ゲーム『ポケットモンスター スカーレット』をクリアした。生きもの好きの視点からTwitterでもけっこう「このポケモンの元ネタはこれだろ!」的なコメントをしてきたし、普段なら「わくわく動物ゲームとして楽しむポケモンSV」的なブログ記事を書く流れなのだが、このたび文春オンラインさんでまさにそういう内容の記事を書かせてもらったので、ぜひこちらを読んでほしい。
…というわけでもう書くことは特にない(?)のだが、生きもの好き視点"以外"でもけっこう印象深いゲームではあったので、『ポケットモンスター スカーレット』クリア後の雑感をつらつら書き連ねておきたい。ネタバレとかはそんな気にしないので未クリアの人は一応注意。ちなみにスカーレットを選んだ(博士のキャラデザが好みだったため…)。
【バード・オブ・ザ・リング 旅の仲間】
記事にも書いたように、鳥を中心にパーティを組む「とりつかい」プレイを…少なくとも途中までやっていた。お気に入りのメンバーを紹介するぜ。
・クワッス(命名:クワぴちゃ)
記念すべき御三家初のカモだし(デザイン面ではホゲータに惹かれつつも)カモ好きとしては一択であった。進化後のウェルカモは初見では正直「う〜ん」となったが、ぶっちゃけ御三家の2段階目ってわりとそんな感じよね。練られまくっている初期形態と最終形態に比べて、2段階目はこう良くも悪くも…ユルめ。今回の御三家も、初期形態と最終形態は明らかに「プロの仕事だな」という、ファンメイドの御三家ポケモンと一線を画した完成度と意外性があるのだが、2段階目だけはファンメイドとそんな見分けつかない感じがする。
ただそんなユルめの2段階目にしかない愛嬌みたいなのもあって、若干のダサかわ感にも慣れてきてむしろ愛おしく思えてくるので、旅の後半くらいで最終形のかっこいい姿に進化しちゃうとなんだかんだ寂しいというのもお約束である。君を忘れない、ウェルカモ。
最終形態のウェーニバルは(一部でキモいとか言われてるらしいが)一筋縄ではいかないヒネったカッコよさと美しさがあり、現代のポケモンらしくて良いデザインだと思う。カモの進化が白鳥だったらベタすぎてつまらんなあとか思っていたが(コアルヒーとかぶるし)、まさかクジャク+レンカク系?とは…。足のピエロっぽい独特な感じは、バン類の弁足をちょっと意識してるのかなと思った。良い意味で生々しい生きものらしさがあって好き。
あとウェーニバル、カーニバルダンサーをモチーフにしてるだけあってけっこう女性的…とまでは言わないまでも、かなり中性的というか、ジェンダーの境界線上にあるような面白いデザインだなと思う。今回はマスカーニャ(ニャオハの最終形)が明白に女性的なデザインで(マフォクシー、アシレーヌの流れを汲む感じ)、ラウドボーン(ホゲータの最終形)が四足歩行の怪獣型なので、ウェーニバルは細身のイケメン枠(バシャーモ、ゴウカザル、ゲッコウガ、エースバーンとかの流れ)ということなんだろうが、そのポジションにしては中性的なセクシーさを感じさせるキャラデザというのは興味深いし、御三家最終形のバランスがちょっと面白いことになってる。このジェンダー撹乱的な感じは(後述するけど)人間のキャラデザにもかなり通じてるんだよね。ウェーニバル、好きだわー。
・他の鳥たち
タイカイデン(命名:カイぱちん)とファイアロー(命名:コマぴゅん)が、クワッスと並ぶ鳥パーティの主力となった。どっちも高火力で素早いので旅の頼れる相棒。タイカイデンは「ちくでん」で電気を吸収してくれるので、いざというときの雷除けにもなってくれる。ただし技が電気と飛行しかないので電気タイプ相手だとやっぱキツイ。ファイアローは意外と強力な炎技を覚えてくれないので、かなり後半までニトロチャージでがんばる必要があった。フレアドライブ覚えてからはミサイルみたいな使い方ばかりして少し申し訳なかった。
