沼の見える街

ぬまがさワタリのブログです。すてきな生きもの&映画とかカルチャー。

2024年のまとめ(鳥、深海、ニュース図解)

1年前はあんなに新年だった2024年も今じゃすっかり最終日、オワコンならぬオワイヤーになりつつあり、人生もこのようにあっという間に終わっていくのだなぁ…【完】

…なんて諸行無常ドルビーサラウンドはもうええでしょう! 今年も振り返れば色々あったし、アレコレやったし、がんばったよなぁ!!と己を鼓舞していきたいものです。

 

というわけで今年やったこと、がんばったこと(主に仕事面・クリエイティブ面)をかんたんに振り返っていきます。

といっても今年はかなりシンプルで、ざっくり突き詰めると「鳥」「深海」「ニュース図解」の3つに突き詰められそうです。極端だな(高低差が)。

 

 

【鳥】

これはもう、科博の「鳥展」でございます。子どもの頃から愛してやまない「国立科学博物館」の史上初の「鳥」の特別展にて、図解イラスト「鳥のひみつ」23点を担当するという光栄すぎる大仕事をお任せいただき、専門家の先生とも話し合いを重ねながら、全力を尽くしてトリ組みました。ばっさばっさと!!

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科博の特別展に足繁く通っていた身としても、展示でこれほどクリエイター個人のイラストや漫画が前面に出張ってくることってけっこう珍しいよね? 作品そのものにはもちろん自信あるけども…大丈夫、かな…!?と開催前はちょっぴり心配していたんですが(絶対に失敗したくなさすぎたから…)、蓋を開けてみれば、「鳥のひみつ」への評判もすこぶる良く、嬉しい称賛コメントも沢山たくさんいただき、心よりホッといたしました。

「高度で硬い内容を面白く楽しく、万人に開いて伝える」という意味では、これまでやってきた仕事のこれ以上ない集大成になったなあと個人的にも感じており、むしろこれが人生のピークかもしれないが、まぁそれでもいいか…オヤジの栄光時代はいつだ…?オレは今なんだよ!というスラダン山王戦の桜木花道のような(?)気持ちに一瞬なりかけたが、いやそんなこと言わず、さらに高みを目指したい!鳥だけに!!!

↓内覧会のレポートも書いたよ。

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12月にプライベートでお友達とまた行ったし(当然だが内覧会とは違った雰囲気でめちゃ楽しかった〜)、あと1回は確実に行く予定。

 

展示期間は折り返しポイントですが、鳥展は1/2からやっているので、みんなも気軽に行ってよね〜こういうのは気づけばすぐ最終日だからね、ほんとに(経験者は語る)。光陰、ハヤブサの如し。

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【深海】

今年の大きなチャレンジ、もうひとつありました。急に漫画を発表した上になんか知らんが賞までいただき、みなさん驚いたかもしれませんが、私もびっくりしました。

はい、漫画『深海DINER』です。

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2024年が始まった段階では企画として影も形もなく、漫画を本格的に描くことなんて予想すらしていなかったという意味で、個人的にも今年最大のサプライズでしたね。

そもそもは金目当て…っていうと言い方が悪すぎますが、縦読み漫画コンテスト・賞金総額1億円!などというアマゾンの謳い文句にまんまと惹かれ、ちょうど他の仕事のスケジュールとの兼ね合い的にちょっと空白ができそうだったのもあり、軽〜く動物のユルイ漫画でも描いて応募してみっかな〜賞もらっちゃったりして笑、みたいな軽薄なノリで描き始めたんですが、描いてるうちにどんどん凝り始めてしまい(私あるある)、キャラクター造形や脚本も本気(ガチ)で考え出し、気づけば全力投球で漫画を描いていたというわけです。

3月末くらいに「鯨骨生物群集をダイナーにした漫画を描けないかな?」という着想を得て、コンテストの締め切りがたしか5月上旬だったので、実質的に1ヶ月しか制作期間がない中で、募集要件の「3話」を満たすために大急ぎで描き始めました(結局3話を前後編に分割して4話になったけど)。

最初は単に(人間形態とかない)メンダコやカニがわちゃわちゃするだけのギャグ漫画のはずだったんですが、さすがにこれだと引きが弱すぎるかな?と思い、審査員もなんかオタク界的な(失礼かな)面々だったので、ここはいっちょキャッチーな女の子のキャラクターでもデザるか…と、超特急で主人公のめんこやカーニャ等のデザインに取り掛かりました。

