- 今日みてきた映画『マネーモンスター』のざっくり感想です。TOHOシネマズ日本橋、1100円(TOHOシネマズデイ)。言いたいこともなくはないですが面白かったですし、アメリカの(というか世界の)現在を鋭く切り取っているエンタメ作品だな〜と感じました。ネタバレは控えめにしときます…。
- 超有名女優のジョディ・フォスターが初監督をつとめた社会派サスペンスで、主演はジョージ・クルーニーです。クルーニー演じるゲイツは財テク(株の売買とか)に関する人気番組「マネーモンスター」のキャスターなんですが、生放送中に銃を持った男が突然乱入してきて、さらに体に爆弾を巻きつけられてしまったからさぁ大変。しかも生放送を続けないと殺す!と脅されたものだからさらに大変!!
- 男はこの番組に対して、そして番組のメイン視聴者層である社会の金持ち層に対して深い恨みを抱えているようで、一歩間違えればズドン、もしくはドカン、という最悪の事態に陥りかねない、まさしく一触即発な状況です。 ジュリア・ロバーツ演じるディレクターや、カメラマンなどのスタッフとなんとか力を合わせて、ゲイツは果たしてこの大ピンチを乗り切ることができるのか…?というお話になっています。
- まず、扱っているテーマが非常に今日的です。アメリカでは(アメリカだけではないんですが)1%の富裕層と99%のその他大勢、というような経済格差が現在どんどん拡大しています。富裕層は違法スレスレな方法で見境なく金をかき集め、貧困層には全く富が行き渡らない…。その格差問題について激しく市民がデモで抗議した「オキュパイ・ウォールストリート」という出来事も記憶に新しいです。名優ジョディ・フォスターがこの映画を撮った背景にも、この格差に対する大きな社会的関心が存在すると断言していいでしょう。
- 富裕層vs貧困層という現実世界の対立構造が、とてもキャッチーな形でエンタメとして上手く昇華されています。こうした映画を自分の監督としてのキャリアの1作目に選んだジョディ・フォスターのセンス、やはり見事と言わざるをえません。目の付け所が素晴らしい。
- そしてその「富裕層」、そして「富裕層になりたい人々」を得意客に据えて、うまく立ち回りながら商売を続ける「メディア」というものが、社会問題の第3の軸として入って来るわけですね。ゲイツが番組を盛り上げるために散々ついてきた「嘘」も、強烈な批判にさらされることになります。自分の発言の責任なんて決して取ることなく、株を「買え」だの「売れ」だのと毎日適当なことを言い続ける。それで誰かの人生が破滅することになっても、そんなの知ったことではないとシラを切るだけ。そんなメディアに対して、「ふざけるな」と銃を突きつける犯人の姿には痛快さすら感じますし、追い詰められたゲイツがどうやって彼と話し合おうとするのか、という点も見所です。
- しかし犯人の男に大いに感情移入をさせたうえで、中盤「ある人物」に犯人が「説得」されるシーンで観客に冷水をぶっかけるかのような展開も凄まじかったですね。シチュエーション自体はよくある「立てこもり犯を説得する」というものなんですが、おそらく類似の事態の中でもワーストというか、とにかくものすごく悲惨なことになってしまいます…。確かに富裕層にもメディアにも罪はある、だがその不満を一種のテロリズムに変えて暴走する行為はやはり賞賛されるべきではない、という作り手のバランス感覚の結果なのかもしれませんけどね…。なんにせよこの場面の何とも言えない「いたたまれなさ」はぜひ劇場でチェックしてほしいです。
- 後半またガラッと話が転じるくだりとかも面白くて、かなり楽しめたのは間違いないです。ただやっぱり、まだフォスター監督の第1作ということもあってか、こういう話にしては全体的にやや緊張感に欠けていたことは否めないかな…と感じました。なんといっても主役はジョージ・クルーニーなので、この人が撃たれて死ぬなんて展開はないだろう、ってわかっちゃいますしね…。仕方ないことなんでしょうけど。
- 本当に緊迫感のある映画にしたいなら、あんまり有名じゃない役者を使って、序盤か冒頭で何人かスタッフとかが死んでいたほうがよかったんだと思いますが、そうすると犯人への感情移入が難しくなるしな…。後半に明らかになる爆弾に関するある事実もちょっと拍子抜けでした。「今までのはなんだったんだよ〜」って少し白けちゃうというか…。爆弾が機能しなくなる、もうちょっと違う理由付けがあってもよかった気もしますね。
- こんな感じで不満がないわけではないんですが、とにかく「志」が素晴らしい真摯な映画だと思いますし、監督第1作としては全然いい出来なんじゃないでしょうか。ジョディ・フォスターの今後の活躍にも期待してます、ほんと。例によって全然語れていませんが、眠気がすごいので今日はこの辺で…。また後日。