く、地震後は雨漏りの可能性があります。無傷に見える住宅でも地震で瓦がずれていて、雨漏りする家が少なくないのです。せっかく地震の被害を免れた家財が雨にぬれて使えなくなれば、被災者にとって生活への影響は甚大です」

そう、猛暑をなんとか切り抜けた後には、高い確率で台風が襲来する。地震が単体で来てくれればまだ良いのだが、猛暑も台風も気候変動によって激化・頻発化していることを踏まえれば、ほとんどの地震が別の災害と一緒に起こる、くらいの想定をしておくべきだろう。

こちらは元消防士の防災アドバイザーが、地震と猛暑の「複合災害」が起きた時のヤバさを想定し、起こりうる過酷な事象をまとめた動画。

www.youtube.com

ほぼ丸ごと引用で恐縮だが、言われて初めて気づくものもあったので、箇条書き的に列挙しておこう。

・タワマン/ビルがサウナになってしまう
・エレベーターが灼熱の檻と化す
・広域避難所を直射日光が襲う
・応急救護所が地獄化
・暑すぎて車中泊ができない
・避難所で行列が作れない
・食料が爆速で腐る
・職場に留まるも地獄、徒歩帰宅も地獄
・飲水が圧倒的に不足し、脱水症状が続出
・日陰に人が集まる→倒壊リスクの増大
・乳幼児のあせも問題
・在宅避難者の冷蔵庫と生ゴミ問題
・熱ストレスで助け合い精神が低下する?

このうち「暑すぎて車中泊ができない」に関しては、実際すでに先ほど、車中避難の女性が亡くなったというニュースもあった。

digital.asahi.com

「避難所で行列が作れない」「食料が爆速で腐る」「生ゴミ問題」あたりも、いざ猛暑との複合災害に直面してみないと、意外と気づきにくいポイントだろう。

熊本に限った話ではないが、避難所となることが多い体育館に冷房が少ないことも指摘されている。

www.nikkei.com

最大震度7を観測した熊本県に開設された避難所は小中学校が少なくない。避難先となる体育館の冷房設置率は2割にとどまる。30日の被災地は最高気温35度以上の猛暑日となったところもあり、今後も厳しい暑さの中での避難生活が予想される。熱中症への対応が急務となる。

これから猛暑や台風を経て、熊本の被災者は過酷な状態におかれそうで心配になるが、適切な支援はもちろん、日本初の「夏の震度7」の被災地/被災者として、どんなことが不便だったり過酷だったりしたか、よく話を聞いておく必要がある。

 

そして「今週の気候ニュース」的にも言っておかないといけないが、やはり気候変動そのものも、場当たり的に「対処」するだけではなく、根本的に「解決」しなければいけない。

numagasablog.com

ヨーロッパが一足早く熱波に襲われた時、「エアコン使えばいいだろ」とか嘲笑していた人がアメリカや日本にもいたが、「えっと、逆になんで常にエアコンが使える前提なので…?」と聴きたくなる。

特に日本なんか(今回のような)災害による停電で、エアコンどころか電気すら使えない状況なんかいくらでもあるんだから、電気による冷却に全ベットするような態度は能天気としか言えないだろう。

地震+猛暑や、台風+猛暑のような複合災害を前提にすれば、建築やメディアやコミュニケーションや社会システムなど、あらゆる方面からの適応策が必要だし、同時に地球温暖化を食い止めるための「緩和策」もサボるわけにいかない。

前にSNSでこんな話をした。

私が最も懸念している「エコーチェンバー」は(SNSがどうこうではなく)肉体的・物理的なものである。あくまで個人としては、なんだかんだ夏でも自宅に引きこもった生活を送れてしまうことによって、「まぁいうて、気温がヤバくてもなんとかなるっちゃなるかな…?」などと体感的に思い込んでしまうことを危惧している。 このまえ猛暑の日中にたまたま外出して、工事中の建築でエアコンもない状態でおっちゃんがグッタリしながら作業してるのを見て、「あっこれはやっぱ絶対このままではあかんぞ」と改めて思えたので、時々はエコーチェンバーから外に出ねばならない(物理)

ぬまがさワタリ@『いきものニュース図解』ほか3/19同時発売 (@numagasa.bsky.social) 2025-07-09T09:25:49.970Z

bsky.app

私が勝手に「物理的なエコーチェンバー」と呼んでいるが、普段は意識しない境界のようなものがあると思う。それはどのSNSやサービスを使うか…みたいな、俗に言うエコーチェンバーよりもずっと重大なものだと感じる。私たちは物理的・肉体的な意味でも(意味でこそ?)分断されており、それが判断力や優先順位を鈍らせる。

地震のような災害は一時的に多くの人を「物理的なエコーチェンバー」から引きずり出すことになるが、災害時に社会が初めてその存在に気づいて慌てているようだと、多くの人が苦しんだり、命を落としたりすることになってしまう。

「地球温暖化なんて騒ぐことない、エアコン使えばいいだけだろ」なんていう冷笑(エアコンだけに…?)は、まさに物理的なエコーチェンバーに閉じこもった迂闊な考え方だ。屋外の気温が40度を超えるような日というのは、要するに災害で電気が止まったら大勢の人が死ぬかもしれないということだ。そんな日が年に数日あるというだけでも、社会全体にとってすでに大きなリスクなのである。

というわけで、大きな地震があるとなおさら、気候変動の問題に向き合うことの大切さを実感する。災害大国にすむ私たちはなおさら、化石燃料への依存から脱却し、温室効果ガスの排出を減らし、地球の気温の上昇を食い止めなければいけない。今後もできる範囲で発信していきたい。

 

…と同時に、今リアルタイムで困っている人の助けになることも忘れてはいけない。

観測史上初の「真夏の震度7」=地震と猛暑の複合災害となり、熊本/九州の皆さんが心配だ 金のいいところは緊急時に送っても邪魔にならないところ…てなわけでとりあえず少額寄付 緊急支援|令和8年熊本地震被害へのご支援を(ピースウィンズ・ジャパン) - Yahoo!ネット募金 donation.yahoo.co.jp/detail/92510...

ぬまがさワタリ@『いきものニュース図解』ほか3/19同時発売 (@numagasa.bsky.social) 2026-07-29T03:28:04.844Z

bsky.app

お金のいいところは、緊急時も邪魔にならないし、暑くても腐らないところだ。

donation.yahoo.co.jp

熊本の皆さんの無事を願っています。