かなり爆速で決まっためんこに比べると(メンダコの擬人化でダイナーの店長、って設定だと他にあまり選択肢がない感じもする)、カーニャの造形にやや悩んだり。

右側はボツ案カーニャ。最初もっと「お嬢様」っぽい喋り方や設定だった(名前もカニエルだった)ので、髪型も縦ロールだったのだが、カニっぽさを追求してカニはさみヘアーになった。あと後ろのカニアーム(あし)がもっとメカだった(これはこれでカッコよかったかな)。

デメまるのデザインとか相当お気に入りである。コンセプトは潜水服+雪だるま。

ロクにオリジナル漫画とか描いたこともない中、そもそも完成するのかと不安でしたが、『これ描いて死ね』(©とよ田みのる先生)のアマチュア精神でがんばりましたよ…

そんなわけで4月頃はマジで作業量が凄いことになってましたね。めちゃめちゃ楽しかったけど、他のことをほぼ何もせずに没頭してしまったので、創作って楽しすぎてちょっとマジで危険だよなと思った。

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締め切り直前、3〜4話の完成&アップ前に突然iMac先輩ががぶっ壊れたときはどうしようかと思いましたが、なんとか間に合ってよかった(酷使しすぎたんだろうか…)。データを外部に保存しておくことの重要性がよくわかりました…。

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そして6月ごろ、受賞結果が出て、(皆さんの応援のおかげもあり)ありがたくもカテゴリー賞「ファンタジー」+賞金をいただいたというわけ。賞金1000万円のグランプリ(大賞)は結局「対象者なし」だったようで、「なんだよ〜、どうせ余るんなら私にグランプリくれればいいだろ」という気持ちもなくもなかったですが(傲慢)、文句いっちゃいけませんね。賞金もありがたく、自己研鑽と世界変革のために使わせていただきます。

まぁ独立したオリジナル漫画は初とはいえ、キャリアをスタートする前はわりと二次創作とかでちょい長めのストーリー漫画も描いていたり、『ふしぎな昆虫大研究』や『ゆかいないきもの超図鑑』はキャラクターがいたりストーリー仕立てだったりしたので、厳密な意味では初漫画でもないんですけどね。

ちなみに『深海DINER』現在は8話まで更新しています。

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第1章・完!「深海MOTEL」編に続く!という雰囲気で終わらせてはいますが…今はさすがに他の仕事も忙しくなってしまい、ぶっちゃけ今後の展開は未知数です。楽しみにしてくださってる方、もしいたら申し訳ない…。のですが、キャラや世界にはだいぶ愛着が湧いたので、何かの形で続きが作れないかなあとは思案中です。めんことカーニャの愛がちゃんと報われるとこまで描いてあげたいものだな。

思い切って漫画を描いてみたことで、表現手段の幅をグッと広げられた感じがしたのも、個人的には収穫でした。でもまぁ漫画って仕事にするにも趣味にするにも単純に作業量が多すぎて大変だな!!とも思ったけど。プロの人はすごい。どうしようかな。もういっそ…小説『深海DINER』でも書くか?(てきとう)

↓メリクリ…いやメリデメイラストも描いた

【ニュース図解】

3つめ、「いきものニュース図解」始動。始動っていうか、これまでやってきたことにハッシュタグ/タイトルを付けてみただけっていうか、延長線ではあるが…。でも「ニュース図解」と銘打ってみたことによって、輪郭がくっきりした感もある。世の中は悲惨さに満ちているが、良いニュースを届けていきたいものだな(なるべく)

縦読み漫画版の「いきものニューストゥーン」とかにもトライしてみたのも副産物といえよう。『深海DINER』描く前はこっちでコンテストに応募する予定だったんだよね〜

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↓SNSでの反響が特に大きめだったのはこのへんかな。

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なんか鳥が多いな(私が鳥好きなだけか…)

 

まだ詳しくは言えませんが、いきものニュース図解関連の何かの作業も(って言ったら大体分かるか…)絶賛進行中なので、おたのしみに。

 

終わり!来年もほどほどに自分と世界のためにやっていくので、よろしくお願いします。

 