地味に強かったのがフラミンゴのカラミンゴ(命名:ミンゴぴん)。序盤鳥…と呼ぶにはしっくりこなさすぎる(でかくて進化しないし)のだが、序盤に出てくる鳥ポケなのでまぁ序盤鳥なのだろう。格闘/飛行で攻撃力が高いし、鳥パーティが苦手なタイプの打点をつきやすいのでかなり重宝した。ウェーニバルが格闘タイプでかぶるので、終盤はボックス入りさせてしまったけど…。
オドリドリは序盤で手に入ったので一応鳥パーティで使っていたが、ロクなタイプ一致技を覚えてくれないので、あえなく不採用となった。クエスパトラやオトシドリやイキリンコ(いまだに野生で一回も見てないが)とか気になる鳥ポケは他にもいたが、以下に記述する子たちが有能すぎて手放せず、そもそも鳥パーティの構想が半端になってしまったことを告白する。
・ドオー
電気対策の用心棒&ぬいぐるみポジションとして入れていたが、ゲームを進めれば進めるほど普通に強いことに気づき始める。どく/じめんでフェアリーや電気に強いのがまずありがたいし、地味に水を無効化できる特性「ちょすい」が強力(うっかり特性を忘れて、水無効でびっくりしたことが多かったが…)。あくびも重宝。
・デカヌチャン
初期形態のカヌチャンを見て「これはカッコよく/かわいく進化するやつだな」と先が気になって育てたが、案の定いい感じに進化してカワイイし、タイプ(フェアリー/はがね)も技(デカハンマー他)も強いので手放せなくなった。この子がいなかったら四天王は厳しかったかもな…(特に鳥パーティだけではドラゴンになすすべがなかった気がする)。鍛冶(かぬち)を元にしたネーミングも秀逸だし、今回のポケモンデザインでもトップクラスの出来だなと。
・キノガッサ
「きのこのほうし」と「みねうち」を覚えてくれる高火力ポケモンという、あまりに便利な捕獲要因すぎて最後まで手放せず。ただ本作、ボックスにいる子を好きな時に引き出せるシステムだし、別にいちいち連れ歩く必要もさしてなかったのだが。(あ、だから殿堂入りシステムも廃止されたのかな…)
そんなわけで半端に終わった鳥パーティだが、ケジメとして最大の関門・ナンジャモには純然たる鳥パーティで挑んだ。
鳥パーティ、最大の関門ナンジャモに挑むの巻。(用心棒ドオー先輩は置いてきた) pic.twitter.com/c28FCy9Jso
— ぬまがさワタリ@『ゆかいないきもの超図鑑』3/8発売 (@numagasa) 2022年11月24日
まぁレベル差もあるし、いうても余裕で勝てるだろとか思っていたが、さすがにタイプ相性で苦戦させられ、タイカイデンの渾身の一撃が外れて死んだり、ナンジャモがコイル使わないとか地味なフェイントもかましてきて(本作こういうの多くない?)けっこうな激闘になった。バトル後にちょうどウェルカモが最終形態に進化したのも良い思い出(遅いっちゃ遅いが…)。ありがとう鳥たち。ついでにありがとうナンジャモ。
【ポケモン初のオープンワールド、その良し悪し】
初の完全オープンワールドということで、ポケモン赤緑からプレイし続けている世代として、まさかこんな進化を遂げるとは…と小学生の自分に教えてあげたくなったし、素直におお〜と思うところも多かった。序盤こそ(アルセウスのときも感じていたが)「移動だるくね…?」と思っていたが、コライドンとの出会い以降はほぼどこでもダッシュできたので、ストレスは軽減。広い世界を走り回る気持ちよさ、そして何より「あそこに見たことないポケモンがいるぞ!」というときの興奮は、ポケモンGOとアルセウス以降のシリーズならではの魅力があった。
ただ同時に、やっぱswitchのマシンパワーってそろそろ限界だよな…と感じざるを得ない部分もまぁまぁ多かった。特に街では処理落ちでゲーム終了も数回あったし、ポケモンの数が増える&フィールド処理が複雑になる水辺とかはカクカクでいつ落ちるか緊張感が凄かった。もうグラとかはこのままでいいからPS5でやらせてくれ…(絶対むり)。
