沼の見える街

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『キングスマン』観た!!

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  • スパイ映画『キングスマン』(原題:Kingsman : THE SECRET SERVICE)を観てきた。TOHOシネマズ日本橋、1500円。かなり期待していたけど、期待をはるかに上回る面白さだった。まだ初日なので、なるべくネタバレなしで感想を。
  • 監督は『キック・アス』『X-MEN ファースト・ジェネレーション』のマシュー・ヴォーン。バイオレンス描写にも定評があり、この手のエッジの効いた本格ボンクラ映画(?)の監督のなかでも、ずば抜けた信頼度を獲得しているお方。
  • そして主演は『英国王のスピーチ』『裏切りのサーカス』のコリン・ファース。最近だとウディ・アレンの『マジック・イン・ムーンライト』なんかにも出てたけど、とにかくお洒落でスマートで、「ザ・英国紳士」を絵に描いたような俳優ですね(紳士どころか王様まで演じてたしな…)。そんなコリン様が、マシュー・ヴォーンと組んでまさかのバイオレンスアクションに挑み、世界を股にかける最強の諜報機関「キングスマン」のスパイを演じる!…というのだから、これはもう見るしかない。
  • ざっくりあらすじ。父を幼い頃に失った青年エグジー(タロン・エガートン)は、母親とその愛人と荒んだ暮らしをしていたが、ある日「キングスマン」の凄腕スパイ・ハリー(コリン・ファース)と出会い、父親もその一員だったと知ることになる。エグジーはキングスマンの苛酷な入団試験を受けることを決意するのだが…!?というお話。
  • 話自体はよくある、王道といえば王道のパターンだけど、とにかくもう序盤からひたすら面白くてワクワクが止まらない。まずハリーが初めて「キングスマン」としての本性をむきだしにする酒場での喧嘩シーンからして、テンションMAX。チンピラに絡まれたエグジーを置いていったんは立ち去ろうとするも、聞き逃せない侮辱を投げつけられたので、「MANNERS. MAKETH. MAN.(マナーが、紳士を、作るんだ。)」という名セリフを吐きながら、酒場の鍵をひとつずつ閉めていき、そこから突如始まる暴力の嵐! 切れまくりの体術とスパイ秘密兵器で、チンピラどもをなぎ倒していくハリー!まさしくコリン・ファース無双!!(この二つの言葉を結びつける日がくるとは…!)
  • その後も心踊る展開のオンパレード。いっけん平凡な仕立て屋だけど、実は「キングスマン」本部につながっている店のギミックといい、めちゃくちゃ苛酷で精神力と体力を要求される「キングスマン」試験といい、意表をつく展開とテンポのよい語り口で、とにかくまったく退屈しない。この辺りはさすがマシュー・ヴォーン。
  • 脇を固めるキャラもみんな魅力的!名優マイケル・ケイン演じるキングスマンのリーダーとか、サミュエル・L・ジャクソン演じるラスボス(血が大嫌いなIT長者)とか、両足が剣になってる女殺し屋のガゼルとか、それぞれキャラが立ちまくっていました。
  • そしてなんといっても本作の最大級の見せ場は、中盤で出てくる教会での大殺戮シーン。ラスボスの怪電波によって戦闘狂状態になった人々と、ハリーとの壮絶きわまりない殺し合い!(まさにジョジョ6部の「サバイバー」状態!)コリン・ファースのキレッキレのアクション、計算され尽くしたカメラ回し、背後に流れるレーナード・スキナードの曲『フリーバード』、すべてが噛み合った素晴らしいシークエンス。ここを見るだけで入場料金を払う価値はあると断言できます。(パンフに書いてあったけど、この場面「1テイク」で撮ったってマジで…!?「ワンカット」じゃなくて、ガチの一発撮りだとしたら奇跡としか言いようがない。)
  • そしてこの場面、アメリカの社会事情を知っておくとさらに楽しめます。というのもこの教会の元ネタになったのが、ウェストボロ・バプティスト教会(WBC)という、アメリカ国内でも最悪のレイシズム集団なんですね。「GOD HATES FAGS(神はホモが嫌い)」等というひどいスローガンを掲げ、同性愛者への偏見や人種差別を公言しているトンデモ団体です。「9.11は堕落したアメリカへの天罰!」とか抜かしながら、家族を失った人の家にわざわざ出かけて行って説教をかますなんて序の口で、ウィキペディアをちょっと眺めるだけで大変に嫌な気持ちになれます。もちろんアメリカでも、心ある一般の人々からはドン引きされている教会です。
  • 今回の大殺戮のシーンが愉快なのは、その現場に居合わせてコリン・ファースに皆殺しにされるのが、全員そのWBC(っぽい)教会の信徒だということ。WBCは「同性愛者は死ね!」「黒人は死ね!」「ユダヤ人は死ね!」とかそんなことばっかり言っているクズい連中ですが、このシーンは「おまえらこそ死ね」という作り手のド直球のカウンターなのです。スタイリッシュに差別主義者をぶっ殺していくコリン・ファースの姿に、アメリカの劇場は拍手喝采だったことでしょう(たぶん)。ま〜バイオレンスだし賛否両論あるんでしょうが、こうした(やや過激とはいえ)しごくまっとうな「アンチ差別」映画が世界中でヒットしているのは、たいへん健全なことだと思います。
  • そんなわけで、ぜひ日本でもヒットしてほしいです。ひどい差別を公言してはばからない困った人々、より取り見取りですし…。マシュー・ヴォーン監督は日本にも愛着があるようで、「次回作は日本が舞台だ!」と豪語しているらしいので、その折にはぜひ手始めに、差別的な暴言を撒き散らしながら街を練り歩くような連中を一人残らずブッ殺してほしいものです。(というかそういう国産の映画があったっていいと思う。)
  • やや脱線した&ひとつの場面について語りすぎましたが、この後も物語は急転直下の二転三転を迎えて、最後までまったく失速しません。後半も数々の名場面が生み出されるわけですが、やはりあの教会のシークエンスは間違いなく本作のハイライトであり、ホントに「伝説」級のシーンだと思うので、ぜひスクリーンで確認してほしいです。
  • あ、本作があの立川シネマシティで「極上爆音上映」されると聞いて、最初はちょっと意外でしたが、観てみたらその意味がわかりました。これまたとにかく「音」が重要な映画で、特にクライマックスからラストにかけての音楽の使い方の格好良さったらありません。『マッドマックス』同様「爆音」で観る価値が十分にある映画です。全然語り足りませんが、長くなったのでいったんこの辺で。明日は素敵な集まりにご招待いただいたことだし、早く寝ないとな…。ではまた。