【その他】

おまけで、今年はじめたりトライしたり、しなかったりした諸々を五月雨式に。

 

◯Bluesky

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今年のSNS界の話題といえば、やはりマスクXがヤバすぎてBlueskyに大移動が起こったという「エクソダス(X脱出)」であった。私はちょっと前から(招待制のときに)始めていたが、今年の特に後半はかなり積極的に利用していた…というか、ほぼ軸足がTwitterからこっちに移ってしまった感がある。

ブルスカ普通に使いやすいし、海外の科学者とかジャーナリストとか(反マスク/トランプ傾向な)知性的な人々もドッと流入したこともあり、雰囲気も良い感じの活気と落ち着きがあって良いんだよね。この感じがいつまで続くのかは未知数だし、まぁXが完全に破綻する(もしくはマスクが出てく!)までは、イラストや映画の感想などは並行してあげていくつもりなんだけど。

 

◯iPad Pro液タブ化計画

絵を描いてない人は「しらんがな」という感じだろうが、作業環境まわりで今年最大の変化を起こしてみた。iPad Pro(M4)+Apple Pencil Proの購入に踏み切り、心にずっとくすぶっていた「液晶タブレットっていいかげんそろそろAppleが本気だしたiPadなら完全に置き換え可能なのでは??」問題をしっかり検証することにしたのだ…。

液タブとiPad Pro(せっかくまだどっちも繋いでるので)大きさなど比較。 ↑iMac 24インチ(M3) ←液タブ Wacom Cintiq 16 →iPad Pro(M4) 13インチ +Apple Pencil Pro ・作業画面、横は当然ワコムが大きいが、縦はiPad Proが上回る。結果、体感的にはワークスペース総量そこまで変わらない。 ・色合いはやはりiPad Proが優秀。Cintiq Proだと同じくらいになるのかな(そうなると値段iPad Proとほぼ同じだが…) ・ペン、ワコムのは本職だけあって安定感あるが、Apple Pencil Proになって相当に肉薄してる印象。

ぬまがさワタリ@科博「鳥」展 (@numagasa.bsky.social) 2024-12-12T04:26:07.624Z

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「Apple先輩の本気やべえ…これに比べたら液タブさんは、ただのでかいマウスや…」となるか「あ、やっぱ餅は餅屋なのか…ワコム先輩、さーせんした…」となるかはわからなかったが、20日くらいiPad Proを(やや小さめの)液タブとして使った結果、なんか想定以上にあっさり「イケるのでは…?」という感じになってきた。最初なぜかペンが極細になってしまったけど筆圧検知やったらまともに。
ずっとCintiq16を使っていたので、まずPCと液タブで色合いが(大幅には)違わない、ということ自体が新鮮に感じる。サイズは小さくなったが(16→13)思ったより気にならず。
Cintiq Proなら画質も4Kになって色域も広がるんだけど、そうなるとiPad Proとお値段ほぼ変わらなくなってくるのよ。最近値上がりしたこともあり…。ワコムやばい?

ただまぁ筆圧検知レベルの細かさとか、普通にサイズとか(私は13インチで十分だが)、明らかにワコムが勝ってるとこもいくつかあるので、iPadが液タブの完全な上位互換となる日は来ないのかもなという気もする。Appleもそこまで真面目に張り合わないだろうし。ワコムにも恩義があるので(Macとの連携の微妙さはなんとかしてほしいが)がんばってほしいものだ。

余談:この記事用のゆるイラストを描いた後に、macとiPadをUSB接続してなかったことに気づいた。まじか、無線でもこんなナチュラルに描けるのか。Appleすげえ(結論)

 

◯反省

反省は別にしていないが、昨年(2023年)に比べると、たとえば映画レビュー記事とかはマジでほとんど書かなかったな…とは思った。

↓あれ、これだけじゃね?