そういうハード面もだし、そもそもオープンワールドである意味が、少なくともストーリー上はどれくらいあるんだろう、とかも思った。オープンワールドであることの楽しさって「自由度」にあると思うのだが、本作は別に野生ポケモンや敵トレーナーのレベルをこっちにあわせてくれるわけでもないので、実質的には取れるルートはそんなに多様じゃないっていう。マップに「ここは初心者向け」「こいつは強いよ」とか一応書いてあるので、「理想的なルート」はうっすら推察できるんだけど。
しかも理想的な「順番」を間違えると、ある箇所ではやたらめったら苦戦したり、ある箇所では拍子抜けするほど楽勝だったりして、どっちにしろ「ちょうどいい難易度」になりにくいんだよね。砂漠のイダイナキバ戦は死ぬほど大変だったが、(道順的にはラストに想定されていたのであろう)氷のジムリーダー戦はあっさり倒せすぎてつまんない、みたいなことも起こる。だったら、あらかじめ作り手が想定した「道」をしっかり設定するとか、ゼルダBotWみたいに本当にどこから遊んでも難易度がそれほど変わらない作りにするとか、工夫してほしかった気も。ゼルダBotW発売当時ならまだしも、もう(アサクリとかホライゾンとか)世界水準のオープンワールドゲームにも沢山ふれてしまっているからな…。
ていうか本作をやって改めて、根本的なことを思ったのだが、個人的にはゲームに「自由度」をそこまで求めてないのかもしれない。別に不自由でもいいので、作り手が「最も面白い」と想定した道順と難易度バランスでプレイしたいとか、身も蓋もないことを思ってしまう。これは映画やドラマなど、作り手がベストだと考える内容をひたすら一本道で見せていくエンタメを愛する人間ならではの古い感覚なのかもしれないが…。(で、そういう一本道ゲームも別に沢山あるので、オープンワールドに文句言うのは筋違いなんだろうが。)
てなわけでオープンワールドゲームとして大満足とは言えないが、ポケモンがこうした方向性で進化を続けていくなら、それは楽しみなので見守りたい。ただやっぱその場合switch自体のアップグレードはさすがに必須だろうな…とは思う。というか従来の2DのRPGのポケモンを、超絶高いクオリティで今作ったらどうなるんだろうとか空想してしまい、個人的にはそっちの方がむしろ遊んでみたいのだが。
【愛すべきサブキャラと良質なストーリー(そして突然の百合)】
今回は地味にサブキャラとメインストーリーが良かったなあと思う。3つのストーリーが並行して展開し、それぞれのルートでジムリーダー、巨大なぬしポケモン、スター団を倒すことを目標にしつつ、各ルートのサブキャラと共に物語を進めていくわけだが、いずれのキャラも印象的で、3つのストーリーと3人のサブキャラ&主人公が一堂に会する終盤はかなり盛り上がった。
・ペパー
出会った時はなんだこいつは…と思ったが、一緒にぬしポケモンを打倒する中で「意外とイイやつ」感がじわじわ高まり、最終的には本作で、というかポケモン史上でも最もストレートに胸を打つエピソードを届けてくれる。犬祭りゲームとしてのポケモンSVをさらに盛り上げてくれた功績も大きい。終盤の展開はよく考えるとだいぶ可哀想な気もするが、そのあたりもぐっと飲み込んで前を向く辺り、だいぶ大人なパーソナリティである。ちなみに(想定レベルを下回っていたとかもあったんだろうが)ペパーくんとのラストバトルが難易度的には一番キツかった。旅の途中で適当に捕まえてたポケモン、ちゃんと育ててたんだね…。
・ボタン
今回いちばん好きなキャラ。コミュニケーションが得意でない、微妙に生々しいオタク・アトモスフィアが味わい深い。外見的にも目の感じとか、赤と青を大胆に組み合わせたデザインも実にカッコいい(市川春子先生キャラデザ説はホントなんだろうか、そうなら納得感はあるが。)打倒スター団の旅の相棒(?)となってくれて、なんか裏あるんだろうなとは薄々思っていたが、クラベル校長の謎に巧みなミスリーディングもあり、ボタンの秘密が明かされる場面では普通に「おお!」となってしまった。(クラベルなんなんだよお前…)
