沼の見える街

ぬまがさワタリのブログです。すてきな生きもの&映画とかカルチャー。

花!アリス。殺人事件!

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・『花とアリス殺人事件』。ふと思い立って描きたくなった。大好きな映画。

・「岩井俊二?ああ、なんかダウナーでおしゃれな感じの映画監督でしょ?初のアニメに挑戦?ふーん…まあ見てみようかねえ」くらいのノリで映画館へ足を運んだのだが、最高だった。

・まだギリギリ、新宿バルト9とかでやっているようなので、未見の方はぜひ。これは映画館でみてほしいな…。

・タイトルは物騒だが、全然殺伐とした内容ではない。あんまり言うとネタバレだけども…。ごくふつうの街で、少し奇妙な人たちがくるくる動き回る。美しく優しく、少しだけ哀しい映画。

・11年前の実写映画『花とアリス』の前日譚ということで、いわゆる「普通の」アニメよりもずっとリアリズムに寄っている。絵柄は実写をもとに書き起こし、声優は元の映画の女優を起用。少女たちが活躍するアニメだが、「萌え」的な文法はほぼ排されている。

・リアリズムとアニメ表現の融合という点では細田守監督の方向性とも似通っているが、あちらよりもさらにずっと、いわゆる「アニメ臭さ」を抑えている。主役を演じる蒼井優の演技も、カロリーゼロならぬ萌え感ゼロ。ほんと自然。

・それなのに、いや、だからこそ、花もアリスもその他全員も、かわいくてかわいくて仕方ない。すっとぼけた会話劇をずっと聞いていたくなる。繊細な美術と美しい音楽に浸っていたくなる。

・時々こういう忘れがたい映画に出会えるから、映画館に通っている…。

・特にやっぱり、アニメにおける声の演技についてすごく考えさせられた。アニメの声優さんたちは、やっぱり感情を強く込めること、キラキラさせること、とにかくセリフをキャッチーで濃い味付けにすることを、義務付けられているのだと思う。

・ただアニメとか見てて、正直「もうちょっと控えめな、自然な演技でもいいのに…」と自分が思っていたことに、この映画をみて気付かされてしまったというか。けっこう胸焼けしていたことに。

・たとえば「まどかマギカ」はとても好きな作品だし、声優さんたちも超一流の人たちなのだと思う。だが、個人的にはやっぱりどうしても声がな〜。好きなキャラであるさやかちゃんでさえ、キャピキャピしている時の声は、けっこう苦手だったりする。キタエリ、素晴らしい声優さんだと思うけども。

・(まあ「まどマギ」は何と言ってもその後の展開とのギャップを際立たせるためにあえてキャピキャピさせているという側面があるんだけど。)

・最近みてる「アイマス」とかでも、さらにそれを感じてしまう。「ああ、そんなにかわいくしなくても十分かわいいのに…」とか思ってしまう。「そこまでかわいくなくていいじゃんよ…」と。かわいさが売りのアニメに対して、あまりに理不尽な反応とはいえ…。

・「進撃の巨人」の諌山さんが、「これからの漫画におけるギャグは、ギャグらしくないギャグになるだろう」とラジオで言っていた。『テニスの王子様』が手本となる…と。

・それともけっこう通じることで、キャピキャピした「萌えらしい萌え」を作中でやることって、だんだん古臭くなっていくのかも。そこはもう、受け取る側が補完するだけになっていくのかも。

・馬鹿みたいに長くなってしまったが、とにかく『花とアリス殺人事件』には、アニメにおける「かわいさ」の新しい可能性を感じた。アニメ界をどうこう、なんて作り手はべつに考えてないだろうけど。そこがまたいい。ほんと、超かわいい映画です…。