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まぁ2023年が、本も一区切りついたし、ブログ運営にちょっと力を入れてみるか〜とか思ってたら本当に入れすぎてしまったという(私あるある)年で、かなり特殊だったんだと思う。いくらなんでも映画レビューばっかり書きすぎていたしな。

翻ってSNSにはそれなりの頻度で感想文をあげていたので、今年はこういう短い記事↓(短文で書いた感想)をもっと増やそうかと思っていたが、全然サボっていた。まぁマジでいそがしかったのでね…。しかたないか。

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ただ来年はもうちょっと、自分が書いたものを真面目にログってく作業をやろうかな…と毎年言ってるかも。もうTwitterやブルスカに書いたものをちゃっとまとめるだけとかでもいいんだけど、なんかめんどくさくてやれてない。結局、SNSのアーカイブ性なんて全然信用できない…という諸行無常感にあふれた一年だったし、もうちょいなんかこうね(それ言ったらブログもだけどね)。書くことのノリとフットワークを軽くしたい。

映画や本自体は全然みたり読んだりしているので、恒例のベスト記事は今年(来年か)もやろうと思ってます。

 

おしまい。それでは良いお年を〜〜〜

【図解】「ソーラー羊」が地球を救う!?

「ソーラー羊」が地球を救う!? 太陽光発電と「羊」のコンビが人気上昇中のワケを図解しました。混メーを深める世界のメー暗を分けるのは、羊なのかもしれない

 

<参考HPなど>

「再生可能エネルギー開発の下で家畜の放牧を許可することで、農家は別の収入源を得ることができるが、太陽光発電開発者はなかなか理解していない。」

営農放牧型太陽光発電を普及させるには、その経済的なメリットを事業者に理解してもらうことが、最初の課題かもしれないね。

www.theguardian.com

 

「太陽光パネルの下で放牧された羊はより高品質の羊毛を生産する」という記事。

www.pv-magazine.com

 

「羊と太陽光パネルが出会うと何が起こるでしょうか?「美しい共生関係」です。」

こちらはマサチューセッツ州の事例。

www.bostonglobe.com

 

www.canarymedia.com

 

At these Texas solar farms, 6,000 sheep help mow the grass

https://www.fastcompany.com/91173171/at-these-texas-solar-farms-6000-sheep-help-mow-the-grass

 

北海道のソーラー羊。本格始動はしばらく先かもだが、完成したら見学してみたいな

www.sankei.com

【図解】甘党な肉食系!?エチオピアオオカミ

がっつり肉食系「エチオピアオオカミ」が、まさかのスイーツ大好き甘党オオカミだった!?という「いきものニュース図解」です。大型肉食動物と植物の、知られざる"蜜月"もこれから明らかになるかも。蜜だけに

ちなみにエチオピアオオカミ、過去の図解にも登場したことがありますが、覚えてますか。私のお気に入りのクセ強ネズミ「エチオピアオオタケネズミ」の恐ろしい天敵としてですが…

以下、参考記事など。

NYタイムズ↓(ギフトにしとく)

www.nytimes.com

記事によると、甘いものを食べるイヌ科の動物はエチオピアオオカミだけではないそう。ハイイロオオカミがブルーベリーを食べたりもするが、味のためというよりは、飢餓を防ぐためだろうと専門家。それに比べるとエチオピアオオカミはかなり純粋に「甘いもの」好きの要素が強いっぽい…。

あと、図解にも書いたように、たしかに花粉媒介者としての役割をエチオピアオオカミが果たしている可能性もあるのだが、甘いものに興奮しすぎて花を普通にむしゃむしゃ食べてしまうこともあり、花にとっては迷惑になることも。専門の(?)ポリネーターたちに比べると、器用さには欠けるといえそうだ…。

 

日本語記事もあった↓

www.gizmodo.jp

 

エチオピアオオカミについて、別件のナショジオ記事。ただでさえ絶滅の危機にあるのに狂犬病まで流行しており、ワクチン接種で救うための作戦が進行中。なんとか経口ワクチンを食べさせるため、ヤギの肉に投与したりとあの手この手を尽くす。 甘党なのを活かして、花に投与(?)するのもアリだったりして…

natgeo.nikkeibp.co.jp

いよいよ開幕!特別展「鳥」レポート(byイラスト担当)

上野の国立科学博物館の特別展「鳥」、いよいよ開幕となりました!

