沼の見える街

ぬまがさワタリのブログです。すてきな生きもの&映画とかカルチャー。

『ミッション・インポッシブル』みた。

  • 『ミッション・インポッシブル/ローグ・ネイション』(原題:Mission: Impossible Rogue Nation)観てきました。TOHOシネマズ新宿(TCXドルビーアトモス)、1300円。
  • トム・クルーズ恐るべしということなのか、平日の夕方で、しかも追加料金のかかる大スクリーンだったにもかかわらず、ほとんど満員の大盛況でした。海外でも大ヒット中のようで、さらに批評家受けもよく、レビューサイト「Rotten Tomatoes」では支持率93%という数字を叩き出していました。(…93%ってまじか。すごいな。マッドマックス級ってこと…?)
  • そんなわけで国内外ともに大人気の本作、まだ日本では公開3日目くらいですが、すでにかなりの成績を上げていることでしょう。ただ、ですね…。正直なところ私には、イマイチな出来栄えの映画だと感じられました。もちろん見所もありましたけど、そこまで絶賛されるような映画ではないような…。
  • たしかにトムは死ぬほど頑張っていました。特に予告編やポスターで(若干うんざりしてくるほど)繰り返し強調されていた、ガチで命がけの飛行機ぶら下がりアクション!ここはもちろん、そりゃ〜心底すごいシーンだと思いますよ。それもこんな切り札のような場面をいきなり冒頭にもってくるセンスには、正直なところ脱帽いたしました。「えっ、こんなに凄いアクションが、序の口にすぎないってこと…!?」ってわくわくせざるをえないですもの。
  • ただ、言ってしまえば、その冒頭がピークだったかな〜と…。あとは、予告編でもやっていた素潜り大作戦のシーンがけっこうスゴイのと、途中のカーチェイスがまあまあスゴイのと、それくらいかな…(追記:あとオペラのシーンは地味ながらも良かったです)。他の場面は、正直、べつに〜って感じ。特にラストのアクションシーンの印象の薄さと言ったら、マジで来週にはきれいさっぱり忘れているのでは?というレベルだったように思います。というかもうすでにあんまり覚えていません。どんなだったっけ(それはさすがに脳の問題では…)。
  • いや、もちろんトム・クルーズが全編にわたって体を張ってるというのはひしひしと伝わってきましたし、こんな大スターがあんな危ないアクションをするなんて凄い!っていうのはよくわかりますよ。でもそれと映画の良し悪しは、やっぱり分けて考えるべきなんじゃないのかな…。
  • この映画、全体的に「トムがこんなことまで!?」っていうのに頼りすぎなんじゃなかろうか。アクションはあるんだけど、肝心の「サスペンス」がない。イーサン・ハントや仲間達が死にそうな目に合っていようが、「結局は大丈夫なんでしょ」っていう(悪い意味での)安心感が先に来てしまう…。それは「そういうシリーズだから仕方ない」んじゃなくて、全体的な緊張感のなさとか、脚本やディティールの詰めの甘さとか、そもそもの発想の弱さとか、そのへんにもっと改良の余地があったってことじゃないかな…。少なくとも前作『ゴースト・プロトコル』は、サスペンス要素がもっとしっかりしていた気がします。ふつうに劣化しているような…。
  • お話的にどうなの?って思う所も多々あったんですが、特に「え〜…」って思った点をひとつあげるなら、「USBディスク」にまつわるくだりですね…。そもそも今時マクガフィン(敵味方で奪い合うブツ)がUSBってどうなんですかね…?だってコピーし放題だからサスペンスの要素として成立しづらいじゃん。今回も散々ディスクを奪い合ったり追っかけっこした後で、「実はコピーとってました」とかさ〜。だったらさっきのカーチェイスは何だったの?ってなっちゃいますよ。ギャグなのかわかんないけど普通に冷めました…。
  • かと思えば「イヤそこはコピー作っとけよ!」みたいに思っちゃう場面もあって、もう作り手が何をしたいのかよくわかんないです。国家機密レベルの情報が入ったUSBなのにバックアップさえ作らない、意識の低さが大学生以下のスパイが、案の定間抜けなピンチに陥ったりしたところでな〜…。知らねーよって感じ。こんなのディティール以前の問題だと思うのですが、作ってて気にならなかったんだろうか…。(私が何か見落としているのかな?)
  • ラスボスの魅力のなさも相当なもんでした。今時「手下の黒服を特に意味もなく殺す」ことで怖さを表現とか、勘弁してくれって感じです。まあよくある描写なのかもしれないけど、リアリティなさすぎでしょ。(この黒服たちはなんでまたこんなブラックすぎる職場で働いてるんだろ、とか余計なことを考えちゃいました。)最後の決着も、途中の「ボックス」という単語が伏線になっているのはいいんですけど、つくづく地味というか、間抜けというか…。
  • 全体にこんな感じで、アクションはさぞすごいんでしょうけど、マクガフィンをめぐるサスペンスとかラスボスの造形とか、スパイものとしての肝心なポイントがな〜んかしょぼくてヌルいんですよね。ここまで絶賛されてる理由がちょっと真剣にわからないです。本当になんで?マジで何か見落としてる…?それにしたって間違っても「マッドマックス級」ではないでしょ〜…。
  • あ、前作に比べてベンジー役のサイモン・ペッグの出番が増えたのは、もちろんうれしかったですよ。俳優としても脚本家としても大ファンですし。サイモン・ペッグの世界的な人気が上昇していることも受けてか、本作のベンジーの活躍っぷりと言ったら半端ではありませんでしたね。それはもう、イーサンとタッグを組んで任務に挑んだり、「きみを巻き込みたくないから帰れ」と言われるも頑なに拒否して絆を再確認したり、一緒にドライブをしたり、さらわれて人質になったり……。あの……。完全にヒロインの立ち位置ですよねコレ!?正ヒロインの人も一応いたのにイマイチ印象に残ってないのは、明らかにベンジーが仕事を奪ったせいですよね…!?
  • そんなわけで(?)サイモン・ペッグを堪能できたのは良かったんですが、やっぱりギャグのキレとか、他作品のサイモンに比べるともうひとつ精彩に欠く気がしたな〜。「俺たちのサイモンはこんなもんじゃねえ!むしろサイモンに脚本を書かせろ!」とかめんどくさいことを思っちゃいました。(わりと真剣に見たいですけどね、サイモン・ペッグが脚本をつとめたスパイもの…)
  • 今日はくたびれたのでこの辺で。