ボタンはパッと見でも喋り方でも男子か女子か判別しづらく(設定上は女の子らしいが)、ノンバイナリー的な雰囲気なのもイイなと思った。ウェーニバルの項でも言ったけど、ジェンダー撹乱的なキャラデザが多い本作の方向性を象徴するような人物造形でもある。「パッと見では性別がわからない」キャラとしては、他には四天王のチリが代表格だろう。中性的で洗練された外見と、妙に気さくで気だるげな性格のギャップが凄くカッコよくて、夢主を大量発生させてそうである…。
・ネモ
すでに散々バトルマニアとかヒソカとか言われているっぽく、たしかにストーリー上では「どんどん実る…!」みたいな異様な前のめりを見せてくるので少し怖いのだが、最終盤では相性悪そうなペパーやボタンをいい感じにまとめてあげたり、人格者ぶりを発揮してくれて良かった。ネモのキャラデザも、ありがちな「美少女」デザを絶妙かつ意図的に外した感じが面白くて、わりと語りどころがある。
さっきも言ったが、保守的/内向き/オタク的に感じられることも多い日本ゲームの中では、近年のポケモンのキャラデザは(スプラトゥーンとも並んで)際立って海外を強く意識していることを感じさせるのだが、今回のSVは前回の剣盾ともまた異なる意味で開かれた感じで、そこも興味深かった。
・キハダ先生と突然の百合(ハリーポッターと賢者の石)
…ところでみんな、学校イベントはちゃんとこなしてるだろうか? スルーしてる人も多いだろう。授業は(先生には申し訳ないけど)かなり内容がつまらないし、テストも科目によっては中途半端に難しいので、全体的にストレスが多く、逆にリアルな学校生活の追体験ができるとも言えるレベルだ。授業を受けなくてもマジで一切ストーリーに支障がないので、普通にスルーしてる人も多いんじゃないかと思う。
ただ教師陣のキャラがかなり魅力的なので、授業を進めていくごとに先生との色々なコミュニケーションが開放されていくのが楽しく、サボらずに一度受けてみるのも良いと思う。私はカラッとした体育教師のキハダ先生が好きだった。いわゆるメシマズ的なギャグがあって、普段なら「女性キャラのメシマズネタとか古臭くてつまんねー」と思うところだが、キハダ先生の場合は「マジで体を鍛えることしか興味ない」というパーソナリティもあり、あまり嫌な感じがしなかった。
そんなことよりキハダ先生といえば、異常な百合のポテンシャルで界隈をざわめかせている。ジムリーダーのリップとのまさかの幼馴染関係が明らかになるのも凄いし(「ポケモンバトルで負けたほうがなんでも言うこと聞くんだ!」みたいなセリフをカラッと言っててヤバい)、かと思えば学校では保健室のミモザ先生との絆を育んでいたりするので、リップ-キハダ-ミモザの社会人百合トライアングルみたいになっていて凄みがあった。キハダ先生に「ミモザ先生!私の幼馴染に会ってほしいんだ!」と言われて行ってみたら超有名人のリップが現れてうおぉ〜いマジかよキハダお前、幼馴染ってリップ様かよ大ファンだよ私、知ってたらもっとキメてきたのに〜適当なカッコで来ちゃったじゃんふざけんなよ言えよマジでキハダお前と手汗をかきまくるミモザ、当然のようにキハダを自分だけのものだと思って余裕こいていたら学校で知らん女(美人)と謎の絆を育んでいた事実に微笑みながらも静かにショックを受けて手汗をかきまくるリップ、そんな2人の心の機微に全然気づいておらず「大好きな2人が知り合ってくれて嬉しいぞ!」とはしゃぎ続けるキハダ先生……というエピソードは特になかったが、追加DLCで確実にあると思う。
そんなこんなで楽しかったポケモンSV、まだクリア後要素が色々ありそうなのでまだしばらく続けたいと思います。おわり。