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「科博」大好き者のたしなみとして、当然のように年間パスを購入し、毎回のように特別展に出向き、時々レポートも書いてきたわけですが…↓

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今回の「特別展 鳥」は何が違うのか? それは……私が展示イラストを担当させてもらったということです!!ウワーーーッッッ

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ちょっぴり制作話をしておくと、制作自体は1年以上前から進めていました。主催の方にお声をかけていただき、鳥好き&科博好きとして二つ返事でお引き受け。筑波にあるほうの国立科学博物館(上野のおなじみ「科博」は展示がメイン目的で、研究という意味ではむしろこっちが本拠地)を案内していただいたり、打ち合わせや話し合い、専門家の先生方のアドバイスを重ねに重ねながら、気合い入れて「鳥のひみつ」図解イラスト23点+αを作りましたよ。

そんなこんなで展示もいよいよ完成し(最後までめちゃ大変な様子が伝わってきましたが…)、開催前日の「内覧会」に出向いてきました。今までは一切展示に関係ない単なる動物オタクとしてレポートを書いてきたものの、今回は完全に関係者となってしまってはいますが、ここはやはり伝統を守り(?)特別展レポートを書きたいと思います。

 

11/1(金)、開催前日。やってきた上野、科博前。ポスターが「カミングスーン」になってる最後の日と思うと感慨も。

内覧会なので特別展の建物は基本クローズ。券売所も閉まってて、まだ人もいない中で科博に入れてもらえるのが、なんだか新鮮でした。

音声ガイドは芸能界の鳥ガチ勢として知られるお二人↓。なかよく掛け合いしながら鳥の魅力や生態を語ってくれます。

最初にお出迎えしてくれるのは、クジャク!…そしてよく見るとシマエナガもいる! 

体の大きさこそ両極端ですが、どちらも鳥界における「華やかさ」と「かわいさ」をそれぞれ代表する鳥ですね。600点以上の標本が集結し、「一生分の鳥が見られる」という鳥展のキャッチフレーズにふさわしく、鳥という生きものの「幅広さ」を象徴するような2羽が迎えてくれました。

↑展示札をよくみると「エナガ(亜種シマエナガ)」と書いてある。このくだりは後の伏線となるので、頭の片隅においておこう…。

さっそく、鳥、見るぞ〜!!

…と前のめりになる来場客の襟首をガッとつかみ、「待たれい、そもそも鳥類というのはな…」と説くかのように、いったん中生代にさかのぼり、恐竜の話からスタートするガチな科博であった。さすがだ。そうこなくてはな。

「鳥展ってのはとどのつまり…恐竜展なんだよ!!!」

カワセミさま「なんだってー」

地上で暮らしていた、いわゆる恐竜(獣脚類)の脳に、すでに現生鳥類の特徴(大脳半球や視覚中枢の高度な発達)が見られる…という話などもあって見逃せない。

↑始祖鳥アーケオプテリクスの有名な化石のレプリカや、

↑長い尾羽をもつコンフキウソルニス・ドゥイもいるぞ。

恐竜が闊歩していた中生代に、恐竜(獣脚類)の特定のグループ(後の鳥類)に何が起きてどう進化したのか?を系統図とともに解説するパネルも。正直この(まだ現生鳥類すら出てこない)コーナーだけでも1時間くらい浸っていられる自信がある。私のイラストとかまだ一切出てこないが…。

この中生代コーナーでしばし「鳥って恐竜なんだなあ…スゴすぎ…」という感慨に浸ってから、めくるめく現生鳥類の世界に踏み出せば、鳥を学ぶモチベも上がりまくりってわけ。

 

まだまだ古代の鳥は見どころいっぱい。上を見上げると巨大な影が…?

史上最大の"飛ぶ鳥"、「ペラゴルニス・サンデルシ」のおでましだ!!

2600万年前に生きていた、翼開長7mの巨鳥の復元モデル。現生の「飛ぶ鳥」で最も大きな「ワタリアホウドリ」の約2倍! 「飛ぶ鳥落とす勢いだと?落としてみろやコラァ」といわんばかりの気迫に、カワセミさまもびっくり。

そんな絶対落とせなさそうな勢いの「飛ぶ鳥」に導かれながら、いよいよ現生鳥類のコーナーへ。「スズメ目」「キジ目」といった「目」の分類ごとに、さまざまな鳥の存在感を臨場感たっぷりに感じながら、その生態や形態を学んでいきましょう。

「01」はダチョウ目! 堂々と鎮座する地球最大の鳥ダチョウ。やはりデカイッ

お隣は「レア目」。こちらはアメリカ大陸にいる巨大鳥。

そしていよいよ!

