沼の見える街

ぬまがさワタリのブログです。すてきな生きもの&映画とかカルチャー。

ゆで卵と羽海野チカ

  • 今夜はカレーをつくった。カレーの日はゆで卵を必ず作ることにしている。
  • がびょうを使って、卵の底の丸い部分にブスリと穴を開ける。このワンアクションをはさむことで、殻と白身の間にお湯が入り込んでくっつかなくなり、卵の殻がつるんとむける。茹で上がったあと、急速に水で冷やすとなお良い。
  • ゆで卵は何分くらい茹でたらいいのかという問題について、今日結論がでた。8分30秒である。
  • 羽海野チカの『3月のライオン』という作品は、プロ棋士の少年を主人公にした、非常に面白い漫画である。やたらめったら美味しそうな食事描写も見所なのだが、ある時、「半熟ゆで卵レシピ決定版」が作中に登場した。かわいい女の子たちが涙ぐましい研究を重ねた結果のレシピだ。
  • その中で、茹で時間は「8分で決まり」とされていた。私も「そうか、8分か…」と感銘を受け、それを読んで以来「8分」でずっと卵を茹でる日々だった。
  • しかし、どうも、8分だと短すぎるのではないか?と、うすうす思っていた。うまく半熟になるときもあるのだが、むいてみたはいいものの白身が固まりきっていなかった、ということもよくあった。
  • だが、「あのかわいくて一所懸命な女の子たちが間違いをおかすわけはない…。いわんや、食べ物に造詣の深い羽海野先生をや…」という想いが心のどこかに残り、8分で茹でる日々は続いた。
  • そうして8年が過ぎた。
  • 今日、ふと勇気を振り絞って、茹で時間を「8分30秒」に設定してみた。できあがったものは、より完璧な半熟ゆで卵だった。おいしかった。
  • 家庭ごとのさまざまな条件の違いというものがある。ゆえに、羽海野チカ先生が間違っていたわけでは、きっとないのだろう。しかし、料理に、否、何かを作り出すということに、絶対的な決まりなどないということは、心に留めておくべきなのかもしれない…。
  • 8年は嘘です。