沼の見える街

ぬまがさワタリのブログです。すてきな生きもの&映画とかカルチャー。

飛呂彦新書とジャンプ感想

  • 注文した新書『荒木飛呂彦の漫画術』が届いたのでさっそく読んだ。
  • 漫画のテクニックを説明するというよりは、荒木先生の創作に対する根本的な姿勢を語る本という感じ。
  • これまでの荒木飛呂彦のエッセイとかインタビューとかをチェックしている人にとっては、すごく目新しい情報とかはあまりないかもしれない。とはいえ、何か創作したりする人にとっては心強い「地図」となってくれそうな一冊だと思う。
  • ひとつ面白いというか、「なるほど〜…」と思ったのは、物語は「常に」プラスに向かって進まなければいけない、という絶対的なルールが荒木先生の中にあるという点。これは明文化されたの、初めてなのでは。
  • 主人公が負けたり、悩んだり、落ち込んだりして「マイナス」になるのは、基本的にはダメだと。そこで話が停滞しまうから。…たしかにジョジョって主人公が負けること、ないな。悩んでる人も見かけない。敵も味方も狂人もみんな前向きに戦ったり死んだりする。それが独特の突き抜けた爽快感を生んでいる。
  • とはいえふつうの少年漫画だと、主人公が負ける展開もよくあると思うけども。ワンピースでもルフィはよく負ける。最近のジャンプ漫画だと「火ノ丸相撲」で潮くんがライバルキャラに負けていた。
  • いや、負けたり悩むにしても、それによって物語が「前」に進むのならオッケーということなのかな。実際「火ノ丸相撲」はそのくだりも面白いし。まあ、あの漫画はお話の進め方が本っ当にうまいので、典型例として参考にはできないか。
  • 逆に「どんどんマイナスに進んでいくにもかかわらず秀逸な作劇」の例で、救いなさげなゾンビドラマ「ウォーキング・デッド」があがっていたのも面白い。でも、そうした極端な例でなくても、のちに上げるために落とす、という手法でも、よっぽどうまくやらなければ読者はうんざりしてしまうのだ、と荒木先生。「いったん下がる」ということがそもそも読み手にとってはストレスなのだ、と。ふ〜〜〜む。
  • これはちょっと、考えさせられるな…。「一回下げてまた上げる」は物語の常套手段だし、自分も漫画とか描くときにはよくやるけど…。その「下げる」が「停滞」になっちゃいけない、っていうのが大事なところのようですな。難しいが…。また読み直そう。

 

  • あ、ジャンプの話をしたついでに、今週号(21号)の感想をちょっと書いておこう。一回やってみたかった、ジャンプ感想
  • おもに「僕のヒーローアカデミア」が目当てで、電子版を購入している。しかしMacBookのブラウザでみると妙に画質が悪いのはなぜ? ipadは超くっきりなのに。 
  • 読み切りに掲載されてた『蠅庭(はえにわ)のジグザグ』、いい意味でジャンプっぽくなくて、すごく好き。(すこし前の『肋骨さん』の人か。あれはさらに輪をかけてジャンプっぽくなかったな…。)今回は日常に潜む怪奇ファンタジーという趣き。謎の首吊り自殺が多発する街で、植物を操る主人公がその事件を解決しようとする。
  • なんかこう、表紙のアオリに、「この男はヒーローなんかじゃない」って書いてあるんだけど、ほんとに主人公がヒーローっぽくないのがいい。いいこともするんだけど、マジで不本意ながら仕方なくいいことしてるという感じがひしひしと伝わってきて、逆にすごく好感が持てる。
  • 絵も素敵で、女の子も可愛いし、会話やセリフの選び方もとってもいい。
  • しかし…地味な…話だな…。いや、読み切り的なテンプレではあるのか。でも、そのテンプレの枠の中で何かすごく異様な実験をしているという感じ。台詞回しとか、全体の奇妙にのほほんとした空気とか。
  • このまま連載しても「賢い犬リリエンタール」みたいな「打ち切り良作」になりそうな予感がするのは否めないけども…。うーん、どうなるのか。なんか応援したくて、はじめてアンケートなんて出してしまった。吾峠呼世晴さんというらしい。ジャンプがだめならウルジャンにこないかな。
  • 他にも「ヒロアカ」は轟くんが(文字どおり)熱いし、先述した「火ノ丸相撲」は話運びが抜群にうまいし(石神高校の部長は本当いいキャラだよ…)、「斉木楠雄」も毎回面白いし、「ワルトリ」もどうなるのか読めないし、この4本だけでも定期購読の価値はあるな〜という感じ。「ダンゲロス」の漫画かいてた横田さんの新連載(競技ダンスて…)もたのしみ。
  • あ〜〜〜…長い。私がtwitterに手を出せずにいる理由の一つである…。そう…話が…長いのだ…。