私の「鳥のひみつ」図解イラストの出番となります!!

調査ノートのような下地に、鳥類専門家の先生が書かれた解説文や写真と、私の図解イラストを隣り合う形で載せてもらっています。(すてきなデザイン!)

この「鳥のひみつ1」では「頭骨くらべ」というコンセプトで、ダチョウの仲間たちの頭骨(実物)を実際に見比べられます。イラストとあわせて、しげしげと眺めてみてくださいね。

キーウィの卵にまつわる「鳥のひみつ2」では…

すぐ下に実際の卵があったりします(エピオルニスとキーウィ)。こうしてみるとキーウィの卵が小さく見えるが、体に比べるとめっちゃデカイよやっぱり

なかなかお気に入りな「鳥のひみつ3」。↓ キジの子育てにまつわる生態を、『源氏物語』になぞらえて解説してみましたよ。

「鳥のひみつ5」でもキジを扱ったので…

なにげに今回のキーパーソンならぬキーバードといえるキジであった。

キジがなぜ今アツイかというと、2024年9月(ついこの前!)出版の「日本鳥類目録」第8版で、新たに日本固有種が5種追加されたのだが、その中にいた超ビッグネームが「キジ」なのでした。歌舞伎などの伝統文化にも根付いている「国鳥」キジが、晴れて日本固有種になったというわけ。

↑日本固有種、これまでの9種に追加された新しい5種(「鳥展」パネルより)。キジみたいな超メジャー鳥が加わることあるんだ!?って驚く人もいるかもだが、DNA分析の発達も背景にあるのです。「ゲノム解析が解き明かす新しい鳥類の系統」を副題に謳う、今回の鳥展を象徴してる鳥だと思いますね。

身近な鳥ではハトもアツイ!

「鳥のひみつ8」では、ハトの高度な視覚情報処理能力を紹介。

上野だから上野ネタを入れていくスタイル。科博もいいけど美術館も行こうね。しかし「鳥展」が名古屋にも巡回するということを後で知り、名古屋の人に伝わるかちょっと心配になった。御当地ネタの落とし穴?

↓ハトの認識能力を調べるための「スキナー箱」も展示。

 

大きな見どころのひとつ「ペンギン大集合」コーナー!

「鳥のひみつ」イラストでは、ペンギンの鳴き声による「音声認識」も紹介!

ペンギンに似てるけどペンギンではまったくないのに、しれっとペンギンコーナーに溶け込んでいるオオウミガラスさんもじわじわくる。人間のせいで絶滅してしまった…わすれない……

 

サギのなかまたちもズラリ。サギを、君たちは…どう見るか?

「鳥のひみつ」は、恐るべき「サギの手口」について。サギに注意!

↓サギといえばね

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もちろんカワセミ(と仲間たち)もいるよ。喜ぶカワセミさま。じつは「ブッポウソウ目」だったとご存知か?

 

展示のクライマックスのひとつ「猛禽類ピラミッド」は壮観! 狩りのスペシャリストたちが集う最高の空間です。ヘビクイワシかっこよすぎ(大好き)

このピラミッドの左隣に「鳥のひみつ」パネルもあるのだが、なぜかこのパネルだけ柵からの距離感が遠いので(なぜだろう笑)、渾身のネズミさんラップを見逃さないでおくれよ。

↓猛禽類ピラミッド、腐肉食鳥類(ハゲワシ)の話題もあって…

ちょうど「いきものニュース図解」でハゲワシを扱ったばかりなので、タイムリー。

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そして本展の大きなテーマのひとつは鳥の「繁殖」。監修者の濱尾章二先生(イラスト制作でも大変お世話になりました!)がナショジオに記事を寄稿されていた。オスとメスのつがいを見ると我々人間はつい「愛情」や「仲良し」などを連想するが、そこにあるのは進化が作り出したドライな「利己性」だと。そんな身も蓋もなさも鳥の魅力とも言える…

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濱尾先生「多くの鳥で浮気、不倫に相当する行動、時に子の遺棄や子殺しといった行動も進化している。これらの行動が状況によっては子を多く残すことにつながるからだ。」(記事より)
そんなドライでシビアで奥深い「鳥の繁殖」を妙に元気よく描いた「鳥のひみつ」もぜひチェックしてくれよな!↓

本物(ハクセイ)のセアカオーストラリアムシクイも見られてうれしかった。

ヒナの50%が「つがい外交尾」で生まれるってスゴイね…。おしどり夫婦?なにそれおいしいの?って感じだ。

 

見どころは他にも色々!鳥にも「言葉」のような概念があるという今アツい研究や…

↓それを語った「鳥のひみつ」シジュウカラ編を見逃すなかれ

カケスのルーツにまつわる最新研究も。ふと挟まれる鳥の百合(鳥の百合)↓

監修をつとめてくださった生物学者の西海先生の専門領域でもあるようで、内覧会ではパネル前で解説をしていらっしゃいました。贅沢!!

 

↓進化生物学に多大な影響をもたらしたダーウィンフィンチの皆さんのすばらしきバードカービングの数々…。(すぐ上にある「適応放散」を描いたイラストも力作なので見てくれよな)

 

↓「チバエナガ」を扱った「鳥のひみつ」で、千葉の話題になったせいで急にしゃしゃり出てくる作者(地元が千葉)など…

見どころ(?)を紹介していけばキリがないですが、とにかく最後まで楽しんでもらえれば幸いです。

 

そんなこんなで光陰矢の如し。内覧会だし「今日のところは(関係者さんや先生方への挨拶も兼ねてるし)あんまりガチらずにあっさり回るか〜」くらいに思ってたのに、物量も内容も圧倒的充実のあまりついつい見入ってしまって、普通に時間が足りなくて気づけば蛍の光タイムに突入してしまいましたよ。絶対また個人的に行きます! 鳥オタクは半日…いや丸一日みたほうがいい!

気をつけろ!売店までギッチリ鳥だぞ!

大人気必至のぬいぐるみ、ターキー(七面鳥)のウッドストックは「PEANUTS」の漫画でほんとにそういう場面があるみたい。思いっきり公式!

 

そして売店にはなんと私の特設コーナーまで作っていただいたのです!凄い!!うれしすぎ!!!グッズもいっぱい作ってもらったから、予算の許す範囲でものすごい勢いで買ってくれよな!!

↑「鳥のひみつ」図解がポストカードサイズでずらりと並んでいるので…万一展示を見落としても安心?

「鳥のひみつ」のイラストを活かしたステッカー、缶バッジ、キーホルダー…

そしてアクスタ↓など、よりドリみドリ。

なんと「カモミール令嬢のカモミールティー」まで!

カップは付かないので注意だ!

カモ見図解も一緒に陳列↓

↓元の図解はこちら。まさかグッズ化するとはカモミールさんもびっくり

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わすれちゃならない、過去の著作も並べてもらいました。ぜひお手にとってみてね。(ほんとは鳥展にあわせて新刊を用意できればベストでしたが…間に合わなかった!でも鋭意制作中なので…よろしく!)

そうそう、好例の図録もハイクオリティなので絶対オススメ。鳥の多様性、羽毛の美しさを示す表紙デザインがすばらしい。基本的に科博の図録はお得なので買ったほうがいいですが、密度も物量もマックスな鳥展を振り返るためにマストバイ!通販もあるもよう。

ちなみに図録、私の手掛けた「鳥のひみつ」イラストは収録されていないのですが(残念ですがスペース的に厳しかったもよう…23点もあるからね)、会場でのパネル撮影は自由ですので、ぜひお気に入りのイラストは写真で「お持ち帰り」くださいませ! 図録の文章とあわせて、おうちで理解をさらに深めてね。

紹介しきれなかったけどマジで色んな鳥グッズあって物欲がヤバいので、鳥好きは散財してくれ! これはものほしそうにしていたら主催者さんに買ってもらった「ペラゴルニス・サンデルシ」Tシャツ。買ってもらっちゃった…おとななのに…

↑シンプルだがすてきなデザイン。特別展の期間ずっと毎日着ます!

長文書きすぎたし、そろそろ〆。売店の出口でお見送りのウッドストックも「もうええでしょう」と言ってます。こんな地面師みたいな喋り方じゃないけど

↑鳥どうし、わかりあえるものがあるようだ

 

さらっとレポートするつもりが激長文&写真多すぎになってしまいましたが、思い入れの深さが多少は伝わったでしょうか。約1年にわたる制作期間を経て、博物館の展示は初めての経験ゆえなかなか大変でしたが(監修の先生を中心に、関係者の皆様も本当にお疲れさまでした…!)、そのぶん「科学的な事象をわかりやすく、面白く伝える」という、私が生きものクリエイターとしてやってきたことの、ひとつの到達点のような内容になったと自負しています。子どもの頃から大好きな科博で、大好きな鳥の史上初の特別展で、こちらの作風も大いに尊重してもらいつつ、こうした展示に関われたことを、ほんとうに嬉しく光栄に思っています。今後も活動を継続し、鳥からもらったものを世界に還元していけたらと願うばかり。

↓とにかく鳥の絶滅を防がないとな!まじめに!!

来場者の皆様の反響も(すでに嬉しいものも色々いただいてますが)気になりますので、ぜひTwitterなどSNSでも「#鳥展」などつけて感想を呟いてもらえたら喜ばしいです!

 

また個人的に来場するの確定なので、そのとき書き足すかもですが、今回はトリあえずこのへんで失礼します。

 

鳥よ永遠に。

図解:「死神」ハゲワシ激減で50万人死亡!?

「死神」っぽくて嫌われがちなハゲワシが、いなくなったら何が起こった? 答え→「50万人も死んで10兆円以上の大損害」…という恐ろしい最新研究に基づく「いきものニュース図解」です。

 

強力な胃酸をもつハゲワシは、腐肉を食べる動物の中でもトップクラスの「処理効率」を誇る。腐肉を食べるが処理効率で劣るネズミなどの小動物や、狂犬病を媒介する野良犬との"競争"を制し、それらの個体数を減らすことができる。腐肉業界(?)のトッププレイヤーなのだ(ゆかいないきもの㊙図鑑より)↓

↓読んでみてね

 

 

<参考>

・「サイエンス」HPの詳細ページ↓

https://www.science.org/content/article/loss-india-s-vultures-may-have-led-deaths-half-million-people www.science.org

インドハゲワシの激減により50万人以上が死亡という研究。「この論文は、この分野の古典となるだろう」と評価する学者も。動物を保護し、生態系を健全に保つことが、なぜ人類の命も救うのかを示すうえで、今後もしょっちゅう引用される研究になりそう。

 

・BBC

www.bbc.com

 

・ナショジオ

natgeo.nikkeibp.co.jp

ハゲワシ(などの猛禽類)、アフリカでも毒物によってかなり減少していて、インドの二の舞いになるぞと警告。毒物の主な狙いは家畜を襲うライオンなどらしいが、「ハゲワシが騒ぐと監視員にバレるので困る密猟者」が意図的なハゲワシ毒殺に手を染めることもあるらしく深刻。

 

・インドハゲワシ保護活動の様子↓

www.ifaw.org

 

「いきものニューストゥーン」版もカミングスーンです!↓

https://www.amazon.co.jp/dp/B0CVFNPJ5X?ref=cm_sw_tw_r_wcm_sd_rwt_46Cd9pE1TwcLz

 

【図解】2匹が1匹に融合!? ふしぎなクシクラゲ

お前…あのクラゲ……壊したんか!? でも大丈夫、他のクラゲと「融合」するからね。てなわけで驚異の「融合」能力をもつ「クシクラゲ」の「いきものニュース図解」です。(※クシクラゲはクラゲではありません)

いきものニューストゥーン版はこちら!↓

https://t.co/PJIEaaICSB

参考HPなど

基礎生物学研究所プレスリリース↓

www.nibb.ac.jp

www.jiji.com

生物における「自己」とは…?と疑問を投げかける哲学的な生物学でした。

深海生物のスタンプを発売しました(2種類)

深海生物のLINEスタンプを2種類つくったので(『深海DINER』ひと区切り記念として)、深甚なる海に沈みたい方は使ってね。

こちら↓はメンダコ&タカアシガニ編🐙🦀

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もうひとつは(『深海DINER』に登場した)深海生物の皆さん編。クジラ、デメニギス、センジュナマコ、ミツクリザメ、ダイオウイカなど。自在に使いこなし、相手を深淵へといざなおう。

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『深海DINER』本編は8話まで公開中。第1章完!という感じで(しばらく別件で忙しいので)続きが描けるかは深海の闇の中ですが、深海モーテル編の構想もゆっくり練りたいところです。

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